36年ぶりに復活のF1オランダGP!魅力いっぱいのビーチリゾート、ザントフォールトからの現地リポート

今年9月に開催された自動車レース「F1オランダグランプリ」。

オランダ人で唯一のF1優勝者であり、最年少優勝記録保持者でもあるマックス・フェルスタッペンの登場により、オランダではモータースポーツ人気が復活。

数年前から、35年ぶりのF1開催に向けて街ぐるみで準備が進められていmした。コロナ感染拡大により2020年は中止となり、今年の開催も再度の中止や無観客開催等が直前まで議論されましたが、レース半月前の8月中旬に、有観客での正式開催が決定しました。

今回はオランダ人レーサー、マックス・フェルスタッペン選手の地元優勝で大いに盛り上がったF1開催中の様子を現地からレポートします。

北海沿岸のビーチリゾート「ザントフォールト」

オランダ西部北海沿岸は約280㎞の砂浜が続き、白く輝く砂浜は「海沿いの真珠(Parel aan zee)」と呼ばれています。

サーキットのあるザントフォールトはこの北海沿岸、首都アムステルダムから電車で約30分の場所にあるビーチリゾート。海水浴のほか、サーフィンなどのマリンスポーツやカジノなども楽しめる人気の場所です。

広い海岸線が延々と続きます
海岸沿いのカフェ
1881年建造の美しいザントフォールト駅舎

脱クルマ依存を目指すサーキットのある街

自転車大国オランダでは、早くから都市部への車の乗り入れ制限や自転車道の整備など、脱クルマ依存が進められてきました。

今回のF1も例外ではなく、ザントフォールトの街はサーキットへの集客について、公共交通機関・自転車・徒歩を基本に計画されました。おかげで今回のレース期間中の自動車渋滞はほぼゼロだったそうです。

サーキット周辺は関係者用の駐車場のみで、来場者用駐車場はほとんどありません。レース期間中は地元住民に車の通行許可証を配布し、市外からの車の乗り入れを禁止しました。

主催者の発表によると、観客のほぼ半数が徒歩または自転車、33%がバスや電車などの公共交通機関、8%がシャトルバスで来場。車の利用はわずか2%だったそうです。

サーキットに近いスローテルダイク駅には観戦客専用の特設ホームが設けられ、臨時列車が約5分おきに発車していました。自宅から直接自転車でサーキットへ向かう人が多かったようですが、近隣の街に車を停めて、そこから自転車を借りてサーキットへ向かう「駐車場+自転車レンタル」のチケットも販売されました。

スローテルダイク駅の構内、黄色い看板に沿って進んでいきます
サーキットに近づくと、線路に並走して作られた自転車道を走る人たちが増えていきました。

レース開催中、ハーレム市からサーキットへの臨時バスにはフェルスタッペン選手の車両番号33と同じ「路線33」の番号が割り当てられました。ファンならつい乗りたくなってしまう演出です。

バス会社のツイートで貼られた画像をよく見てみると、運転手さんのネクタイもオレンジ色!

レースウイークの街を歩いてみる

街の中は、窓やベランダにチェッカーフラッグやオランダのナショナルカラーであるオレンジの旗が飾られ、町全体がサーキットムード一色になりました。

F1のオランダ人サポーターはオレンジ色の服を身に着け通称「オレンジアーミー」と呼ばれ、近隣のベルギーGPやオーストリアGPのスタンドをオレンジ色に染めることで知られています。

今回は地元ファン待望となる36年ぶりのF1開催というだけでなく、現在グランプリの優勝を争う、レッドブルレーシングに所属する地元オランダ人ドライバー、マックス・フェルスタッペンを地元で応援できる初の機会。

オレンジアーミーの中には家族連れや女性グループの姿も数多く見られました。

オレンジ色を身に着けた人が目につきます
路地裏のオープンカフェ
オレンジウエアを売るお店

サーキットでのコロナ感染対策

今回のオランダグランプリでは、開催を前にさまざまな議論が交わされた結果、10万人収容のサーキットは7万人(定員の約2/3)、固定席のみに削減され、入場時にはコロナパスと呼ばれるチェックアプリ(ワクチン接種・検査証明の履歴が確認できるQRコード)と身分証明書の提示を条件に有観客での実施が決定しました。

EU圏内共通のフォーマットを使用しています

サーキット近くには臨時のコロナ検査場が設けられました。ここで検査を受けると、20分以内にメールで結果を受け取ることができます。

オランダ国内の色々な場所で目にするようになった移動式コロナ検査場

オランダグランプリをTV等でご覧になった方は、今回のレース中、スタンド席の観客が誰もマスクを着用していないことに驚かれたことでしょう。

ですが、もともとオランダはロックダウン中も野外でのマスク着用義務はなく、12歳以下の子供たちはマスク着用もコロナパスの提示義務もありません。マスク着用の必要はありませんが、感染防止のため場内では人との間隔を詰めないこと、できるだけ座席に留まるようアナウンスがされていました。

