祇園祭のお菓子「したたり」が通年のお菓子になった理由とは?

したたり」という和菓子が、京都の和菓子屋「亀廣永(かめひろなが)」で作られ、その店頭で売られています。この「したたり」という名前に惹かれて、一体どんな食感・味なのだろうか、と憧れを抱いてきました。

「したたり」の意味は「滴る」から来ています。でも、なぜ滴るなんでしょう? 水が滴る、などとよく言いますが、お菓子がしたたる……?

実は、私は過去に7月にお店に行って売り切れ、8月に行って売り切れと、ご縁がなかったのか、なかなか食べることは出来ませんでした。

透明な琥珀色の「したたり」について

ここで「したたり」について少しご説明します。
京都の夏の風物詩と言えば、祇園祭。豪華絢爛に彩られた鉾が、祇園の街を巡行する、実に華やかな祭りです。
ある時、菊水鉾のお茶会に出す新しい茶菓子を作って欲しいと依頼を受けた亀廣永さんが作り出したのがこのお菓子でした。
菊水とは菊の葉に自然に溜まった、不老長生の水から名前を取っています。その、使われている水の良さ、また口にするとしたたるような風味から「したたり」と名づけられました。
そういう由来から、もともと祇園祭の間だけしか手に入らない期間限定のお菓子でした。でも、あまりに評判が良くて、今では通年販売されています。

これを書いているのは4月です。今度こそ、確実に「したたり」を手に入れるべく、朝から気合を入れて亀廣永さんに行くことにしました。最寄駅、京都市営地下鉄の烏丸御池駅からお店に向かいました。地下鉄四条駅や阪急烏丸駅からも徒歩圏内です。「ウィングス京都」の近くと言えば分かりやすいでしょうか。

祇園祭ゆかりの菓子を生んだ『亀廣永』へ

街の中に溶け込みつつ、風格のある和菓子屋「亀廣永(かめひろなが)」です。
のれんをくぐってお店の中を見ると(あっ、「したたり」がある!)正面に「したたり」の箱があるのを私は見逃しませんでした。思い切って中に入ります。ち
ょっと店の中であたりを見回していると、私が観光客にしか見えなかったのか、服装から和菓子職人であろう男性の店員(店長?)が「うちは、これとこれ」と言いながら、「したたり」と、もう一つの代表的なお菓子「古都大内」を示されました。
他にも生菓子、干菓子、羊羹などがケースに並んでいましたが、新規のお客さんにはまず定番を食べてみて欲しい、という強い意思のようなものを感じました。
今回は、こちら側にも「したたり」へのあこがれがあって来ましたので、すんなりとお菓子を購入することになりました。

いざ!「したたり」を実食!

この「したたり」と言う書は、八坂神社の当時の宮司・高原美忠さんが書かれたものからとったそうです。

妙な混ぜ物がなく、材料がシンプルなのが良いです。それでいて、1つのお菓子に4種類の糖を使い分ける、その工夫がすごいです。しかも、全て国産。それぞれの素材に良い意味でのこだわりがあるのだろうと思いました。

色は琥珀のような茶褐色ですが、透明で光が透けます。この色合いがなんとも綺麗です。一般的な羊羹よりプルンプルンとした感触です。崩れないか心配になるくらいですが、腰は案外しっかりしています。

さて、問題は味です。見るからにおいしそうですが、しっかりと味わってみましょう。つまようじが上手く刺さらなかったので、私は小さな匙を使いました。のどにするりと入ってきます。

思わず「美味……!」と、うっとりします。

見たところ、表面はそんなにしたたってはいないです。主に寒天のほろっ、つるっとした歯応えが、したたり感を絶妙にかもし出しています。

駄菓子に使われる寒天は、正直言って子どもの頃は少し苦手でした。植物性の寒天は、動物性のゼラチン(ゼリー)の下位互換品なのではないかと勝手に思ったりしたものですが、ちゃんとした、質と使い方の良い寒天は全く違います。しかも、「したたり」では寒天の良さを前面に押し出しています。それでこんなにおいしい。今回、寒天を見直しました。

色付けに上品に使われた黒糖がいい仕事をしています。黒糖の香りも良いです。

現在の味の基準では、比較的甘さがしっかりとするお味なのも、暑さでバテ気味になる夏にぴったりかと思います。かと言って甘ったるいわけではなく、ひたすら上品です。

冷蔵庫で冷やしても美味しくいただけます。やはりこれは夏にいただきたい味ですが、今回は京都市の夏日にいただいたので、ある程度感覚はつかめているかな、と思います。流石に祇園祭は再現出来ませんが、脳内で思いをはせてみましょう。

最後に

まずは食べたい、時期は問わないという方も、お店に前もって電話をかけておくと安心です。

祇園祭期間とその前後、6月~8月は購入が難しいです。大人気、でも手作りなので数が限られます。この時期は、だいぶ以前から予約しておいても手に入るかどうかは分からない、くらいに思っておいたほうがいいです。

京都の街を今より半歩深く知るために、「したたり」を見かけたらぜひ、召し上がってみてはいかがでしょうか。

店舗情報

店舗名亀廣永
住所京都府京都市中京区高倉通蛸薬師上ル和久屋町359
電話075-221-5965
営業月〜土 09:00 - 18:00
定休日日・祝日
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

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