【顔面学講座㉚】 髪の毛について考えてみた。AGA(男性型脱毛症)の謎とともに

7月6日に開催された、化粧文化研究者ネットワーク第67回研究会【『髪をもたない女性たちの生活世界 その「生きづらさ」と「対処戦略」』(生活書院)の著者に聞く。】にオンラインで参加しました。

「髪は女の命」という言葉があるように、脱毛症によって“女性としてのアイデンティティの喪失”をしてしまったなか、「ウイッグ生活」、「スキンヘッド生活」、当事者の会の立ち上げなど、さまざまな事例とともに「生きづらさ」をいかに軽減・解消して生き抜いてきたかという話を通して、社会常識を問い直す社会学をテーマにしたものでした。

『髪をもたない女性たちの生活世界――その「生きづらさ」と「対処戦略」』 吉村さやか (著) 生活書院

なぜ、AGA(男性型脱毛症)になるのか?

女性の脱毛症と違って男性の場合は、日本人男性の3人に1人がAGA(男性型脱毛症)だと言われていて、薄毛やハゲは多数派ではないけど「普通」です(言葉の表現が難しいですがあえて「普通」という言葉を使います)。

AGAの主な原因としては、男性ホルモンの「テストステロン」が変化したDHT「ジヒドロテストステロン」が引き起こすと言われています(DHTは精子の形成、胎児や子供の生殖器の成長に重要な役割がある)。

額がM字型に後退していくものなどいろんなタイプのAGAがある。

しかし、「なぜDHTはハゲを引き起こすのか?」「なんのためにハゲるのか?」は謎で科学的に解明されていません。本来、日光から頭を守るために髪の毛があるはずなのに本当に不思議です。

男性ホルモンと関係しているということは本来は「ハゲたほうが性的魅力が増す」のかもしれません。

最近は「ハゲ」という言葉を使わないほうがいいという風潮がありますが、だったら、原島博先生(日本顔学会2代目会長/東京大学名誉教授)の【顔訓13箇条】にある「美しいシワと美しいハゲを人生の誇りとしよう」も「美しいシワと美しい薄毛を人生の誇りとしよう」に変えなきゃならなくなりますし、薄毛を超えて額から頭頂部まで完全に毛がなくなった場合は何という言葉で表現するのかという問題も出てきます。

全身が毛に覆われてる他の哺乳類と違って、進化によってほぼ頭髪だけ毛を残したヒトなのに、ヒトの男の約半数が壮年期に頭髪が抜けるようになるのでしょうか?

男性は老年になると約半数がこのように髪の毛が抜ける。
老年になって白髪にはなるけど、薄毛にはならず髪が多い男性もいる。

老化現象の1つとも考えられますが、欧米では20代でもかなり進行しているケースもありますし、頭(脳)を守るために髪の毛があるはずなのに、なぜ禿げるのか本当に不思議です。

生物的に見た髪の毛の役割(髪の毛がある方が涼しい)

ヒトが他の哺乳類と違い頭部に大量の毛(頭髪、毛髪、髪の毛)があるのは、発達して大きくなった頭(脳)を守るためのクッションの役割

そして、直立二足歩行をすることで、頭部は太陽に最も近くなったため、その熱から守る「温度調節装置」としてあると言われています。

※暑い時は汗によって髪を濡らして頭を冷やし、寒い時は保温効果。

生物的に見たら女性も男性も髪は大事なはずだが…

ペンシルベニア州立大学などの研究チームによる最近の研究だと、人類が髪の毛を持っているのは「髪の毛がある方が涼しいから」「特に巻き毛だとより涼しい」という研究結果がありました。

縮毛は優性遺伝する

アフリカ系の人が縮毛なのも、厳しい暑さに対応するためなのでしょう。

縮毛は優性遺伝すると言われていて、直毛の親と縮毛の親の子は、縮毛で生まれてくる確率のほうが高いです。

日本人と黒人のハーフのタレントやスポーツ選手が活躍していますが、その多くが縮毛をしているのはそのためです。

髪の色では、黒髪が優性遺伝され、両親の片方が黒髪でもう片方が金髪の場合、子には黒髪が受け継がれる確率が高いです。

髪の毛の色はメラニン色素の量によって決まります。アフリカなど紫外線の強い地域では、紫外線から肌を守るためにメラニン色素が多くなり、髪の色は黒くなり、肌の色も濃く、黒くなります。

逆に太陽の光が弱く、日照時間が少ない地域の北欧などに金髪のブロンドヘアが多いのは、紫外線をそれほど受けないためメラニン色素が少ないからです。

金髪碧眼には理由がある。

青い瞳(碧眼)をしているのもメラニン色素が少ないからで、紫外線に弱い彼らにとって日光の強い場所ではサングラスが欠かせません。

他の毛と違って伸び続ける髪の毛

体毛は長くなる前に3〜4週間周期で抜け替わるのに対して、髪の毛は1ヶ月に約1cm伸び、その寿命は2〜5年と言われています。切らずに伸ばしっぱなしにしていると5年で60cmになる計算です。

上記のように、頭を守るために髪があると言われているのですが、果たしてそこまで伸びる必要はあるのでしょうか?

「最も長い髪の毛」のギネス世界記録を持つインドの女性は、14歳の時から髪の毛を伸ばし始め、32年後の46歳で2.3メートルまで伸びたそうです。

ネイティブ・アメリカンの髪の毛が長いのは、髪は神聖なものであると考えられていたためで、他の地域でも古来から髪の毛はスピリチュアルなものという考えがありました。

男性の長髪スタイルやヒゲはワイルドな印象にもスピリチュアルな印象にもなる。

ハワイには「すべてのものに精霊=マナが宿る」という言い伝えがあり、ハワイの民族舞踊「フラダンス」の女性の髪が長いのも、精霊が宿る髪を伸ばして長さを保つためと言われています。

「剃髪」経験者としての感覚

いっぽうで、仏教では僧侶は髪の毛を全部剃って「剃髪」します。煩悩の象徴である髪を無くすことで、煩悩を打ち消すためです。

私も雑念を取り払うために過去3度剃髪し、スキンヘッドになったことがありますが、全く毛がないのも宇宙の気を感じるような感覚がします。

私は30代前半で額が後退してからは「おしゃれボウズ」にヒゲのスタイルに。

このように、髪はあったほうがいいのか?長いほうがいいのか?無いほうがいいのか?結論は出ません。

また、髪色や髪質が自分の望むものでない場合、それを自分だと受け入れるのか?染髪やパーマ(縮毛矯正)でなりたい自分を作るのか?

いずれにしろ、ポジティブに解釈して選択することが大切だと思います。

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