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ゴッホと西洋絵画の巨匠たちの作品69点を展示!

現在、SOMPO美術館では「ゴッホと静物画ー伝統から革新へ」展(会期:2023年10月17日(火)〜2024年1月21日(日))が開催されています。

「静物画を見なければ、ゴッホは語れない」といわれるほど、画家が主観で描く「静物画」において、個性溢れる革新的な画風を確立した、フィンセント・ファン・ゴッホ。

本展覧会では、国内外25か所からの出展作品全69点のうち、《アイリス》や《ひまわり》をはじめとし、ゴッホによる油彩画25点の静物画が集結する、またとない機会です。

会場では、17世紀オランダから20世紀初頭まで、ヨーロッパの静物画の流れの中にゴッホを位置づけ、ゴッホが先人達から何を学び、それをいかに自らの作品に反映させ、さらに次世代の画家たちにどのような影響をあたえたかを探っていきます。

フィンセント・ファン・ゴッホとは?

フィンセント・ファン・ゴッホ《結実期のひまわり》1887年 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファンゴッホ財団)

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890年)は、オランダのポスト印象派の画家です。

1853年オランダ南部のフロート・ズンデルトで、牧師の息子として6人兄弟の長男として生まれました。

画商の仕事をしても長続きせず、父と同じ牧師を目指すも上手くいかず、幼少期に絵を描くことが好きだったゴッホは、弟・テオのすすめもあって画家になることを決意。オランダやフランス(パリ・アルル)を移動しながら、亡くなるまでの10年の創作期間にも関わらず、約2100点以上もの作品を制作しました。

彼は、身の回りにある物で静物画を描いて、次第に個性溢れる革新的な画風を確立し、本展覧会の目玉である《アイリス》や《ひまわり》などの名画を生み出し、西洋美術史において最も有名で影響力のある芸術家の一人として、20世紀初頭に出現した前衛芸術家たちにも大きな影響を与えました。

静物画とは?

展示風景

ヨーロッパの美術史において「静物画」が西洋画のジャンルとして確立したのは17世紀のこと。

静物画は、自然物(花、魚、獲物、貝殻、野菜、果物、台所、頭蓋骨など)や人工物 (パン、料理、楽器、書籍、ガラス盃、陶磁器、パイプなど)を対象とし、動かない物を描いた絵画作品のことです。

これらを描く作家は、対象物を自らの美的感性に基づいて自由に配列し、画面を構成していると考えられることから、物に込められた意味を知ることで、当時の人々の生活や考え方を知ることができます。

静物画はジャンル分けしてみると、花束、台所画、ヴァニタス、朝食画・晩餐画、コレクション画などさまざまなカテゴリーがあり、ヴァニタスでは「人生の空しさの寓意」をあらわしていたり、コレクション画では富を誇示していたり、さまざまな静物画には宗教画や寓意画の両面も持っています。

会場内の数々の展示作品から物に込められた意味合いを読み取りながら、当時の作家の生活や思考もなどに思いを馳せながらご覧になると、ぐっとアート鑑賞が身近で楽しくなると思います。

本展覧会について

フィンセント・ファン・ゴッホ《野牡丹とばらのある静物》1886年-87年 クレラー=ミュラー美術館、オッテルロー

本展覧会は、17世紀オランダから20世紀初頭まで、ヨーロッパの静物画の流れの中にゴッホを位置づけ、ゴッホが先人達から何を学び、それをいかに自らの作品に反映させ、さらに次世代の画家たちにどのような影響をあたえたかを探ります。

会場では国内外25か所からの出展作品全69点のうち、ゴッホによる油彩画25点をご覧になれるだけでなく、17世紀の巨匠たちをはじめと、印象派、ポスト印象派、フォーヴィズム、表現主義などの画家の油彩画44点もあわせて展示してます。

見どころポイント

展示風景:手前:アドルフ=ジョゼフ・モンティセリの《花瓶の花》1875年頃 クレラー=ミュラー美術館、オッテルロー

本展覧会では、名だたる画家たち(クラウス、ドラクロワ、マネ、モネ、ピサロ、ルノワール、ゴーギャン、セザンヌ、ヴラマンク、シャガールなど)とともに、ゴッホの静物画が紹介されています。

