古都・鎌倉に「英国アンティーク博物館BAM鎌倉」がオープン~本物のアンティークでイギリスを愉しむ~

2022年9月23日秋分の日、神奈川県鎌倉市に英国アンティーク博物館BAM鎌倉がオープンしました。

場所は、JR鎌倉駅から鶴岡八幡宮に向う若宮大路沿い、三の鳥居の近くです。9月17日に開館前の内覧会を訪ねました。

春には桜、ツツジの名所となる若宮大路

この博物館は、土橋正臣館長が歴史のある鎌倉に英国のアンティークを展示したいという長年の夢を実現したもので、自ら集めた本物の英国のアンティークがぎっしり詰まっています。

鎌倉彫をモチーフにしたファサード

三の鳥居の少し手前に「英国アンティーク博物館」

4階建てファサード(正面)には窓がなく、鎌倉彫から着想を得た木製のモチーフが連なって上に行くほど小さく、建物をより高く見せています。夜にライトアップされると、また違った美しさがあります。

黒塗りのロンドンタクシーが出迎える

入口の大きな文字「BAM(バム)」BRITISH ANTIQUE MUSEUMの頭文字と取ったものです。

黒塗りのロンドンタクシーも、もちろん館長のコレクションのひとつで1970年代製造のヴィンタージカーです。イギリスではこの車を使ったカフェが走っていますが、冬にはここ鎌倉にも再現され、紅茶やコーヒーがいただけるそうです。

1階 ヴィンテージフロア 1955~1990年

パブで使われていたアンティークカウンター

1階は受付と売店です。まずはファサードの壁面から続いている、木製の波打つような天井をご覧ください。カウンターもアンティークで、刻まれた模様にも威厳があります。

エリザベス女王在位70年を記念する「プラチナジュビリー」のマグカップやテディベアは貴重品

直輸入のテディベア、マグカップ、キーホルダー、ナプキンなど英国グッズがずらりと並んだ棚で足が止まり、イギリスにいるような気分を高めました。

ぎっしり並んだ英国直輸入のグッズ、赤い電話ボックスも展示棚

シャーロック・ホームズ博物館公式グッズも

1階は入場無料なので、ここだけのぞいてみるのもおすすめです。

次世代に伝えたい館長の想い

カウンターに優雅なレジスター

土橋館長は、20代のころイギリスで出会った古きよきものを大切にする文化を、次世代に伝えたいとこの博物館をつくりました。展示を見て、子どもたちにカッコいい、素敵だと思ってもらいたいと、そのために3つの展示室には説明書きはほとんどありません。アンティークは細かい飾りがたくさんあるので、じっくり見ていると楽しいものがみつかります。

1~2階までの階段には風景画がびっしりと

階段を上って下の階から順に部屋を見てください。壁には100年以上前に描かれたイギリスの風景画が並んでいます。ターナーやコンスタブルの影響を受けた画家たちの作品です。現在もカントリーサイドと呼ばれる田園地帯にはこの風景画と同じような光景が広がっています。

2階 ジョージアンルーム 1714~1830年

豪華な銀器

「ジョージアンルーム」はジョージアン時代、ヴィクトリア時代、エドワーディアン時代の銀製品を展示しています。シャンデリアの明かりに、銀の食器が輝いて幻想的です。右の大型キャビネットには紅茶ポットが時代順に並びんでいます。

左のキャビネットには、がま口バッグのような形のビスケットウォーマーがありました。この容器は焼き菓子を中に入れて煖炉の前に置いて温め、そのまま野外に持ち出すことができます。屋外でのティーパーティーを想像して楽しくなります。

左の壁には、装飾を施した暖炉の内側に花柄のタイル、クジャク模様の壁紙を燭台の灯が照らしています。

200年前のハープ

ジョージアン時代につくられた高さ180cmのハープ、支柱の上部には羊の頭と女性像、足元にはライオン像が刻まれています。

ハープの後には、「ジェントルマンズ」のアイテムが並ぶ小部屋、王室御用達の靴メーカージョン・ロブションの木型やトランク、ウイングバックチェア、近衛兵の服や熊毛の帽子もお見逃しなく。

3階 シャーロック・ホームズの部屋 1887~1927年

ベイカーストリート221B

3階はロンドンのベイカーストリート221Bとシャーロック・ホームズの部屋が再現されています。ホームズはコナン・ドイル(1859~1930年)が書いた探偵小説の主人公です。「シャーロック・ホームズ」シリーズは1887年から1927年までの40年間に60作が誕生しました。ドラマや映画でも人気を博し、正面にはドイルとホームズを演じた俳優ラスボーンの首像がこちらを見ています。

