日本の美術館激戦区といえば、上野、六本木、そして箱根ですね!(当社調べ) ○○の森美術館とか、箱根○○ッ○美術館とか、色々あるんです。今回はポーラ美術館へ行きましょう。規模が大きく、アートあり・ご飯あり。丸1日「楽しい」が持続する美術館へ!
私が注目したのは、3つの展示。
・ルドン ひらかれた夢ー幻想の世紀末から現代へー
・増田セバスチャン×クロード・モネ Point-Rhythm World 2018 -モネの小宇宙-
・平野薫ー記憶と歴史
ルドンのワクワクが詰まった愛嬌あるキメラ:ルドン ひらかれた夢ー幻想の世紀末から現代へー

オディロン・ルドン《神秘的な対話》(1896年頃)岐阜県美術館
日本でもじわじわとファンが増えつつあるオディロン・ルドン。印象派の大人気画家モネと同い年なんだって! 知らなかったなー。
目を伏せた女性の周りを花が舞う絵画など、幻想的な作風で知られるルドン。かといってメルヘンなわけではなく、憂いのある退廃的な絵が美しいよね。
画家本人の性格も呼応していて、自分の世界の内側を見つめていました。

オディロン・ルドン《日本風の花瓶》(1908年)ポーラ美術館
と、なるはずが。そうとも言いきれん! ってことが発覚。
ルドンは自然の神秘に夢中だったのですよ。同じ頃には顕微鏡が開発され、肉眼で見えないスケールの世界を覗くことができるようになりましたし。
当時のルドンの驚きを想像したら、体がぶるっと震えます。見えない場所で生きる命があるってことは、妖精も悪魔もいるかもしれないじゃないですか! 夢すら異世界へのトリップのように感じたかも。

オディロン・ルドン《蜘蛛》(1887年)岐阜県美術館
本展の担当学芸員、東海林洋さんはルドンの奇想についてこう語ります。
「当時話題になったダーウィンの進化論では、生き物が多様な姿に枝分かれしていきます。枝を逆向きに辿ったとき、たとえば人間と魚が一体化したものがあるのでは? そんなロマンがヒントになったのかもしれません」

オディロン・ルドン《『夢の中で』I. 孵化》(1879年)岐阜県美術館
そう、それ! ルドンのキメラはグロテスクでなく、愛嬌があるんですよ。画家のワクワクが詰まった生き物だからなんだなぁ。
ワクワクする神秘の追求は時代を超え、現代のアーティストにも受け継がれています。例えば、鴻池朋子さん。

鴻池朋子《素焼粘土》(2013年)作家蔵 ©️Tomoko Konoike
ガラクタの山のように見える物たちは、生きているのか、死んでいるのか…。急な天変地異で一気に空気に晒された海の生き物みたい。

鴻池朋子《素焼粘土》(2013年)作家蔵 ©️Tomoko Konoike
素焼粘土のザラついた質感が余計にリアル。母なる海を暴く、ルドンよりずっと過激な作品だね。好き。
同じく現代アーティストの、イケムラレイコさんも。眠る少女は作家がよく使うモチーフです。

イケムラレイコ《Haruko II》(2017年)作家蔵 ©️Leiko Ikemura, Courtesy of ShugoArts
どんな夢を見ているんだろう…おとぎ話の主人公? 火を吹くドラゴンと戦っても良いし、白馬に乗った王子様に見初められても良いじゃない。
あるいは、死なのかも。子供の頃、寝る前に「二度と起きられなくなったらどうしよう」と考え込んでしまい、眠れなくなったことを思い出しちゃった。

オディロン・ルドン《ダンテとベアトリーチェ》(1914年頃)上原美術館
人間って何なんだろう? どうして夢を見るんだろう? 現代の科学も答えを出せないルドンの出題が、100年を超えて見る人の脳みそをザクザクえぐります。
Kwaiiフィルターのモネにドキドキ:増田セバスチャン×クロード・モネ
しんみりしてきたのでインスタ映えする展示に行こう! ドン! すごい! きれい!

