シネマ・演劇

映画「素晴らしき、きのこの世界」はきのこ愛に満ちたきのこ映画!きのこの生き様に魅せられた人間たちが送るメッセージとは?!

2019年にアメリカで製作され、2021年9月24日より日本で公開されている映画「素晴らしき、きのこの世界」。本国アメリカでは、20週にわたる超ロングラン上映を達成するなど、カルト的な人気を博しているようです。

オンライン試写会を見たあと、これはぜひ大画面で観たいな、となり、封切りの9月24日に映画館で見てきました。

見どころその1 タイムラプス映像の美!

冒頭のきのこたちの成長の様子のタイムラプス映像は、映画ならではの驚きがあり、ナレーションと相まって、きのこにますます引き込まれます。きのこの美しさ、驚き、躍動感、神秘性を感じます。きのこの時間が映像の力で人間の時間になってくれたように思えました。

特にスクリーンで大きく映されたきのこは圧巻です。

本編には、成長するきのこの映像が、ローマでプロジェクションマッピングされるシーンもあります。

これだけ美しく撮影されたきのこのタイムラプス映像には、高い技術と大変な労力がかかるものだと思います。それを成し遂げたからこそ、この映画から深い感動を受けることが出来たと言えます。

きのこ以外にも、変形菌やカビ、植物も出てきます。

見どころその2 菌類学者ポール・スタメッツ

この映画の人間側の主人公(真の主人公はきのこですね)と言えるポール・スタメッツ氏ですが、実はこの名前、私は25年くらい前から知っていました。主に彼の著書「シロシビン・マッシュルーム・オブ・ザ・ワールド」を通じてです。

日本語訳がなかったので原書で買いました。シロシビンという幻覚成分を含むきのこについての図鑑形式の本で、写真をふんだんに使って幻覚性きのこについて述べられています。図鑑部分以外は残念ながら私の英語力ではあまり分からなかったのですが、映画にも出てくる「きのこ石」コレクションの写真があるなど、幻覚性きのこの文化的な面にも力が入れられていることが分かりました。

(なお、幻覚性きのこそのものは、日本では2002年から免許を持たない人の所持・栽培・譲渡などが禁止されています。「懲役7年以下」という重い罪に問われるので、免許のない人は絶対に取り扱わないでください)

それからスタメッツ氏は関心を広げ、健康食品的なきのこの栽培にも取り組むようになってきたようなのです。きのこ愛好家やきのこ研究者、きのこ栽培に携わる人などきのこに関わる人たちの姿も魅力的で興味深いです。

かといって、この映画が完全無欠のきのこ映画というわけではありません。少しツッコミどころをあげておきます。

ツッコミどころその1 カワラタケ

がんにかかったスタメッツ氏の母親が医師の勧めでカワラタケの錠剤を飲む場面が出てきます。

確かに、カワラタケにはクレスチンという抗がん剤になる成分が含まれています。20年以上前、がんにかかった友人に頼まれたからと、カワラタケを山でたくさん集めている人に出会ったこともあります。

しかし、後にカワラタケには毒性もあることが分かり、さらにはクレスチンの効果自体が疑問視されるようになり、少なくとも現在、日本ではあまり使われなくなったと聞きます。

スタメッツ氏の母親は医師の勧めでもあり、カワラタケと特に相性が良かったのかもしれません。けれど、素人療法でカワラタケそのものを採ってきて摂食するのはあまりお勧めできません。

映画チケットとちょっと嬉しい前売り特典(シール)

ツッコミどころその2 きのこに熱狂

本当にそうなの?という疑問がわくシーンもちらほらありました。

例えば、幻覚性きのこの摂取で人間が進化したという話。話としては面白いのですが、まだ推測の域を出ていないと思われます。

また、きのこトークライブが新興宗教の集まりのように見えた、という感想もあります。日本のきのこトークライブに比べて、とにかく演者も観客も熱いのです。涙を流している人もいたようでした。もっとも、アメリカの教会を取り上げたテレビで、牧師さんが信者さんを煽りながら熱く語るシーンを見たことがありますので、もともとそういう文化なのかもしれません。

パンフレット

それでもオススメしたい、この映画

そんなツッコミどころがあるにしても、この映画が上質のきのこ映画であることは間違いありません。

それは、この映画が未来につながっているからではないでしょうか。

きのこが世界を救うかは私にはまだ分かりません。ただ、この映画を通じて、きのこと共にあることで、きのこの、人間の、そして地球の将来について、希望を感じることが出来るでしょう。

さらには、きのこから何かをしてもらうばかりではなく、これからはきのこのために何が出来るか、も考えたいと思いました。

きのこのありようから、人間の生き方を考えてみるのもいいのではないでしょうか。

最寄りの上映館は公式サイトからお調べください。

映画「素晴らしき、きのこの世界」基本情報

監督:ルイ・シュワルツバーグ
脚本:マーク・モンロー
公開日:2021年9月24日(以降、全国順次公開)
公式サイト:https://kinoko-movie.com
公式Twitter:https://twitter.com/kinokomovie

堀 博美

堀 博美

投稿者の記事一覧

神戸出身、京都在住のフリーライター。専門はきのこ。きのこライターとしての主な仕事に、書籍「きのこる キノコLOVE 111」(山と渓谷社)「ときめくきのこ図鑑」(山と渓谷社)「ベニテングタケの話」(山と渓谷社)「珍菌」(光文社)「毒きのこに生まれてきたあたしのこと。」(天夢人)などがある。WEBや雑誌、新聞などにも執筆経験あり。

一方で、長年現代アートに携わり、現在も制作活動を続けている。
きのことアートはライフワーク。その他、珍しいお菓子、京都街歩き、同人誌イベント、音楽鑑賞(米良美一さん推し)などに興味がある。

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