ライブハウスで楽しむ伝統芸能!「講談×落語 in KENTOS銀座」に行ってきた!

9月23日、待ちに待った久々の楽活主催での伝統芸能イベント「講談×落語 in KENTOS銀座」が開催されました。日本の伝統芸能である「講談」と「落語」を、いつもとはひと味違うライブハウスで楽しむという斬新な企画です。イベント当日の様子を取材させて頂きましたので、早速その「見どころ」を中心に、簡単に振り返ってみたいと思います。

さて、開始30分前、ライブ会場「銀座ケントス」に一番乗りしました。初めて来たので、やや緊張しながら会場全体の様子をチェックします。内装は細かいところまでお洒落に作り込まれており、映画などでよく見るライブハウスそのまんまの作りに、ちょっと感動。

ステージ上にはこれから行われる「講談」「落語」用の高座が設置されています。「ライブハウス」と「伝統芸能」の組み合わせは一見異質な感じもしますが、こうして見てみると、赤い絨毯の高座もステージ上に意外と馴染んでいるように見えますね。

ちなみに、普段はここで色々な歌手やグループが演奏する中、ノリノリで踊ったり、美味しいお酒をいただけます。銀座ケントスの普段の様子は、こちらの過去エントリをチェックしてみて下さいね。

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僕も取材用のカメラを調整しながら、フリードリンクコーナーでウーロン茶・・・を頂くはずだったのですが、つい雰囲気に負けてしまいハイボールをオーダーして臨戦態勢。適度にほろ酔い気分で公演スタートに備えます。

ワインやビール、ウイスキー、カクテルなどが完備。メニューにはないハイボールも作ってくれました。

イベントが始まる前には約100人のお客さんで横長の会場はほぼ満席になりました。2Fスペースも含め、ほぼ満員の大盛況です。お客さんは、50代~60代の方が中心ですが、お休み中ということもあり、若い女性の二人組や、小さい子供の姿もちらほら。落語・講談ともにここ数年静かなブームが起きているといいますが、ここでもそれを少し実感しました。

さて、いよいよ開演5分前になると、ステージ上には司会進行役として楽活編集部の宮古さんが壇上に。長く講師業務を務めていらっしゃるので、イベントでの司会進行はいつも抜群の安定感なのです。

司会からの挨拶や注意事項が一通り終わると、いよいよ本日の主役である田辺銀冶さんと林家つる子さんが舞台の左袖から登場。講談、落語とも舞台衣装は和服の着物ですが、お二人の服装は、公演チラシとは真逆の色合いです。情熱的な「赤」の着物でビシッと決めた田辺銀冶さんに対して、涼し気な「水色」の林家つる子さん。対照的な二人の出で立ちは、非常に舞台映えします。ステージ上に用意された椅子に着席すると二人のトークショーがスタートしました。

トークでは、つる子さんの天然キャラにお姉さん格にあたる銀冶さんが適度にツッコミを入れる展開。つる子さんが予想の斜め上を行く回答をするたび、銀冶さん破顔一笑。ふたりともよい笑顔でした。

トークショーでは、落語・講談をこの日初めて体験する人でもわかるように、お二人が「落語」と「講談」について、その違いを強調しながら特徴や楽しみ方を簡単に解説してくれました。その後、それぞれの自己紹介も兼ねて二人がなぜ「講談」「落語」といった伝統芸能の道を目指したのか、過去の興味深いエピソードを交えて話してくれました。

特に興味深かったのが、現在でも圧倒的な男性社会である「講談」「落語」それぞれの芸道において、女性講談師、女性落語家として修行する中でお二人が体験した数々の苦労話です。たとえば、超ベテラン師匠のセクハラ攻撃をうまく交わすには・・・とか、一つしか用意されない支度部屋での着替えの話など、女性ならではの難しさを愛嬌と機転で乗り切ってきたお二人。トークショーでは涼しい顔をして語ってくれましたが、きっと色々な苦労を乗り越えて、今の充実ぶりがあるのだろうな、と感じました。

もう一つのニュースは、つる子さんがCDを発売したという話。といっても、落語公演の音源ではなく、歌手デビューを果たしたのだそうです。レギュラーを務めるFMラジオの番組で企画した都道府県別ご当地ソング企画で、群馬県出身のつる子さんにも話が回ってきて、「ぐんまラプソディ」という曲を収録したのだとか。みんなオーッと驚いていましたが、さらにつる子さんの高座で後々もっと驚かされることになります・・・

林家つる子「お菊の皿」

トークショーが終わると、いよいよ講談・落語の時間です。

最初は、林家つる子さんの落語からスタート。

すると、何やら聞いたことのない出囃子で舞台の袖から現れたと思ったら、トークショーで紹介された「ぐんまラプソディ」でした!かなり低めのキーで、こぶしを利かせて歌い上げるつる子さんの声色はちょっと上手ヘタ系で、昭和の香りがする歌謡曲にぴったりです(笑)

