楽活をご覧のみなさま、こんにちは!
筆者はドイツに移住してからはWebライティング関係の業務・学業のかたわら、博物館や工場、美術館見学などに参加しながら『楽活』へ寄稿させていただいております。
また日本から9,000km離れたドイツから100%リモートワークでライター業を中心としたフリーランスとして働きながら、2024年4月からはカッセル大学で大学院生を始めました。
現在カッセルのヴィルヘルムスヘーエ城美術館では、レンブラントをはじめとする有名画家の絵画とプレイモービルがコラボレーションする、新感覚の展示会が開催中です!
この記事では、子どもだけでなく大人も楽しめる特別展「PLAYMOBIL trifft Gemäldegalerie - Alte Meister neu erzählt」を、現地カッセル在住の筆者が詳しくレポートします。
展示のハイライトだけでなく、展示前に特別に伺えた裏話も交えながらご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
【特別展】ヴィルヘルムスヘーエ美術館×プレイモービルの概要
展示会の名前は、巨匠の絵画とプレイモービルがコラボする「PLAYMOBIL trifft Gemäldegalerie - Alte Meister neu erzählt」。
プレイモービルのジオラマアーティストであるオリバー・シェーファー氏が、ヴィルヘルムスヘーエ城美術館のコレクションをもとに、往年の巨匠の絵画をプレイモービルで細部まで再現!訪問者は館内全体で30点に及ぶプレイモービルのジオラマを楽しめます。
ヴィルヘルムスヘーエ美術館について
現在のヴィルヘルムスヘーエ城美術館は3棟からなる、重要な芸術と文化財コレクションを保管する施設です。左翼には管理棟やセミナールーム、中央棟にはオールドマスターズ絵画館があります。なお右翼は2024年5月現在、改装中です。
200年以上の歴史を持つヴィルヘルムスヘーエ城は、ヴィルヘルム9世によって山岳公園の中心として建設され、かつてヘッセン=カッセルの選帝侯の夏の離宮でした。後に選帝侯ヴィルヘルム2世により、3つの建物が統合されました。第二次世界大戦ではヴィルヘルムスヘーエ城もカッセル市内と同様に甚大な被害を受けましたが、1945年から再建され、現在に至ります。
コラボ相手の「Playmobil」について
約50年間の歴史を持つプレイモービル(Playmobil)は、プラスチック製フィギュアを開発・生産してきたドイツの玩具メーカー名であり、商品名です。
プレイモービルのフィギュアは背丈7.5センチメートルで、手足や頭を動かしたり道具を持たせたりできます。そのため箱庭のようなジオラマを作り、さまざまなシーンの再現が可能です。
最近では、岸本斉史による漫画作品「NARUTO」などの人気キャラクターをあしらったプレイモービルも展開しています。
※日本語では「プレイモービル」「プレイモビル」「プレイモビール」などと呼ばれているようです。ここでは「プレイモービル」にて記載させていただいております。
ジオラマアーティストのOliver Schaffer氏について
今回プレイモービルで巨匠の絵画を見事に再現したのは、ハンブルクを拠点に活動する芸術家兼舞台美術家のオリバー・シェーファー氏(Herr Oliver Schaffer)です。
2004年以降、多くの美術館や文化機関で展示を手掛けてきたシェーファー氏のジオラマ作品は、細部にわたりオリジナルに忠実!
彼は数千のプレイモービルフィギュアを使ったインスタレーションやジオラマを制作しており、複雑なテーマもプレイモービルに落とし込み、創造力豊かに表現します。
シェーファー氏は3歳で収集を始め、現在は350平方メートルの倉庫に保管しているそうです。今回のカッセルでの展示のために15箱のフィギュアを持参し、おおよそ2週間かけてジオラマを設置したそうです。
シェーファー氏の活動はWebサイトやInstagramでも閲覧できますので、気になる方はチェックしてみてください。
・シェーファー氏 公式サイトはこちら
・シェーファー氏のInstagramはこちら
【特別展】ヴィルヘルムスヘーエ美術館×プレイモービルのハイライト
この章では、プレイモービルの世界観と巨匠が手掛けた絵画たちが、どのように再現・展示されているか、筆者が実際にシェーファー氏から伺った内容も織り交ぜながらご紹介します。
館内に散りばめられた想像力豊かなシェーファー氏の世界観
館内に点在するプレイモービルのジオラマは、シェーファー氏オリジナルのアイディア満載で再現されています。たとえば、上記絵画のジオラマには、白い壁の裏側が表現されていません。
しかしジオラマの反対側に回ってみると、絵画では表現されていないジオラマが展開されています。
幼少期からプレイモービルを知り尽くしているシェーファー氏の創造力の高さが伺えます。
Playmobil再現に隠された○○
シェーファー氏いわく、絵画をジオラマで再現する際に、プレイモビールの『アステリックス&オベリックス』シリーズのパーツを多く活用したとのことでした。
『アステリックス&オベリックス』はフランス生まれのコミックキャラクターで、ドイツでも根強いファンがいることで知られています。
館内に散りばめられたジオラマ内では、オベリックスの愛犬イーデフィックスの姿が何匹か確認できます。
子ども向けのラリーが楽しい!
