横須賀のヴェルニー公園は、横須賀製鉄所で首長を務めたフランスの技師ヴェルニーを記念する公園です。
横須賀本港に面した細長い公園でJR横須賀駅、京急汐入駅からも歩いて5分ほどとアクセスも便利です。
花の名所で、春と秋には「ローズフェスタ」が開かれています。今回は、ローズフェスタ開催中の5月下旬に訪ねてみました。バラはおよそ1200株、130種、カメラを手にした人、家族や友人と散歩する人が思い思いに楽しんでいました。
ホームから軍艦が見えるJR横須賀駅
JR横須賀駅は1889(明治22)年に横須賀線の終着駅として開業し、軍港への輸送に重要な役割を果たしました。現在の駅舎は1940(昭和15)年に建てられたものですが、1914(大正3)年改装時の面影を残しています。よこすか海軍カレーのマスコットかもめの「スカレー」が出迎えてくれます。
駅を出る前に注目したいのは、天井が高いコンコース。ホームから改札、道路まで階段がないのは珍しいこと。気が付きましたか。改札を出て出口に向かって正面には、観光案内のタッチパネルが設置され、改札付近には観光パンフレットが置いてあります。帰りに横須賀駅に戻るなら、横須賀土産のカレーやお菓子も販売されているので、駅構内のコンビニが便利です。
改札を出ると左手がヴェルニー公園です。さあ、出発しましょう。
ヴェルニー公園は「うみかぜの路」の出発点
ヴェルニー公園は、横須賀製鉄所の首長として活躍したフランス人技師フランソワ・レオンス・ヴェルニー(1837~1908年)に因んで名付けられ、フランス庭園様式の公園として2002年にオープンました。
公園の端から端までまっすぐ歩くと10分くらいですが、海や花を見ながら資料館で歴史に触れたり、カフェで休んだりして、ゆっくり歩きましょう、公園内の看板にはQRコードがついていて、スマホで詳しい説明を見ることができます。
ヴェルニー公園は「歴史とショッピングの道」として、JR横須賀駅から観音崎公園までの海沿いの遊歩道「10,000メートルプロムナード(うみかぜの路)」の出発点でもあります。
公園の入口にある「ヴェルニー記念館」は、ヴェルニーの功績と横須賀製鉄所の意義を後世に伝えるための施設です。横須賀製鉄所は1871年に開業した船造施設で、何度か名前を変えて、1903年に横須賀海軍工廠になりました。ヴェルニーは幕末に来日し、明治維新後も造船や近代化に関わり、洋式灯台や水道の建設、学校を建てて多方面で活躍する人材を輩出ました。
館内には130年ほど使われた3トンと0.5トンのスチームハンマーが展示されており、映像や図書資料で横須賀の近代歴史遺産を知ることができます。
記念館の尖った屋根と石の壁は、フランス北西部のブルターニュ地方によく見られる建物の特徴を表現。同地方のブレスト市はヴェルニーが務めていた海軍工廠もあり、横須賀市と姉妹都市になっています。
潮風に吹かれてボードウォークを歩く
ヴェルニー記念館から横須賀本港に沿ってボードウォーク(木道)が伸びています。右側の大砲は、1921年に横須賀で竣工した軍艦「陸奥」の主砲です。長さは約19メートル、重さは102トン、1943年に火薬庫爆発で沈没し、1970年に引き上げられました。
大砲の右には、4つの鐘のカリヨンがあって、1日に数回、童謡などのメロディーが流れます。
ボードウォークにはたくさんのベンチがあって、ゆっくりと景色を楽しむことができます。対岸はかつて横須賀製鉄所があった場所で、現在は米海軍基地が使用中。多くの艦船が停泊しています。
黄色いバラ「ローズ ヨコハマ」は日本生まれ、香りが強く大きな花を咲かせます。横浜バラ会50周年を記念した品種です。
フランスの港町をイメージしたカフェ(※2022年3月14日閉店)
「さくらの広場1」にある、サクラに囲まれたカフェレストラン「コルセール(CORSAIRE)」は、フランス・ブルターニュ地方の港町をイメージしています。
オープンテラスで、サブマリンドックとトマトスープをいただきました。バンズもソーセージも竹墨で中まで真っ黒、バンズにはカレーソースが添えてありました。
正面に、ドックと同じ形をした黒い潜水艦が停まっていました。港の艦船はいつも同じ場所に停泊しているとは限らないので、この日、この場所で潜水艦を見ることができたのはラッキーでした。メニューはほかに、バーガー、海軍カレー、ス-プやドリンクのセットがお得です。
テラス席には赤いドッグポールが数本立っているので、愛犬と一緒に食事が楽しめます。
※編集部追記※
カフェレストラン「コルセール」は2022年3月14日をもって閉店となりました。2022年4月からは、公園管理事務所へと改修されます。
フランス式庭園をそぞろ歩き
ヴェルニー公園内には、広々とした歩道と花壇が並んでいます。噴水のデザインもまた見どころの一つ。バラの枝先をした先端部分から水が吹き出し、噴水の池は花の形をしています。