弟・テオや妹・ウィレミーンへ綴った手紙にある、自身が語った言葉が記載されたキャプションをもと、他の画家とゴッホの作品を交互に見比べてみると、先人たちの技法や色彩、その描き方を学んで、自分の表現へと昇華していく様子のほかにも、ゴッホが生み出した独自の表現からフォーヴィズムや表現主義など、他の画家が影響を受けた様子も合わせてご覧になれることでしょう。

右:フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》1887年 SOMPO美術館所蔵 左:フィンセント・ファン・ゴッホ《アイリス》1890年 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファンゴッホ財団)

例えば、筆跡が残る荒々しいタッチ、厚く塗った絵の具、鮮やかな色彩など、当時でも珍しい独特なスタイルだった、アドルフ=ジョゼフ・モンティセリの《花瓶の花》(1875年頃)や、シンプルな技法で同系色を重ねて描いたエドゥアール・マネの《白いシャクヤクとその他の花のある静物》(1880年頃)から、ゴッホが先人たちの作品を分析し、自分なりに力強く美しい花々を描いています。

そして、こうした研究を重ねながら色彩を自由に組み合わせ、色彩が持つ表現力を高め感情をも表現したゴッホは、後のフォーヴィズムや表現主義で活躍した、モーリス・ド・ヴラマンクやマルク・シャガールなど、20世紀の美術に大きな影響を与えました。

本展覧会×ミッフィーとのコラボ商品もある!

ミュージアムショップ ミッフィーとのコラボレーション商品

本展覧会の最後に立ち寄ってほしいのがミュージアムショップ!

店内には、《アイリス》《ひまわり》などをはじめ、さまざまなゴッホの油彩画のグッズが販売されています。

マスキングテープ、リングノート、ボールペンなどのおしゃれなステンシルグッズはもちろん、エコバックや靴下など身に付けられるアパレルグッズなど、日常の中で使えるさまざまなグッズがありました。

また、可愛らしいミッフィーとのコラボレーション商品も展開されているので、ぜひチェックしてみてください。

最後に

右:ポール・セザンヌ《ウルビノ壺のある静物》1872-1873年 上原美術館所蔵 左:フィンセント・ファン・ゴッホ《皿とタマネギのある静物》1889年頃 クレラー=ミュラー美術館、オッテルロー

《アイリス》《ひまわり》などをはじめ、ゴッホの油彩画25点が集結する本展覧会。

国内外25か所からの出展作品全69点もの数々の静物画を通し、先人達から何をゴッホは学び、それをいかに自身の作品に反映させ、革新的な画風を確立していったのかに迫ることができます。

また、SOMPO美術館ならではの「ひまわり」に焦点をあてたコーナーも設けられ、ゴッホやその他の画家たちによる「ひまわり」を描いた作品を紹介し、なぜ彼らがこの主題を描いたかを探っていきます。

ゴッホ作品が好きな方はもちろんですが、人物画で名を馳せた他画家の静物画も鑑賞でき、より深くアート鑑賞にのめり込めること間違いなし!

絵画ジャンルのひとつである静物画が意味するもの、そして一品種の花に込められた想いから、当時の作家の生活や思考に思いを馳せながら、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新麻記子

情報

『ゴッホと静物画―伝統から革新へ』 SOMPO美術館

開催期間:2023年10月17日(火)~2024年1月21日(日)
所在地:東京都新宿区西新宿1-26-1
アクセス:JR線新宿駅西口から徒歩5分、東京メトロ丸ノ内線新宿駅から徒歩5分
開館時間:10:00~18:00
     ※ただし11月17日(金)と12月8日(金)は20時まで
     ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし1月8日は開館)、年末年始(12月28日~1月3日)。
観覧料:一般2000(1800)円、大学生1300(1100)円、高校生以下無料
    ※当日券料金。()内は事前購入券料金。
    ※日時指定予約制。
公式サイト:https://gogh2023.exhn.jp/

新 麻記子

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。

日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に…#日本酒がある暮らしをコンセプトにしたメディア&コミュニティ『酒小町』の編集長をつとめるほか、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

Instagram:@shin_makiko

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