レッドブルのチームウェアがかわいい少年達

F1に限らず大規模イベントでは、トイレ周辺の混雑が問題になることが多いもの。しかし、サーキット内にはたくさんの仮設トイレが設置され、待ち時間ほぼゼロで利用することができました。ちなみにトイレは全て男女兼用です。最初は少し戸惑いますが、長い列に並ぶよりとても効率的です。

オープンな空間なので換気の心配もありません

レースの合間も楽しい場外アクティビティ

さてコロナチェックや手荷物検査を終えるとイベント広場に到着です。ゲームやフォトコーナーなど、楽しいアクティビティがたくさんありました。なので、早めに着いてもレースがはじまるまで飽きることはありません。

メカニック気分を味わえるタイヤ交換ゲーム

ザントフォールトは、日本の鈴鹿サーキットに似ていると言われているそうです。どちらも海に近く、高低差のある土地を生かしたサーキットレイアウト。ホームストレートから見える観覧車など確かに似ているかもしれません。

上からサーキット全体が見渡せる観覧車

フライドポテトやピザ、サンドイッチなどのお店が並びます。屋台のバリエーションは日本のサーキットの方が豊富です。

ピザとフライドポテトの屋台
オランダのフライドポテトはケチャップではなくマヨネーズ付き
メインスポンサー、ハイネケンのブース

オランダでのマックス・フェルスタッペン選手の人気は絶大。日本のサッカー選手やテニス選手のように、彼に憧れる子供達も多いです。地元の小学生が「ザントフォールトはオーバーテイクが難しいから、マックスが予選でポールポジション(※予選のタイムアタックで首位になること)を取ったら優勝確実だよ」と教えてくれました。

オレンジグッズを購入する人々

まるでフェルスタッペン祭り!陽気なオレンジアーミー

今回のオランダグランプリ、金曜のフリー走行日から日曜の決勝まで、観客席は連日ほぼ満席だったそうです。人気のモータースポーツとはいえ、コロナの影響で海外からの観戦が難しい中でこれだけの観客動員はびっくりです。

観戦防止の行動制限が残る中での開催は不安視される声もありましたが、開催後に感染拡大が見られなかったことで、規制緩和の安心材料になったとの声もあるようです。

予選日の朝からこの人出!

予選ではフェルスタッペンのタイムアタックのたびに観客は総立ちで優勝が決まったかのような大声援。タイムアタック中のマシン撮影を試みるものの、フェルスタッペンの33号車が通過するたび皆が立ち上がって手を振るので撮影した写真はほとんどボツに...。

筆者が唯一撮影できた走行中の33号車

フェルスタッペンがポールポジションを獲得できれば優勝に大変有利になるとあって、予選からオレンジアーミーたちの熱気は決勝レースの様相。

予選終了直後のスタンド席の様子

ちなみに、決勝レースの結果はフェルスタッペンのポールトゥウイン(※予選1番グリッドからそのまま勝利へと至ること)で幕を閉じました。母国ファンの前でオランダ人としてオランダGPで優勝するのはプレッシャーも相当なものだったと思われますが、彼は地元ファンの声援に見事に応えてくれました。

帰路はサーキット出口を左に折れて、海岸沿いを歩いてみました。9月の日没は20時半位なので、レースが終了してもまだまだ明るく、輝く海岸線はまさに「海沿いの真珠(Parel aan zee)」でした。

美しいビーチを眺めながら駅へ向かいます
自転車で帰るオレンジアーミー達

まとめ

ザントフォールトからの現地レポートは、いかがだったでしょうか?

今年は無事オランダで開催できたものの、観客の収容人数は通常の2/3に抑えられ、オランダ国外からの来訪は難しい状況が続いています。ドライバーをはじめ、チーム関係者はシーズン中ほとんど自宅に戻らず、コロナ感染防止に細心の注意を払いながら世界各地を転戦しています。

そんな中、10月に鈴鹿サーキットで開催予定だった日本GPが中止となったのはレースファンとして本当に残念でなりません。来年こそは全ての開催地でF1が無事開催されることを願っています。

オランダグランプリ2021オフィシャルWEBサイト

公式HP:https://dutchgp.com/ (オランダ語/英語)

ザントフォールトサーキット

所在地:Burgemeester van Alphenstraat 108, 2041 KP Zandvoort
公式HP:https://www.circuitzandvoort.nl/

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