オランダが目指す、地球にも人にも優しい自転車中心の街づくりとは?~Bicycle Master Plan in Netherlands~

オランダ人の自転車好きは有名ですが、なぜオランダ人は自転車が好きなんでしょう?国土が平坦で自転車で走りやすいから?倹約好きだから?いえいえそれだけではありません。

今回はオランダ在住のChikaがオランダの自転車中心の街の様子をご紹介します。

見るだけで楽しいオランダの自転車ウオッチング!

オランダ人は本当に自転車が大好き!

街ではさまざまな種類の自転車が走っています。一般的なママチャリ型やスポーツタイプ、ブレーキのないピストバイクや手漕ぎのハンドバイクなども日常的に目にすることができます。

日本ではまず見ませんが、オランダでは定番の木製ボックス型。フードを外して荷物を載せることもできます。

これは子供を乗せて走る三輪タイプ。朝の通勤時間帯にはスーツ姿のお父さんがこんな自転車に子供を乗せて出社する姿もよく見られます。夫婦共働きが一般的なオランダでは子供達の送迎はお父さんの役目というご家庭も多いのだそう。

樹脂ボディ+5点式のハーネス付チャイルドシート搭載の最新型。

郵便物の配達の他、ウーバーイーツや商品の配達にも自転車が活躍しています。前後のバッグに入りきらない荷物は手提げバッグやリュックにも詰め込まれています。

オランダの郵便局post.nlの配達用自転車。

みなさん運転がとっても上手!片手運転どころか両手放しでもスイスイ、そしてすごいスピードで走ります。りんごをかじりながらとかサンドイッチを食べながらとか歌を歌いながら走る人もよく見かけます(笑)

大型テレビを小脇に抱えて走る人も。

マウンテンバイクの警察用自転車でパトロール中のおまわりさん。自転車での巡回は車より機動力があり、高速かつ静かに動くことが可能。狭い場所にも対応できるのだそうです。

木漏れ日の中をゆっくりパトロール中ですが本気のおまわりさんのペダルを漕ぐ速さは実はすごい!頼りになります。

こちらはオランダの総理大臣マーク・ルッテ首相の通勤風景。彼は「自転車を愛する“地に足の着いた首相“」として知られています。自転車普及と国民の健康増進の啓発のため、彼が自ら自転車で国会や王宮へ通勤する姿はたびたび話題になっています。

オランダではコロナ感染予防の対策の一つとして「自転車は人と接触しない安全な乗り物です」と呼びかけられています。

自転車でならどこにでも行けるってほんと?驚きのオランダ自転車事情

オランダの国内のほとんどの道路では、交通事故防止の観点から自転車専用道または自転車レーンが設けられています。自動車と自転車・バイクは右側通行、歩行者は左側通行です。

自転車専用道(Fietspad)は赤く色分けされていたり標識や路面のマークでわかりやすく表示されています。

こちらはアムステルダム近郊のヒルバーサムの街の駅前広場。広場内へは自動車の乗り入れはできません。朝夕の通勤時間帯などでも、駅へ向かう人や自転車と通勤の自動車が重ならないので人の流れがスムーズで安全です。

駅の反対側へ行く際に自転車と歩行者は専用道で駅構内を通行することができます。

駅の構内、ホームに向かう階段には自転車を引くためのスロープがついています。自転車が積める大きなエレベータもありますが急いでいるときはこのスロープを利用すると便利。

ステンレス製のレールに自転車の車輪を入れれば、手押しで自転車を引きながら階段を昇り降りできます。

駅の駐輪場も充実しています。写真はアムステルダム南駅の駅前駐輪場。鉄道会社が管理する駐輪場は「OV-chipkaart」と呼ばれる登録制ICカード乗車券があれば、24時間無料で利用できます。

出入口には、自転車ごと乗れるスロープ式のエスカレーターが設置されています。

地下の駐輪場は明るく清潔。女性一人でも安心して利用できます。

なおOVカード保持者なら、1日約500円で自転車を借りることもできます。修理工房が併設されているところでは、故障やパンクの修理をお願いすることもできます。

奥に見えている黄色い自転車がレンタサイクルOV-fiets。

電車には間口の広い自転車用の昇降口があります。このドアの車両には、座席の代わりに自転車を支えるバーが設置されています。もし自転車や荷物が重くて手間取っても大丈夫!世話好きで優しいオランダ人たちがすぐに集まってきて積み込みを助けてくれます。

自転車の持ち込みだけでなくベビーカーや大きな荷物をもっている人も使うことができます。

運河の多いオランダでは、対岸へ行くために渡し舟が運行されているところもあります。もちろん自転車の持ち込みもOK。こちらはアムステルダム市内を流れる川沿いのサイクリングコースにある渡し舟「Pont de Smient」。地元市民の利用のほか、サイクリング客にも人気の場所です。

夏季シーズン昼間のみの運行で運賃は€1.00。
コロナ感染予防のため、自転車も1.5mの距離を保つよう呼びかけられています。

進化を続ける、地球に優しい自転車中心の街づくり

自転車利用を長年呼びかけた結果、オランダでは国中に自転車道が整備され、自転車の数も年々増大。それに伴い、昨今では駅周辺の放置自転車が問題となりました。それを解消するため、あちこちの街で駅前の再開発工事が進められています。

こちらは2021年5月のアムステルダム中央駅前(ライブカメラ映像)。駅前の運河の下に約7000台収容可能な巨大地下駐輪場が建設中です。

現在、運河の水が抜かれて地下部分の工事が進んでいます。完成は2022年の予定です。

オランダで、現在のようなクリーンな街並みができるきっかけとなったのは1960年代。

では、なぜオランダではこのように自転車中心の街づくりが国を挙げて進められているのでしょうか?その背景には、自動車の普及に伴う環境問題がありました。

戦後、世界中で自動車が普及するにつれ、オランダでも自動車から輩出される排気ガスや騒音が問題となりました。それに加え自動車事故も急増。子供たちの安全な自転車環境を求める社会運動が起きました。そこで、元々低地が多く温暖化や環境問題に敏感なオランダの人たちは、世界に先駆けて自転車中心の街づくりを進めたのです。

街の中心部への車の乗り入れを制限することで、排気ガスも騒音もない綺麗な空気の中でゆっくり買い物をしたり食事を楽しむことができます。オランダでは、どの街にもこのような開放的なオープンカフェがたくさんあります。

今では国民一人当たりの自転車保有台数は世界第1位(一人当たり1.3台)となり、アムステルダムでは約35%の人が自転車で職場や学校に通っているほどです。コロナの影響でバスや電車に乗る機会は減りましたが、自転車はロックダウン中も大活躍。自転車はサスティナブルな乗り物だというのを実感しました。(ちなみにオランダでは公共交通機関乗車中を除き、屋外でのマスク着用義務はありません。)

経済効果や利便性よりも子供達の安心と安全を一番に考え、オランダ全ての人々や自然環境にも優しい環境作りを推進したオランダでは、自転車中心の街づくりが根付いて行ったのです。

ヨーロッパの6月は、自転車でお出かけするには最適の季節です。みなさんも経済的かつ健康的で、環境にも優しい自転車を見直してみませんか?

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