公園内に植えられたバラは、フランス、アメリカ、中国、日本など各国でつくられた約130品種を中心に約1200株。春と秋に楽しめます。看板やホームページの「バラ図鑑」には種類や特徴が説明されています。
右には、汐入駅前にある20階建てのメルキュールホテル横須賀が見えています。
ピンクのバラ「ザ フェアリー」はイギリス生まれ、小さな花をたくさん咲かせます。
横須賀の近代化に貢献したヴェルニーと小栗
公園のほぼ中央の「開明広場」には、横須賀製鉄所の建設に貢献したヴェルニーと幕府の小栗上野介忠順(1827~1868年)のブロンズ像が並んでいます。
小栗は大政奉還に強く反対したため死罪になりましたが、業績が認められて1922(大正11)年に2人の像が諏訪公園(汐入駅の近くに明治時代に設置された公園)に設置されました。ところが太平洋戦争時に金属不足を補うために供出され、現在の像は1952年に内藤春治によって造られたものです。
ヴェルニーと小栗の像が見つめているのは、対岸の旧横須賀海軍工廠です。現在は米海軍基地ですが、艦船を修理する3基のドライドックは現役です。基地は日米親善イベントなどの折りに一般公開されています。
色とりどりのバラが香る
赤いバラはイギリス生まれの「ファッショニスタ」。新芽が赤いベニカナメモチと重なって華やかです。
芝生には記念撮影用の場所も用意されていました。あたりにはバラの香りが漂っています。
緑色の丸屋根は、洋風「あずまや」で、屋根と柱だけの建物です。公園や庭園で休憩したり、景色を楽しんだり場所です。あずまや自体が景色のポイントにもなっています。
明治の洋館・ティボディエ邸で歴史を体感
海側から眺めてみましょう。写真の中央の建物は、2021年5月29日に開館した「ティボディエ邸」です。旧ティボディエ邸は、横須賀製鉄所内の小高い丘の上に副首長ティボディエの官舎として1869年頃に建築された、本州で最も古い西洋建築のひとつでした。2003年に解体され、今回約20年ぶりに「よこすかルートミュージアム」の中核拠点として復元されました。また、首長のヴェルニーと副首長のティボディエは両夫人が姉妹で、子孫同士の交流が今も続いています。
邸内では、横須賀製鉄所の技術や文化を実物資料で紹介しています。シアターは縦3メートル、横6メートルの大画面で、同製鉄所の歴史を3DCG画像で体感することができます。
よこすかルートミュージアムは、 横須賀に点在する歴史、文化、自然のスポットを「サテライト」と呼んで「ルート」でつなぎ、市内全体をひとつの「ミュージアム」ととらえる横須賀の新しい楽しみ方です。ほかのサテライトにも、是非出かけてみてください。
猫がまどろむ海軍記念碑群
さらに進むと、石碑が並んでいます。左から、海軍の碑、軍艦山城之碑、国威顕彰碑、軍艦長門碑、軍艦沖島の碑。右端の「正岡子規句碑」には、「横須賀や只帆檣(はんしょう)の冬木立」と刻まれており、子規が横須賀を訪れ、港に連なる帆檣(ほばしらのこと)の印象を詠んだものです。
「軍艦沖島の碑」の前には、猫がだらりとした姿で眠っていました。撮影していると「安心しているね」と通りがかりの人に声をかけられました。
石碑が並ぶあたりは「さくらの広場2」、春にはサクラが満開です。ここにも4つの鐘のカリヨンがあって、1日に数回メロディーが流れます。石碑をすぎると、汐入駅前が見えてきます。
万人にオススメできる観光スポット「ヴェルニー公園」に行きましょう!
ヴェルニー公園はJR横須賀駅から歩いて1分、園内を散歩して出口から京急汐入駅にも歩いて5分とアクセスが便利です。三笠公園も歩いて20分くらい、足を伸ばしても良いですね。
汐入駅から「どぶ板通り」を20分くらい歩くと京急横須賀中央駅に着きます。横須賀に初めてお越しの方も、住んでいる方も、気軽に立ち寄ってみてください。
ヴェルニー公園
神奈川県横須賀市汐入町1-1 電話046-824-6291
入園無料 開園:24時間 年中無休 有料駐車場あり
https://www.kanagawaparks.com/verny/
ヴェルニー記念館
入館無料 開館:9:00~17:00
休館:毎週月曜日・年末年始、月曜が祝日・振替休日の場合は開館、翌火曜日は休館https://www.museum.yokosuka.kanagawa.jp/exinfo/verny-map
カフェレストラン「コルセール(CORSAIRE)」
営業:11:00~15:30 ※ラストオーダー15:00
定休:毎週火曜日、火曜日が祝日・振替休日の場合は営業、翌水曜日が休み
※2022年3月14日に閉店。
ティボディエ邸
入館無料 開館:9:00~17:00 年中無休 電話046-827-7003
シアター観覧料200円、高校生以下は無料
https://thibaudier-yokosuka.com/
ここはヨコスカ(横須賀市観光情報)
https://www.cocoyoko.net/