6月30日は「水無月」の日? 京都の謎を秘めたお菓子「水無月」に迫る!

京都の6月の和菓子といえば、なんといっても「水無月(みなづき)」です。

とりわけ、6月30日は「水無月の日」とされて、京都人たちはお店に列をなしてでも水無月を求め、食べます。

実はこの習慣、京都とその近辺限定のもので、全国的には非常にレアだと知りました。(私自身、生まれ育った神戸では聞いたことがありませんでした)

そこで、この京都独特の食習慣について見ていきたいと思います。

そもそも、水無月とはどんなお菓子か? 「祇園饅頭(ぎおんまんじゅう)」さんの「みな月」

まず、水無月とはどんなお菓子なのかをご説明いたしましょう。

そのため、まずは東山の「祇園饅頭」さんの工場に行って「みな月」を購入しました。

本店は祇園にありますが、工場でも和菓子が買えるので隠れた名所となっています。

水無月は、基本的に白いういろうに甘く炊いた小豆を乗せた、三角形のお菓子です。

他の色の水無月もあるらしいのですが、今回はたまたま品切れでした。白が水無月の基本のようなので、むしろ都合が良かったです。

食べてみると、上品な甘味のういろうに、甘い小豆がぴったりと合っています。ほのかに桜餅のような香りがします。歯切れ良く柔らかい、適度なもちもち感がなんとも言えない美味しさです。

それにしても、なぜこれを特別に6月30日に食べなければならないのでしょうか。

他のお店の水無月も少し見ていきましょう。

「中村軒」さんの「みな月」

「中村軒」は、桂川のほとりにある、京都の西、洛西(らくさい)にあるお店です。

ここには白・黒糖・抹茶の三種類のみな月がありましたが、今回はオーソドックスな白を買ってきました。やはり三角形です。

ういろう部分がちょっと甘めなので、小豆部分が甘さ控えめになっているようです。弾力は弱めで、やさしい感じのする歯ごたえです。食べたあと、余韻が残ります。

なお、2021年の6月30日は水曜で、本来なら定休日ですが、みな月のために開店されるそうです。それだけ水無月を求めるお客さんが多いのでしょう。

「五建外郎(ごけんういろ)」さんの「みな月」

そもそも水無月はういろうがベースのお菓子なのですから、ういろうの店があれば、そこにおいしい水無月があるのではないか、と思いつきました。

ういろうの店は京都にもあります。例えば「五建外郎」さんがそうです。なので、もちろん、行ってきました。

お店の張り紙には「みな月」と「水無月」の表記が混在しています。

5種類くらいのみな月がありましたが、いずれも中が見えない四角い箱に入っていて、バラ売りはされていないとのこと。そこで、4つくらい入ってそうな感じの大きさの箱で、白のオーソドックスなみな月を購入しました。

家に持ち帰って、包みを解きます。いくつ入っているのでしょう。

真空パックに入れられたみな月を見ると、なんと。

切れ目が、ない。四角いやん。三角だから水無月なわけじゃないの? とちょっと混乱します。おそらく、ここはあえてお客さんに任せた、DIY(Do It Yourself)スタイルの水無月なのでしょう。

なので、台所で三角に切ってみることにしました。弾力があって、その上包丁に張り付くので、なかなかうまく二等辺三角形に切れません。やっとのことでそれらしい水無月になりました。

ういろうの存在感がある、もちもち感の強い水無月でした。

「おまん屋さん」というお店のジャンル

ところで、ここまで色々な水無月を食べてきて、おまんじゅうやお餅を置いている店には水無月が置いてあることが多いように思えてきました。

そこでよく調べると、水無月は京都の言葉で言う「おまん屋さん」で作られることが分かりました。

「京都の和菓子」(井上由理子著、学習研究社)という本によりますと、京都では「お菓子屋さん」と「おまん屋さん」は明確に分けられているそうです。

ざっくり言うと、同じ和菓子でもお菓子屋さんはよそ行きのお菓子(お茶の席のお菓子など)を作っていて、おまん屋さんは普段の、日常のお菓子を作ります。確かに、これまでのお店はそういう感じのお店でした。なお、水無月は主に6月の期間限定のおまんです。