増田セバスチャン《Point-Rhythm World -モネの小宇宙-》
「きゃりーぱみゅぱみゅのミュージックビデオが撮れそうだなぁ」って思いましたよね? ピンポイントで思ったよね?
彼女の代表曲「つけまつける」「ファッションモンスター」などのアートディレクションを担ったのが、増田セバスチャンさん。このインスタレーションも彼の作品です。
イルミネーションの空間は、よく見るとモネの《睡蓮の池》がモチーフになっています。

クロード・モネ《睡蓮の池》(1899年)ポーラ美術館
世界中から彼のお眼鏡にかなった雑貨を集め、増田セバスチャン流のジヴェルニーの庭を三次元に作り上げました。原宿Kawaii文化を築いた彼のフィルターを通すと、モネの睡蓮はこうなるのかー。

増田セバスチャン《Point-Rhythm World -モネの小宇宙-》
「わびさびが注目される日本文化には、『ハレ』という大切な要素があります。ハレが失われつつある現代にハッピーを訴えかけたい」と語る増田さん。キラキラ雑貨と人の動きに反応する光と音が輝く「ハレ」の瞬間にドキドキします。
雨を受けた糸に場所の記憶を見つけた:平野薫ー記憶と歴史

平野薫《untitled -rain Hiroshima-》(2018年)
雨のように垂れる糸の束を下から上に辿ると…傘? この作品は、雨を受け止める布をほどき、糸と糸を結んで作られました。

平野薫《untitled -rain Nagasaki-》(2018年)
洗濯後の衣服なのにお父さんのにおいがする…ってこと、ありますよね。作者の平野さんはこの感覚を糸に見出しました(語弊)。衣服の縫い合わせをほどいて出てくるヨレヨレの糸。着た人の記憶が残るから、糸に不規則なヨレができる、と。
今回展示されているのは、傘。平野さんは雨を受けた糸に場所の記憶、すなわち歴史を発見しました。そう言われると、糸が傘を穿つ雨のように見えてくるから不思議。
どれも平野さんのルーツで使い古した傘です。長崎は彼女の出身地、東ドイツは海外研修時代の住処、広島は大学時代を過ごし、今も住んでいる場所。偶然結びついた3つの場所は「第二次世界大戦」を想起させ、作品の宿命を感じさせます。

平野薫《untitled -rain DDR-》(2014年)
美術展の感動をそのまま食べる!?
シリアスな話をしたので、そろそろお腹が空いてきたよね? ポーラ美術館には明るく開けたレストランもあり、展覧会にちなんだメニューが食べられます。美術展の感動をそのままに、美味しいものを食べられる恐ろしい仕掛けであります。

レストラン アレイの企画展コースメニュー「ルドン ひらかれた夢」展 ルドンの食卓 ~花の幻想のファンタジー~
でも、ごめんなさい。先に謝っておきます。食べるのに専念していたので、美味しさが伝わる写真を撮り忘れました。そのため、ここから先は微妙な写真と私のハイテンションで流します。

レストラン アレイの企画展コースメニューより、仔羊のコートレットとカイエット 赤ワインソース
ラム美味しいー !!! 味が染みてるぅー!!!

《Point-Rhythm World -モネの小宇宙-》にインスパイアされたデザート《睡蓮》
デザート美味しいー!!! すりおろしリンゴの味がするぅー!!!
現場からは以上です。次回の趣味れーしょん美術館もお楽しみに!
【展覧会情報】
『ルドン ひらかれた夢ー幻想の世紀末から現代へー』
会期:2018年7月22日(日)〜12月2日(日) 会期中無休、ただし9月27日(木)は休室
『増田セバスチャン×クロード・モネ Point-Rhythm World 2018 -モネの小宇宙-』
会期:2018年7月22日(日)〜12月2日(日) 会期中無休
『平野薫ー記憶と歴史』
会期:2018年7月22日(日)〜9月24日(月・祝) 会期中無休
会場:いずれもポーラ美術館
開館時間:9:00〜17:00
ポーラ美術館公式サイト:http://www.polamuseum.or.jp/