美術館の入り口で無料でもらえる小冊子には、現地の子ども向けのラリーが含まれています。赤い表紙は子ども向けですが、緑の表紙は大人向けで、ジオラマ再現された絵画の解説が詳細に掲載されています。
実際、ドイツ人の一部も子ども用ページで楽しんでいる姿が見られましたし、筆者自身もラリーをしながら見学したことで、より一層楽しめました。
ドイツ語が解らなくても、翻訳アプリを使えば簡単に意味が分かるので、訪れた際は入り口で忘れないようにゲットしましょう!
【ネタバレあり】筆者オススメ!展示3つ
特別展の中でも、特に見逃せない展示を写真付きで3つご紹介します。プレイモービルで再現された名画のジオラマだからこそ、本物との違いを比較したり、作品に込められた意味がより一層伝わったりしやすいと思いました。以下より詳しくご紹介します!
『Saskia van Uylenburgh im Profil, in reichem Kostüm』(豪華な衣装を着たサスキア・ファン・アイレンバーグの横顔)
1600年代に活躍したオランダの画家レンブラント・ファン・レインが、妻サスキアを描いた名画。光と影の技法が際立っており、サスキアの表情と衣装の細部が見事に描かれた作品です。
特別展では、レンブラントの代表作が、プレイモービルのジオラマでオリジナリティ溢れるながら見事に再現されています。
絵画では分かりづらい、彼女の手に持つ植物も再現!絵画とプレイモービルのサスキアが持つ植物の色を比較したり、実際に彼女の手に握られている植物は何なのか、ぜひ想像してみてください。
『Die Menagerie des Landgrafen Carl(カール方伯の動物園)』
ヨハン・メルヒオール・ルース(Johann Melchior Roos)による巨大な絵画『カール方伯の動物園』は、カール大公の動物園にいた世界の珍しい動物たちを描いた大作です。
ドイツ語の「Die Menagerie」はフランス語に由来しており、珍しい動物や未知の動物コレクションを意味します。
特別展では、プレイモービルのフィギュアで可能な限り絵画にいる動物たちが再現されています。
どの動物が、別のプレイモービルフィギュアに置き換えられているのかを比較してみるのも面白いですよ!