高座に上がると、すでにトークショーでかなり会場内の空気が温まっていたこともあって、マクラからトークが盛り上がります。会場のお客さんを巻き込んで、定番の小咄「隣の家に新しい囲いができたよ」「へえー」を一緒にやらせるなど絶好調(笑)観客いじりもばっちりです。

演目は、林家つる子さんの得意演目「お菊の皿」。古典的な怪談、「皿屋敷」をベースとして滑稽噺にアレンジされた古典落語の定番演目です。ちょうど幽霊として出てくるお菊さんが女性なので、女性落語家のアドバンテージが生きる演目ですね。

しかしこの人の高座は、話芸も安定していて聞きやすいですが、一番の特徴は高校時代に演劇部で身についた(?)オーバーなアクション。身振り手振りや顔の表情が本当に豊かで、全身で演じている感じが良いのです。

見て下さいこの豊かな表情を。「お菊の皿」のように、古典落語の中でも特に有名な噺は、ストーリー自体は一度聞いてしまえばオチまでほぼ同じなので、演目を面白くできるかどうかは一重に噺家の工夫次第。林家つる子さんの場合は、全身を使ったオーバーなアクションとくるくる変わる顔の表情でしっかり魅せてくれました!

そして、今回はさらにやり過ぎな趣向が炸裂!「お菊の皿」は、夜な夜な化けて出て、お皿を数えるお菊さんの容姿が評判になり、江戸中のアイドルのようになっていく、という噺なのですが、その後半のクライマックスで、なんとつる子さんが立ち上がってステージで歌い出すという斬新なパフォーマンス!もちろん曲は「ぐんまラプソディ」!最高に面白かったです(笑)

意地でも座布団から足を離さないという不文律を守って高座に上がる落語家が多い中、何のためらいもなくあっさり立ち上がり、ステージを右に左に躍動してコブシを利かせて熱唱するつる子さんを見て、「なんて自由な!」と斬新な演出には感銘を受けました!

つる子さんのステージが終わると、一旦休憩時間です。フリードリンク制なので、この間にビールやワインのおかわりをする人も多数。僕もここで2杯目のハイボールです(笑)

田辺銀冶「レディ・ガガ」

後半に入ると、今度は田辺銀冶さんの講談の時間。ここでも出囃子に驚きです。なんと銀冶さんはレディ・ガガ「Born this way」でミラーボールを光らせて登場!

内容も非常に斬新で、講談タイトルは「一鶴とレディ・ガガ」。田辺銀冶さんの師匠、故・田辺一鶴が死後、霊体になってアメリカにわたり、レディ・ガガに乗り移る、という荒唐無稽なストーリーです。しかしそこは講談。ストーリーの流れに絡めて、巧みな話芸でレディ・ガガの個人史を魅力たっぷりに語ってくれました。

そして、クライマックスでは田辺銀冶さん得意のパフォーマンスが圧巻でした!世界各国の国名を超早口で唱えながら、着物の胸元からどんどん国旗を取り出していく演出はお見事!

実は僕はまだ講談を観るのは今回でまだ3回目と、ほぼ初心者なのでした。独特の抑揚がついた、引き込まれるような話芸は新鮮そのもの。新作講談であっても、ちゃんとためになる雑学・教養をストーリーの中に入れてくれたり、ちょっとした裏技的なパフォーマンスを駆使して観客を楽しませる工夫も盛り込んでくれた銀冶さん。充実したステージでした。

まとめ

そんなこんなで、あっという間に二人のステージは楽しく狩猟し、時間いっぱいまでお客さんと写真撮影タイムに突入。僕も、しっかりお二人の写真を撮らせていただきました!

落語や講談は、最小限の舞台道具と噺家、講談師がいれば、どこでも楽しむことができます。僕も、過去落語の公演では、地元の公民館や小学校から、ホールや演芸場などの大規模会場、お寺や料亭などいろいろなシチュエーションで楽しんで来ましたが、今日の「銀座ケントス」ほどユニークな会場は初めてです。しかも、女性だけの華やかな二人会を観たのも初めてでした。講談という新たな伝統芸能への「はじめの半歩」を踏み出すための、素敵なイベントとなりました。

また、お二人のの演目も非常に工夫が凝らされていました。ライブハウスという特殊な場所を最大限に活かした、既成概念にとらわれないスペシャルな演出が楽しめたのも、プレミアム感があって非常に良かったです。お二人のエンターテイナーとしてのプロ意識をしっかり感じることができました。

演目を終えて、最後の舞台挨拶に立った時、二人とも「是非これをきっかけに第2回、第3回と回数を重ねていきたい」と言っていましたが、僕もまったく同感です。是非、さらにパワーアップした次回イベント、楽しみにしています!

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