それを念頭に置いて、美味しいおまん屋さんには美味しい水無月があるのではないか、という予想を立てました。

「出町ふたば」さんの「みな月」

最後に取り上げるのは、行列ができることで有名な「出町ふたば」さん。ここは京都では非常に有名なおまん屋さんなので、きっといい水無月があるでしょう。

豆餅を求めるお客さんで常に行列ができると言われているので、朝一番に行ってみました。

開店は朝8:30なのですが、バスの都合で8:20ごろに到着。すると、もう店は開いていました。早速注文し、包みを持って振り返ると、さっそく列が出来始めていました。

帰宅後、包みを開けてみると、こんな説明書きが。

『(略)冷蔵庫で1時間程度冷やして頂きますと、京都独特の名物「みな月」をより美味しくお召し上がり頂けます。』

水無月を、冷やす……? 硬くなったりしないのでしょうか。中村軒さんの包み紙には「冷蔵しないで下さい」、五建外郎さんの説明書きでは、「硬い時には温める」とありましたが……

今回最後の水無月が、自分史上初の「冷やし水無月」になるとは、ちょっとドキドキします。

説明通り、みな月を冷蔵庫に入れて1時間待ちました。

ほどよく冷たくて、ぷるぷるだけど歯にまとわりつかない、弾力の強いういろうは、上品な甘さの小豆との相性もバッチリです。お菓子としてバランスの取れた水無月だと思いました。

水無月・三角形の謎

さて、水無月をいろいろ見てきましたが、まだ一つ謎が残っています。

そもそも水無月は、どうして三角形なのでしょうか。

この点について調べたところ、水無月の三角形は「氷」を象徴しているというのが一般的な解釈でした。この大胆な見立ては、抽象画的でもあります。

昔は冬に「氷室(ひむろ)」と呼ばれる貯蔵庫に天然の氷をたくさん入れて藁などで覆っておき、夏まで保管した氷を宮中に献上したそうです。

電気などがない当時、氷は非常に貴重で、庶民の口に入るようなものではありませんでした。そこで、庶民は氷の代わりに三角形のお菓子の水無月を食べるようになった、と言われています。

水無月と行事とどんな関連が?

そして6月30日は一年の半分が過ぎた日。京都では、半年の穢れをはらい残り半年を健康で過ごせるように「夏越の祓(なごしのはらい)」という行事が行われます。

この日は無病息災を祈って神社で茅の輪くぐりをしたり、家で水無月を食べたりします。水無月のういろうの上の小豆は厄除けの意味で乗せてあるそうです。

京都の和菓子文化ならではの水無月

今回は、私の知っている範囲の水無月をいくつか取り上げてみましたが、京都にはまだまだたくさんのおまん屋さんがあります。

もし6月、できれば30日までに京都に行くことがあるようでしたら、ぜひ期間限定の水無月を召し上がってみてください。ただ、30日は早い時間でないと品切れになっているかもしれませんから、可能であれば、事前の電話予約がオススメです。

京都以外なら、お取り寄せに対応しているお店や、東京などの地域に支店を出されている京都のお店から求めることも可能です。

美味しさと無病息災のために、私も6月30日には改めて水無月をいただくことにします。我ながら、いったいどれだけ食べるつもりでしょうか。

基本情報

○祇園饅頭 工場
所在地:京都市東山区三条通白川橋西入大井手町103
TEL:075-771-1353

○中村軒
所在地:京都市西京区桂浅原町61
TEL:075-381-2650
公式HP:https://www.nakamuraken.co.jp/

○五建外郎
所在地:京都市東山区五条橋東18−1
TEL:075-561-6101
公式HP:http://www.gokenuiro.jp/

○出町ふたば
所在地:京都市上京区出町通今出川上ル青龍町236
TEL:075-231-1658

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