『Gartenfest im Kreis römischer Künstler』(ローマの芸術家たちの輪の中でのガーデンパーティー)
ミケランジェロ・チェルクォッツィ(Michelangelo Cerquozzi)本人が、ローマで送った画家生活をユーモラスに描いたとされる本作品も、プレイモービルで豊かに再現されています。
当時の記述によると、絵画には画家本人が友人たちとトランプを楽しむ様子が描かれています。特に、興奮した画家の脈拍を測る友人がいるというユニークな様子が描かれている点が特徴です。
また右側には、18世紀のヨーロッパで人気だった「Blind Man's Buff(目隠し鬼)」を楽しむ人々やも描かれています。日本では鬼に対して逃げ手が言う「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」というフレーズでもよく知られている遊びです。
ジオラマでも、絵画に描かれたトランプゲームと「Blind Man's Buff」という2つの遊びが再現されています。
訪問時に要チェック!ヴィルヘルムスヘーエ城美術館とプレイモビル点を楽しむために
夏に、ドイツへの旅行を検討されている方もいるでしょう。ここでは、ヴィルヘルムスヘーエ城美術館とプレイモービルのコラボ展示を楽しむためのポイントをご紹介します。
歩きやすい靴で行こう
ヴィルヘルムスヘーエ城美術館は山の中腹にあるため、トラムやバス停から山を登らないと到着しません。さらに館内は地上4階建て(ドイツ式だと3階建て)で、館内もたいへん広いです。
館内にはエレベーターのほか、展示室各所に椅子がありますが、展示をじっくり見るためには多く歩くことになります。
筆者はプレイモービルとのコラボ展示の前に友人と一度、ヴィルヘルムスヘーエ城美術館を訪れていますが、その際には約6時間滞在しました。
長時間の滞在を予定している場合は、特に歩きやすい靴の準備を整えておくことをおすすめします。
荷物は最小限に
ヴィルヘルムスヘーエ城美術館では、荷物をロッカーに預けられます。ロッカーは無料ですが、空いていなかったり故障していることもあるため、持参する荷物は最小限にしましょう。前で抱えられる程度の小さなショルダーバッグやリュックサックがおすすめです。
時間に余裕を見て訪問しよう
細部まで上手く再現されたプレイモービルのジオラマは360度から楽しめるため、その分の見学時間を要します。
前述のように、ヴィルヘルムスヘーエ城美術館の通常展示を見るだけでも、約2~6時間かかります。加えてプレイモービルとのコラボ展示も観るとなると、さらに時間が必要です。スケジュールに余裕を持った計画を立てて、展示を楽しむ時間を確保しましょう。
ヴィルヘルムスヘーエ美術館のチケットで周辺施設も見学OK
ちなみにヴィルヘルムスヘーエ城美術館のチケットは、ヘラクレス記念碑または温室植物園、レーヴェンブルク城への入場も含まれています。
上記の施設を1日以内に見学しなければならないため、お得に見学を楽しみたい方は時間には気を付けて訪問しましょう。
【裏話】展示開始前の美術館の潜入に成功!
筆者は、4月からカッセル大学院で「歴史と公共」という分野を学んでいます。2024年夏学期にゲスト参加させていただいている授業は、なんと美術ディレクターであり今回ご紹介した特別展を企画したエベル先生が担当しています!
ある日、エベル先生の計らいもあり、授業の一環で特別展示に向けて準備中のシェーファー氏に、お会いできました!
彼はちょうど、ヤコブ・ファン・フクテンブルグ(Jacob van Huchtenburgh)の絵画『Die Piazza Colonna in Rom(ローマのコロンナ広場)』のジオラマ再現の準備中でした。
本記事の執筆にあたり、彼から聞いた話もいくつか盛り込んだうえで紹介させていただきました。
エベル先生、シェーファー氏、この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました!
おわりに
この記事では、ヴィルヘルムスヘーエ美術館で開催中の特別展「PLAYMOBIL trifft Gemäldegalerie - Alte Meister neu erzählt」について、裏話も含めてご紹介しました。
プレイモービルと巨匠たちの絵画が見事にコラボレーションした本特別展は、2024年9月15日まで行われます。
さらに5月からは水の芸術(Wasserspiele)も開催されており、ヴィルヘルムスヘーエ城周辺は、まさに観光シーズン真っただ中です!
もしこの記事をきっかけに「ドイツに行ってみたいな」と思ってくださった方は、ぜひカッセルにも訪れてみてください!
ヴィルヘルムスヘーエ城 基本情報
所在地 | Schloßpark Wilhelmshöhe 1, 34131 Kassel ドイツ |
開場時間 | 火曜日から日曜日:午前10時から午後5時まで 休日:午前10時から午後5時まで 毎月第1金曜日と第3金曜日:午前10時から午後7時まで 1月1日:午後12時から午後5時まで |
ミュージアムナイト | 午後2時から午前1時まで |
閉館日 | 12月24日、25日、31日 |
美術館入場料 | ・大人:6ユーロ ・割引:4ユーロ ・18歳まで:無料 ・学生:無料 |
備考 | ※3 for 1 - ヴィルヘルムスヘーエ1日券:ヴィルヘルムスヘーエ宮殿、レーヴェンブルク、ヘラクレス(4月1日~10月31日)/温室植物園(11月1日~3月31日) |
公式ホームページ | https://www.heritage-kassel.de/standorte/schloss-wilhelmshoehe |