美術が好きです。
美術、たとえば絵画は、誰かの頭の中にある世界が描かれたものですよね。どんなに写実的な(写真のようなリアリティがある)絵でも、やっぱりその画家だけが持っているモノの見方や考え方が表れていて、私にとっては「斬新で不思議な世界が描かれた絵」になります。自分以外の誰かが生み出した面白いものに触れて、あれこれと考えるのが楽しいんです。
そんなわけで美術ライターをしておりますが、趣味は「美術館へ行くこと」、職業は「美術ライター」と話すと、よく「凄いですね!」と言われます。いや、別に、凄くはなくない……? 近所の美術館によく行くってだけですよ……?
どうも「難しそう」「高尚な趣味」と思われがちな美術鑑賞。そんなことはないのに! 本当にそんなことはないんですよ!
ということを教えてくれる書籍が、サンクチュアリ出版から刊行されました。その名も『音声ガイドで 聴く名画』。声優の大塚明夫さんが、かっこよくて渋い声で絵画のことを易しく教えてくれるんです。
読者は本を広げて、大塚さんのナビゲートに身を委ねるだけ。見開き2ページを使って大きく印刷された絵画を見ているうちに、絵画を見たり考えたりする面白さに、自然と気づけるはず。
「西洋絵画は《モナ・リザ》しか知らないよ」といった初心者さんにこそ、おすすめしたい書籍です!
ポイント①音声ガイドで絵画を学べる!
本書には、レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》やゴッホの《ひまわり》など、美術に明るくない人でもどこかで見たことがある絵画を中心に、64点もの西洋絵画が収録されています。見開き2ページを使って大きく印刷され、絵画が見やすいレイアウトです。
一般的な美術の本だと、本には解説文が印刷されます。しかし、本書に絵画の解説はありません。解説は音声ガイドで聴けるからです(ウェブサイトでは文字でも読めます)。
ナビゲーターは大塚明夫さん。『メタルギア』シリーズのソリッド・スネーク役など、アニメや洋画の吹き替えで誰もが一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。本書の音声ガイドでは、落ち着いた渋いお声でわかりやすく絵画を解説してくださいます。
時代背景や画家のエピソード、鑑賞のポイントなど大塚さんの解説を聴いているうちに、絵画を見る面白さに気づける仕組み。文字がいっぱいある本は苦手……という方にもおすすめです。
ポイント②大切な人と一緒に読める!
一般的に、本は1人で読むことが多いと思います。文字を読むペースは人それぞれ異なるので、1冊の本を誰かと同時に読むのは難しいかと。しかし、本書は1人で読んでも、複数人で読んでも楽しい本だな、と感じました。
絵が大きく印刷されているので、2~3人で一緒に鑑賞することは可能だと思います。大塚さんの解説をみんなで聴いて、そのあとは自由に感想を言ってみる……という本の使い方もできるのではないでしょうか。
「おうちはもう美術館」という帯の文言どおり、家族と、友人と、恋人と、一緒に美術館に出かけたような体験ができるはず。美術館よりもプライベートな自宅などだからこそ、素直に感想を言い合って楽しい時間を共有したり、学びを深めたりできるのでは。
ポイント③コラムも充実
絵画の解説のみならず、痒い所に手が届くコラムも充実。画家とクライアント(当時の権力者など絵を発注する人)のいざこざ、「アカデミー」や「宮廷画家」など西洋絵画を学ぼうとすると必ず登場する用語など、平易でわかりやすい文章で解説されています。
私が特に興味深く読んだのが、「モネとマネの話」です。「モネ」も「マネ」も画家ですが、よく似た名前のために混同されがちなんです。日本では「モネ」のほうが知名度があるためか、LINEやメールなどカジュアルな場面で「マネ」のことを書いて、「モネ」の誤字だと思われてしまったことがあります(笑)
ほぼ同時代のフランスを生きた画家ですが、作風や志した方向は異なります。本書で比較しながら、モネのみならずマネのことも知っていただけたら……と思います!
まとめ
本には絵画を大きく印刷し、解説は耳から取り入れる……という、今までにありそうでなかったのが本書『音声ガイドで 聴く名画』です。
西洋絵画を代表する画家の名画が揃っているので、これから美術を学んでみたい初心者の方におすすめです!
書籍情報
音声ガイドで 聴く名画
監修:佐藤 晃子 ガイド:大塚 明夫
2023年07月25日 発売
ISBNコード 978-4-8014-0120-4
A5判 ソフトカバー フルカラー 176ページ 束20ミリ
定価:1,900円(税込2,090円)
ホームページ:https://www.sanctuarybooks.jp/book-details/cate00054/book1418.html?&utm_medium=web&utm_campaign=web&utm_source=bookpage