カカオとコーヒー。聞くだけでいい香りや甘い味わいがよみがえってきませんか。
2024年2月3日(土)~25日(日)、大阪市の植物園「咲くやこの花館」にて、カカオとコーヒーに特化したイベント「カカオとコーヒー展」が行われています。
考えてみれば、カカオやコーヒーノキは植物なので、植物園で取り上げてもおかしいことはないのですが、美味しい嗜好品というイメージが強いので、どんな切り口で取り上げられるか期待がわきます。また、会期中は時期的にも14日のバレンタイン・デーと重なりますね。
この記事では、筆者が植物園ならではの展示とワークショップなどを楽しんできた様子をお届けします。イベントが気になっている方やこれから訪れようとしている方の参考になったら幸いです。
ポスターの展示によると、「カカオとコーヒー展」は2015年から10回続く人気イベントです。
今年(2023〜24年)は、咲くやこの花館での生育が芳しくなく、時期を秋以降に延期することも検討されたといいます。生き物相手の展示は本当に難しいのです。
そんなことがありつつも、無事2月に開かれたこのイベントですが、まずは本物のカカオとコーヒーノキに出会いたいです。見ると、会場のほぼ真ん中に、カカオとコーヒーノキが植えられています。カカオの実は一瞬、作りものかと思ってしまいました。それだけ立派な実だったのです。
温室に生えているカカオとコーヒーノキにも出会えるそうです。
植物園スタッフの方に館内を案内してもらえるフラワーツアー、今回は特別編の「カカオとコーヒースペシャルツアー」に同行させていただきました(会期中休館日を除く毎日開催)。
今日の担当の方は話が上手な方で、聞いていて飽きません。最初にヘッドフォンを貸してくださっているので、話もよく聞こえます。
バナナの草(実は木ではないことを知りました)やサボテンや、綺麗なヒスイカズラなどの植物も紹介してくださいました。
もちろんコーヒーノキやカカオを見ることができました。
森の家みたいなところでは、モニターや本物のカカオバター、カカオマスなどを使ってカカオとコーヒーについて詳しく説明してくださいました。
温室の外は回廊になっていますが、壁に掲示されたポスターやパネルも見逃せません。
「きのこの山」などでお馴染みの「(株)明治」が集められた、ガーナ共和国の子どもたちのカカオにまつわる絵も素敵でした。ただ、出来れば作者の子どもの名前を掲示してほしかったなと思いました。作者と鑑賞者、遠くて会うことはないかもしれないけれど、極東の地で展示されてしかも自分の名前も出たということは、きっと子どもたちの励みとなりますから。
その他、カカオ生産者の貧困問題、フェアトレードについてなど、考えさせられる問題提起もありました。
そろそろ昼食にしましょう。館のレストランや、ワールドトラベルカフェ、表のキッチンカーで食事が取れますが、今日はちょっと考えがあります。
この日、1Fのフラワーホールのテントにメキシコ料理のお店が臨時で出るというのです。メキシコ料理には、「モーレ」というカカオを使った煮込み料理があるといいます。今回出展されているお店は、名前も「Tacos y Tequila Mole(タコス イ テキーラ モーレ)」。
モーレ、日本人の舌にあうのかなあ……とちょっと思いながら、1つ注文しました。見たところ、普通の洋食のランチのようです。
茶色のソースで煮た鶏肉を口に入れると……美味しい! エスニックというより、なんというか、普段の料理としても美味しいではありませんか。まったりとしてコクがあり……もちろん、少し珍しい風味もありますが、食べつけない人を拒む感じではありません。
そこに店員さんが何かを手にやってきました。「ライムかけてもいいですか?」まさかの味変。しかもご飯のほうに。これもさっぱりして煮物に合って美味しいです。
普段は大阪府堺市中百舌鳥(なかもず)にお店を構えておられるそうです。
午後は申し込んでおいたワークショップに参加して、チョコレートを作ります。しかもウガンダ産の高品質なカカオの生豆からです。参加者は子どもと付き添いの大人が多いようですが、大人もわくわくします。
