アート

現代人の狩猟採集?『ジャム・セッション 鴻池朋子 ちゅうがえり』で開かれる「内と外」

こんにちは、美術ブロガーの明菜です。アーティゾン美術館で開催中の展覧会『ジャム・セッション 鴻池朋子 ちゅうがえり』に行ってきました!

展示風景

写真を見て「ここ、本当に美術館!?」と驚かれたのではないでしょうか?

少し暗めの展示室で、動物の毛皮を使った作品がたくさん展示されています。もちろんここは美術館ですが、本展は目だけでなく、五感でも色々なことを感じられることでしょう。

展示風景

鴻池朋子(こうのいけ ともこ)さんは、絵画や彫刻に加え、動物の皮を使ったり、地方に伝わる歌や現代に伝わるさまざまな人の語りを基に作品を作ったりする現代美術家です。

本展では「狩猟採集」をテーマの一つとし、人間と人間以外の生き物の関わりを解きほぐすようなアートを見ることができます。どんな展覧会なのか、一緒に見ていきましょう。

人間の文化の原型「狩猟採集」

野性味ある動物の絵や、動物の皮を使った作品などから、「狩り」を連想できると思います。鴻池さんは、「狩猟採集」を人間の文化の原型と考えており、作品を通じて私たちに問いかけています。

展示風景

狩猟採集とは、人間の社会の外側にあるものを、内側に持ってくること。そう考えれば、現代人にも狩猟採集の本能が残っているのではないでしょうか。ぬいぐるみにフィギュア、食玩、バッグに靴…種類は違えど、収集癖を持っている人は多いと思います。

本展では、アーティゾン美術館の収蔵品であるギュスターヴ・クールベの絵画《雪の中を駆ける鹿》も展示されています。そういえば、美術品のコレクションも「採集」と言えるのではないでしょうか。

展示風景、奥の絵画:ギュスターヴ・クールベ《雪の中を駆ける鹿》1856-57 年頃 石橋財団アーティゾン美術館

鴻池さんの作品を通して、私たちは収集癖の原点とも言える「狩猟採集」について考えることができます。「外から内へ」のベクトルですね。

見ることの意味を問う

また、人の顔の真正面を描いた作品も多かったです。目が大きいので、作品を見ていると、逆に見られているような怖い気持ちにもなりました。

展示風景

鴻池さんは「見ること」についても深く問うています。美術品だけでなく、私たちは「見ること」によって周りの世界を知ります。それは自分(内)と世界(外)が接触するということなので、目が内と外を繋げる役割をしているのだなぁ、と感じました。

展示風景

繋げるだけでなく、見ることは「内から外へ」働きかけることでもあります。狩猟採集が「外から内へ」なら、見ることはその逆。むしろ鴻池さんが伝えたいのは、人間はどうやったら人間界の「内から外へ」働きかけることができるのか、なのではないかとも思えてきます。

大きな襖絵と滑り台

会場で目を引くのが、真ん中にある円形の作品!スロープで上に登れるようになっています。

展示風景

上からは円の内側を見ることができ、実は襖絵だったことに気づきます。滑り台で襖絵に囲まれた世界に着地できるので、ぜひ滑ってみましょう。美術館に滑り台があること自体も面白いと思います。

展示風景

「襖」も、内と外をつなぐ役割を持つ道具ですよね。作品に触ってはいけませんが、「この襖を開けたら、何が見えるのかな?」と想像することはできます。実際には展示室の向こう側が見えるのですが、大自然が広がっているとか、妖怪が大宴会を繰り広げているとか、妄想する楽しみもあると思うんですよね。

【まとめ】狩猟採集と鮮やかなちゅうがえり

本展では、「外から内へ」何かを集めたくなる人間の癖が、狩猟採集という原点として表現されていました。同時に、人間界の「内から外へ」の動きにはどんなものがあるのか、考えることができました。鮮やかな反転、ちゅうがえりと言えるのでは。

展示風景

例えば、今の世界の課題となっている人間と自然との共生は、まさに「内から外へ」の類だと思います。こうした展覧会が、東京のど真ん中の美術館で開催されていることにも、メッセージを汲み取ってしまいそう。

展示風景

ちなみに本展はアーティゾン美術館の「ジャム・セッション」の記念すべき第1回目。「ジャム・セッション」は、同館のコレクションと現代美術家の共演によって生み出される展覧会です。

「現代美術」「現代アート」と聞くと難しく感じられるかもしれませんが、そんなことは無いと思うんです。同じ時代を生きる作家の展示なので、共感も反発もしやすいジャンルです。本展もそうですが、生で体験して何かを思ったとき、他に変えがたい好奇心が芽生えるはず。

展示風景

ジャム・セッションは年1回の開催を予定しているそうです。第2回も今から楽しみだなぁ。

展覧会情報

展覧会名:「ジャム・セッション 石橋財団コレクション × 鴻池朋子
鴻池朋子 ちゅうがえり」
会期:2020年6月23日[火] – 10月25日[日]
会場:アーティゾン美術館 6階展示室
開館時間:10:00 – 18:00 ※入館は閉館の30分前まで
(当面の間、金曜20時までの夜間開館は中止)
休館日:月曜日 (8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日
※入館は日時指定予約制
https://www.artizon.museum/
同時開催:
〇第 58 回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展
「Cosmo-Eggs | 宇宙の卵」(5 階展示室)
〇石橋財団コレクション選 (4 階展示室)
 特集コーナー展示|新収蔵作品特別展示:パウル・クレー
 特集コーナー展示|印象派の女性画家たち

明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館めぐりの楽しさを発信。西洋美術、日本美術、現代アート、建築、装飾、ファッションなど、扱うジャンルは多岐にわたる。人間より猫やスズメに好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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