リビングにはヴァイオリンと鹿撃帽

ホームズが依頼人を迎えるリビングには、2脚の肘掛け椅子、椅子の上にはホームズが思索するときに弾くヴァイオリン。暖炉には暖かな炎が燃え、煖炉の上にはナポレオンやヴィクトリア女王の胸像があります。左には薬品の瓶、顕微鏡と捜索の道具が並びます。 

右手の書斎にはホームズが鹿撃帽を被り、インバネスコート姿で待っています。

コーナーにはお茶セット

19世紀の寝室

緑色の小部屋はホームズの物語の寝室をイメージしたものです。左から気になったものをあげていくと、小型の鉄のベッド、ボクシングのグローブ、鹿の角、暖炉、木製倚子型トイレ、写真にはありませんが、昆虫標本、各部屋の呼び出しベルが並んだボードなども。

入口左の小部屋には、アンティークの書斎、階段の下には木馬、『ハリーポッター』の少年ポッターが暮らした叔父の家を思い出しました。

4階 ヴィクトリアルーム 1837~1901年

ヴィクトリア女王の肖像

4階はヴィクトリア女王が在位した時代のデザイン様式で華やかに設えてあります。ヴィクトリア女王の時代は、産業革命によって大英帝国が最も栄えた時代になりました。

ヴィクトリア女王の肖像画をモチーフにしたステンドグラスの四隅に即位した1857年を表わす数字があり、ライオンが女王の威厳を讃えています。同じ壁にエリザベスI世のステンドグラスと対になって展示されています。

ラッパにはバラの絵画

大型の蓄音機はロンドンのハンドメイド蓄音機メーカーの1935年製、巨大なラッパは直径93cm、薄い紙を重ね合わせて中側にも外側にもイギリスの国花バラが描かれた特注品です。ゼンマイを50~100回巻いて、針をレコード盤に落とすと、重厚な深い音が流れました。

鎌倉と英国の歴史をつなぐ茶室

隈デザイン立礼式茶室

2畳の立礼式の茶室は鎌倉と英国をつないでいます。壁にはこの博物館を建てるときに出土した北条氏の邸宅跡から800年前の横木を並べ、旧段葛の土を漉き込んだ和紙を張っています。床板は12世紀から続く英国ホテルで使われたオーク材、中央には英国アンティークのテーブルと椅子があります。

窓からは赤い鳥居

掛け軸に見立てた縦長の窓からは鶴岡八幡宮の三の鳥居と裏山が見えます。その裏山が住宅開発の対象になり、鎌倉市民が英国のナショナル・トラスト運動を取り入れ、募金活動を行って土地を買い取った1964年が、日本最初のナショナル・トラスト運動になりました。現在では運動は全国50か所以上に広がっています。

また、この窓は京都・銀閣寺の茶室「同仁斎」で、明障子を開けて掛け軸のように庭を見ることを思い出しました。

土橋館長が博物館に込めた想い

プレス会見左から:設計をした隈研吾氏、土橋正臣館長、ロングボトム駐日英国大使

土橋正臣館長は、20代のころイギリス文化に出逢ったことがきっかけで英国アンティークのコーディネーターになり、やがて自身が集めた英国アンティークで博物館をつくり、次世代に伝えたいと考えるようになりました。場所は歴史のある古都鎌倉と決め、2019年の秋に隈研吾氏に設計を依頼し、今年2022年9月23日にオープンになりました。隈氏鎌倉の中学・高校に通い、イギリスのヴィクトリア&アルバート博物館のスコットランド分館を設計(2018年完成)するなど、鎌倉・英国との縁がある建築家です。

土橋館長は、「アンティークとは人が作り、百年以上経たもので、預かって次世代に渡すもの」と語ります。アンティークにはつくった人と使う人の想いがこもっています。6月にインタビューをしたやはり鎌倉にある古美術ギャラリー「Quadrivium Ostium」の黒田オーナーからも同じように「古美術は譲り渡すもの」と伺いました。古いものを愛でる方の想いは同じなのです。

郵便ポストも英国風

JR鎌倉駅から歩いて数分、若宮大路を通っても、小町通を抜けてもよし、英国アンティーク博物館ができて、鎌倉歩きの新たな楽しみが増えました。館内で撮影できるのもうれしいです。

もっと詳しい知りたい方は、館長が説明する動画をごらんください。

【情報】
英国アンティーク博物館〈BAM鎌倉〉
開館時間:10時〜17時(最終入館 16時30分)
休 館 日:毎週月曜、祝日の場合は開館(翌日閉館)
住  所:神奈川県鎌倉市雪ノ下1-11-4-1
利用料金:大人1,300円、中学・高校生1,000円、小学生500円、幼児無料
日時指定のオンラインチケット・コンビニチケットは、前日までに購入すると200円引き

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