…雨、降ってますか?2021年6月14日、関東甲信越地方はここ10年で最も遅い梅雨入りが宣言されました。
雨の日は外出が億劫になってしまいがちですが、適度な外出は気分転換になるだけでなく、運動不足解消、仕事・学業にもいい影響をもたらしてくれます。
今回は、「梅雨でも楽しめる偕楽園」をテーマに、水戸藩9代将軍・徳川斉昭(とくがわなりあき)が設計した好文亭の襖絵をメインにご紹介します。
色とりどりの草花は、まるで室内にいることを忘れてしまうほどの美しさです。
梅雨入りで気持ちまで塞ぎ込んでしまっている方、今年の春もコロナでお花見ができなかった方、ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。
茨城屈指の観光名所・水戸偕楽園と梅まつり
よく県外の方々に水戸の偉人を訪ねると、水戸黄門こと徳川光圀公の名が多く上がりますが、実は黄門様が生きている時代に偕楽園はありません。
徳川光圀は水戸藩2代藩主で、彼が最も尽力した事業は歴史本「大日本史」の編纂でした。
茨城県を代表する観光地、水戸偕楽園が造園されたのは今から約180年前の1842年のことです。水戸藩9代藩主の徳川斉昭が指揮を執り開園に至っています。石川県の兼六園、岡山の後楽園とともに日本三大名園に指定されていることは、ご存じの方も多いはず。
そんな偕楽園、名物は梅です。水戸では「お花見」といえば桜ではなく、梅のイメージが強いです。毎年2~3月には約100品種3,000本の梅の木が続々と開花し、春の訪れを感じさせてくれます。
お花見の時期だけでも、領民と身分の隔てなく「偕」んなで「楽」しめるように…
そう願った徳川斉昭は、この庭園を『偕楽園』と名付けたのでした。
現在は「水戸の梅まつり」を行うことで人々の交流を図ったり、観光の㏚を行ったりと、斉昭公の思いは脈々と現代に受け継がれています。
昨年と今年(開催済)のお祭りは、規模を縮小したり、日程をずらすことで開催されました。これまでのような活気が再び戻ることを期待したいですね。
水戸偕楽園内に造られた好文亭
今回はお花見の時期でもなく、天気もイマイチ…ということで、足早に好文亭へと向かいます。
好文亭は偕楽園内に設けられた休憩所で、こちらもまた徳川斉昭公の命により建てられたものです。梅の別称である「好文木」にちなみ、名づけられました。太平洋戦争末期の1945年8月2日、水戸を襲った大空襲により全焼したものの、その後再建され現在に至っています。
偕楽園そのものが小高い所に設けられているのですが、3階建ての好文亭から景色を見渡すと、さらに目線が高くなります。一面の梅の木や仙波湖、水戸の市街地まで眺めることができ、筆者おすすめのスポットです。
有料にはなりますが、次回訪れた際にはぜひ見学してみてはいかがでしょうか。
今回はそんな好文亭で見つけた色とりどりの襖絵を中心に、好文亭を鑑賞していきます。
特に美しいのが、藩主婦人たちの休養の場として設けられた奥御殿。再建にあたり、昭和を代表する日本画家(須田珙中、田中青坪ら)が描いています。
鮮やかな赤色がまぶしい「つつじの間」
こちらは「つつじの間」。満開のつつじの花がとても美しいです。襖の前に置かれた照明や、襖に描かれる岩・スズメたちと見比べてみると、大きさは実物大と大差ないように感じられます。
背景のツートンカラーがつつじをより強調させていて、見ごたえのある作品です。
水戸といえば!「梅の間」
満月に照らされた紅白の梅の花。なんとも水戸らしい作品が楽しめるのは「梅の間」です。
こちらの部屋は藩主婦人の居室となっただけでなく、大正天皇が皇太子殿下の頃にお泊りになったり、昭和天皇が皇太子殿下の頃にご休息なされたこともある、歴史あるお部屋です。
部屋を突き抜ける!?「竹の間」
続いては「竹の間」。竹の葉や枝、タケノコが描かれておらず、竹稈(ちくかん/樹木の幹にあたる部位)が大きく立派に描かれています。
部屋を突き抜け天高く伸びていく竹が想像され、まるでトリックアートのような作品です。
「竹の間」と先ほどご紹介した「梅の間」、そして今回はご紹介できませんが「清の間」という3つのお部屋は、かつては水戸城の中御殿に造られた部屋でした。明治時代に入ってからこちらに移築されたもので、斉昭夫人が明治初期に住んでいたそうです。
一足お先に紅葉狩り「紅葉の間」
こちらも大変美しい「紅葉の間」。たくさんの色を贅沢に使い、紅葉の様子が表現されています。
目を凝らしてみると、枝一本一本の色の濃淡が違っていることに気づきました。平面である襖に奥行きが感じられる、職人のこだわりがひしひしと伝わる作品でした。
女中さんもお姫様気分「萩の間」
さて、少しずつクライマックスが近づいてきております。こちらは「萩の間」です。
藩主婦人に仕える女中さんたちが休憩する場であったそうです。
細やかで美しい花々に囲まれ一休み、優雅な時間を過ごしていた…そう思うと、女中さんの仕事も悪くないな、と思ってしまいます。
天袋の襖絵も小さいながら見ごたえ満点ですので、ぜひ現地にて皆さんの目で確かめてみてください。
マイベスト襖絵!「桃の間」
最後は1番のお気に入り「桃の間」です。
この部屋は、なんと好文亭に滞在する方々の食事を準備するための場所なのだそうです。先ほど紹介した「萩の間」といい、このお部屋といい、なんと贅沢なのでしょうか。
ちなみに、好文亭奥御殿には桃の間のほかに「桜の間」という部屋もあります。
今回はマイベスト襖絵に「桃の間」を選択しましたが、せっかくですので最後に見比べてみましょう。
桜と桃の違いはたくさんありますが、一番の違いは花びらでしょうか。桜の花びらは先に切れ込みが入っていて、桃の花びらは切り込みが無く、先が尖っていることが特徴的です。
描き方の違いに着目すると新しい発見がどんどん見つかりそうですね!
梅の時期だけじゃない!水戸の魅力、再発見!
いかがでしたでしょうか?今回は水戸偕楽園、好文亭の襖絵をご紹介しました。
ここには載せきれなかった美しい襖絵がまだまだ沢山あることが、唯一の心残りです。
襖絵は2016年に大規模再改修が行われ、3年もの歳月をかけ完成。後世にこの美しさを継承するため、沢山の方々の協力のもと日々運営が行われています。
周辺には白鳥・黒鳥に出会える仙波湖、徳川光圀・斉昭公を祀る常盤神社、再開発が進むJR水戸駅周辺など、見どころもたくさんです。
梅の時期だけとは言わず、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
水戸偕楽園
住所:茨城県水戸市常磐町1-3-3
アクセス:JR常磐線「水戸駅」よりバスで20分、周辺に無料駐車場あり
問い合わせ先:TEL 029-244-5454(偕楽園公園センター・水戸土木事務所偕楽園公園課)
公式HP: https://ibaraki-kairakuen.jp
好文亭
入場料:大人300円、小中学生150円、満70歳以上150円
定休日:年末年始を除き、年中無休
開館時間:9-17時