【顔面学講座④】職業顔はナゼあるのか?~政治家の顔、女子アナの顔、ホストの顔~

リクルートで営業マンをしていた

観相家として活動する前、私はリクルートで求人広告の営業マンをやっていました。メインとなるのは当時創刊されたばかりの『ガテン』(建設関係やトラックドライバー、製造工場など現場で働く人材を採用するための求人誌)。

もともとは営業マンらしい顔をしていた私も今ではこの職業らしい顔に?

他にはアルバイト採用の『フロムエー』、女性向けの『とらばーゆ』、いわゆるホワイトカラー向けの『ビーイング』、その後は新卒採用向けの『リクナビ』も。

ガテン系の社長にはこんな感じの顔が多かったです。

お水系アルバイト採用から、IT技術者採用、新卒採用まで、さまざまな求人媒体の広告営業を担当しました。

あらゆる業界の顔を見てきた

数多くの業種、事業規模、さまざまな役職の人、それこそ一部上場企業の取締役から、万年総務課長の人、ベンチャー企業を立ち上げた起業家など、いろんな人に会い、いろんな顔を見てきました。

私が会社員をしていた頃は、一部のクリエイター職を除きヒゲは御法度でしたが、今は当たり前になってきました。
ITベンチャー社長っぽい顔。私がリクルートにいた1990年代は、IT企業の社長でもノーネクタイやノージャケットは少なかった。

そうそう、看護学生新卒向けの『ナース専科』で病院も担当しました。

病院の採用担当者は真面目っぽい人が多かった。まず、太った人がいないのも特徴でした。

こうして営業先でいろんな顔を見ているうちに、顔の特徴や雰囲気によって、なんとなく性格の特徴や傾向があることがつかめてきました。

これが、私が観相学の研究をはじめようと思ったきっかけです。

日本顔学会との出会い

ところが、いろんな観相学の本を読んでみても、顔と内面の関係性の科学的、学術的な根拠は得られませんでした。自分なりに納得できる糸口を探している時に出会ったのが世界で唯一、顔を学術的に研究している「日本顔学会」です。

1999年7月から10月まで国立科学博物館で「大顔展」が開催(主催:国立科学博物館/日本顔学会/読売新聞社)。そこで、当時、東京大学工学系研究科・教授だった原島博先生が、最新のコンピュータ技術を使って合成した「平均顔」を見ました。

ある職業の平均顔=その職業らしい顔

銀行員、プロレスラー、政治家、Jリーグ選手、K-1選手、プロ野球選手、女性客室乗務員などそれぞれ約10人ずつの顔写真を合成して、「銀行員の平均顔」「プロレスラーの平均顔」「政治家の平均顔」などを作成した画像。

人間一人ひとりの顔には個性があるけれどある特定の集団の「平均顔」を合成することによって「その集団に共通の顔の特徴」が浮き彫りになり、いかにも「その職業らしい顔」が出来上がっていたのです。

プロ野球ニュースの解説者にこんな顔の人がいました。

2008年には、テレビ東京の『ヘイキンFACE〜顔で見破る成功の法則〜』という番組にコメンテーターとして出演し、『人気アイドル』『渋谷の可愛い女の子』『秋葉原の可愛い女の子』『女子アナウンサー』『渋谷109の店員』『東中野のスナックのママ』『No.1ホスト』の平均顔といった職業別の平均顔の分析もしました。

教師というより塾の講師に見えるのはなぜだろう?

このように自分でも様々なジャンルの平均顔を分析した結果、それぞれの職業の平均顔は「いかにもその職業らしい顔」になるのですが、そもそも、かなりの確率で“その一人ひとりがその職業らしい顔”をしていました。

持って生まれた顔と環境で作られる顔

ではなぜ、このような“職業顔”はあるのでしょうか?

1つ目は、初めからその職業に適した顔(=性質)を持った人が、その職業に就くということが考えられます。例えば打撃格闘技の選手やサッカーのストライカーは、眉と目の間隔が狭く、目と目の間隔も狭い顔の人が多いという特徴があり、それは同時に集中力が高く攻撃的という性質も意味します。

ある職業に対しての素質のある人が、おのずとその職業に就く傾向は多いにあります。

バレーボールなど女子のスポーツ選手はショートカットの人が多く、似たような髪型のため顔のフレームが似る。

2つめは、ひとつの職業を長年やっていると、その職業に応じた表情のつくり方をするため、顔の筋肉(表情筋)が鍛えられて、その職業の人は同じような顔になってくることがあげられます。

例えばアナウンサーは、発声練習を絶えずしていますし、実際の放送では目や眉も動かして表情を作って視聴者に伝えようとします。その顔の筋肉の動かし方が似ているので、どことなく似た顔になるのです。

心理学では職業や役職を遂行しているうちに身についてくる「役割性格」というのがあります。自分の役割らしく振る舞っているうちに、性格も変化するのです。顔も職業や役職を遂行しているうちに、環境や気持ちとともに変わります。

管理職に就いた人は、管理職らしく振る舞っているうちに、性格が変わり、顔つきも変わるのです。

柔道顔はある?

2021年末に書店でこの表紙を見て、「見事な柔道顔だなぁ」と思いました。

近代柔道 2022年01 月号 近代柔道編集部
https://www.amazon.co.jp//dp/B09MYRFVXW/

『近代柔道』の表紙を飾る見事な柔道顔は誰?

大相撲の元横綱・朝青龍のような切れ長で鋭い目つき、勝ち気そうな眉、自信満々の口元と突き出たアゴ、脂肪だけではなく筋肉質でどっしり安定感のある輪郭…。

名前を見ると斉藤立(さいとう・たつる)。

調べて見ると、国際柔道連盟主催の大会「グランドスラム」2021年の100kg超級で金メダル。父親はオリンピックの95kg超級で2連覇を達成した斉藤仁(さいとう・ひとし)。

お父さんの仁さんは少し優しい顔立ちでしたが、斉藤立さんは闘志に溢れる顔をしています。現在20歳ということで、フランスのパリで開催される2024年夏季オリンピックでの活躍が今から楽しみです。

関連情報

「池袋 絵意知の顔面学講座」は月1回の連載シリーズ。他の連載記事は、下記の著者ページからご覧になることができます。「顔面学」という独自のユニークな視点で人間模様を掘り下げた池袋さんのコラムをじっくりとお楽しみください。

https://rakukatsu.jp/author/ikebukuro/

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