4人1組でテーブルに着きます。私のテーブルは3人家族(大人の方は単なる付き添いでなく、3人とも参加を申し込んだそうです)の皆さんと一緒でした。
まず、豆の焙煎。配られたカカオ豆を珈琲焙煎用の器具に入れ、ガスコンロで炒ります。
出来たら取り出して、熱いのに気をつけながら皮をむきます。
それをミキサーに入れて、水とか入れずに直接かくはんします。長いことミキサーにかけると、豆がとろけていきます。これはちょっと不思議です。時々ミキサーからあやしい音がしますが、ミキサーはびくともしません。よほど丈夫なのでしょう。
いい感じのところで講師の先生の指示で砂糖を入れます。結構な量ですが、これでもハイカカオになるのだそうです。
またミキサーにかけます。心なしか先ほどよりいい音がします。練れてきたのでしょうか。ですが砂糖をきちんと溶かすため、まだまだミキサーがけが必要です。
出来たところでちょっとだけ味見をします。まさにチョコレートの味です。
それを型に入れて、だいぶチョコレートらしくなりました。
それにしても、カカオ豆と砂糖だけでここまで出来るとは……と感心しました。
さらに自分の分のチョコレートにトッピングします。
私はちょこっとドライフルーツをあしらう程度にしましたが、子どもたちはノリノリでミニマシュマロやスプレーチョコも使ったりします。
トッピングしておけば、この後冷蔵庫に移動しても、後でどれが誰のかすぐ分かるというメリットもあります。
冷えたところで改めて試食。酸味があるけれどとても美味しいです。
唯一残念だったのは、出来たチョコは割とすぐ溶けてしまうこと。溶かさないようにするには「テンパリング」などの高等技能が必要だそうです。今回は帰宅後冷蔵庫に入れて、自分や家族と食べるのがいいでしょう。
しかしこの生豆からチョコレートを作るワークショップは2月3、4日のみの予定でした。今年は情報がもう間に合わないか……と思っていたところ、急きょ追加の日程が決まったそうです!
詳しくは咲くやこの花館のウェブサイトにて。→https://www.sakuyakonohana.jp/event/16793/
そう言えば、ジャコウネコの糞から取れるコーヒー豆で作ったコーヒーを味わうワークショップも追加になりました。これはとても貴重な機会です(参加費もそこそこかかりますが)。
そのほかにも、コーヒーやカカオにまつわるワークショップや講演などが満載です。コーヒー染め、お菓子の箱で工作などのアート・クラフト系もあります。
植物園で良いものを見せていただき、しかも学ぶことが出来、いい体験もし、さらには美味しいものをいただけて大満足でした。
思わずミュージアムショップでコーヒーノキの苗を買ってしまいました。どこまで成長するかどうか分かりませんが……
なんだか豊かで幸せな気分になって帰路につきました。このイベントはオススメです。
楽しみ方はそれぞれです。ワークショップを堪能するもよし、バレンタイン・デー近く(今年の2/14は水曜日)に珍しいチョコレートやコーヒー豆を入手しに来るもよし。もちろん「学び」もありますよ。パネルは平易な文章で、子どもから大人まで分かりやすく学べるようになっています。
カカオとコーヒーノキの調子さえ良ければ、このイベントは、来年以降も年に1回行われる予定だそうです。カカオとコーヒーをきっかけに、身近な植物の奥深い世界にはじめの一歩、踏み出してみてはいかがでしょうか。
基本情報
イベント名 | カカオとコーヒー展 |
会期 | 2024年2月3日(土)〜25日(日) |
会場 | 咲くやこの花館 |
住所 | 〒538-0036 大阪市鶴見区緑地公園2-163 |
電話 | 06-6912-0055 |
時間 | 10:00~17:00(入館は16:30まで) |
休館日 | 毎週月曜日(休日の場合は翌平日) |
ホームページ | https://www.sakuyakonohana.jp |