くらし

中毒性高し!スペインの歴史や文化も楽しめるフラメンコの魅力を、舞踊家へのインタビューを交えてご紹介!

かきならすギターの音、激しい靴音、喉の奥から振り絞るような歌声。

日本でフラメンコと言えば「スペインの踊り」と思われがちです。暗い狭い空間で、ダークな衣装を着た女性が苦悩の表情で情感たっぷりに踊る……このようなイメージを持っている方もいるでしょう。一方で、フリルのついた派手な衣装を着て男女がお祭りで華やかに踊る、そんなイメージの方もいるのではないでしょうか。

ストリートでのフラメンコ

今回は「フラメンコはなんとなく知っているけれど、詳しくは知らない」という方に、フラメンコの魅力をお伝えしたいと思います。

佐賀県佐賀市でフラメンコ教室「ラ・アレグリア」を主宰している樺澤幸(かばさわゆき)先生のインタビューを交えて

・フラメンコのイメージや歴史
・フラメンコをおすすめする3つの理由
・フラメンコの中毒性について

などを紹介します。

フラメンコってどんな印象?実際にフラメンコの印象を聞いてみると……

フラメンコの華やかな衣装

実際に数名の40代、50代の女性にフラメンコのイメージを聞いてみました。

・赤や黒
・妖艶
・情熱的
・鮮やか
・スペイン版演歌
・薄暗くて狭いところで踊る
・スタイルがいい人がしてそう
・リズムが速くて難しそう

などの様々なイメージがあるようです。

また、「実際に、フラメンコを習ってみたいですか?」という質問もしてみました。

「習ってみたい」と回答を頂いた方に理由を聞くと「カッコイイから」。一方、「習ってみたくない」という方の主な理由は「難しそう、覚えられなさそう」でした。

イメージでのフラメンコと、実際のフラメンコはどう違うのでしょうか。

さっそく、樺澤幸先生にフラメンコのことを聞いていきます。

フラメンコとは?そしてフラメンコの歴史は?

フラメンコ教室「ラ・アレグリア」主宰の樺澤幸先生

まず、「フラメンコって何?」というところから樺澤先生に聞いていきたいと思います。フラメンコは2010年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。

フラメンコとは何でしょうか?

樺澤幸先生(以下、「樺澤」と表記):フラメンコは、スペイン南部のアンダルシア地方から発生した民俗芸能です。歌・踊り・ギターがあり、それらが三位一体となっています。もう少し詳しく言うと、インドを起源とするロマ族がアンダルシアに根付いて、ロマ族の芸能とスペインの民謡がミックスされて花開いたもの、でしょうか。

この「ロマ族」は、長い間迫害されてきた歴史があります。その、社会から虐げられてきた行き場のないエネルギーの渦が歌として表現され、あの魂ごと揺り動かれるような、深い声で歌われる歌となったのです。

フリルたくさんの衣装ときれいな靴

日本ではフラメンコというと「踊り」というイメージが強いですが、スペインでフラメンコというと、まず「歌」なんだそうです。

今でこそスペインの「芸術」として舞台で歌われたり、踊られたりしているフラメンコ。しかし、もともとの根幹として迫害され続けた苦しい歴史、やるせない思い、やり場のない気持ちが込められたものだったのです。

フラメンコはこのような歴史的背景があるので、「フラメンコを学ぶときには、歴史や文化にも興味を持っていただけたらと思います」ということでした。

フラメンコをオススメする理由その1:なんてったって衣装がかわいい!!変身願望のある方はその願望が実現します!

こんな衣装を着たい女性も多いのでは?

フラメンコといえば、あのフリルのたくさんついた派手な衣装を思い出す方も多いでしょう。スペイン・セビリアの春祭りで着飾った女性たちが馬車に乗ってお祭りに行く様子がニュースなどに映し出されることもあります。

女子は何歳になってもきれいな衣装を着たい!ということで最初にフラメンコの衣装についてお尋ねしました。

――フラメンコの衣装はどういうものがあるのでしょうか?

樺澤:「フラメンコの衣装で一番特徴的なのは、くるぶしまである長いスカートでしょうか。フリルがついている豪華なものもありますし、フリルがついていないシンプルなものもありますよ。フラメンコにはさまざまな曲種があるのですが、踊る曲種により衣装を選びます。例えば明るく楽しい曲を踊るときは華やかな衣装、暗い曲調の踊りでしたら落ち着いたシンプルな衣装を着ます。」

さまざまな衣装があります(写真提供ラ・アレグリア)

――男装とかもできたりしますか?

樺澤:「ファルーカという曲種があり、この曲は闘牛をイメージした曲です。もともと男性舞踊手によって踊られていたのですが、今は女性が男装して踊ったりもしています。女性が女性の格好のままで踊ることもあります。

20年くらい前に、ある女性舞踊手がファルーカを男装して踊ったのですが、当時はそのことに対して賛否両論ありました。しかし今日では多くの女性舞踊手がこの曲を男装して踊っています。これとは逆に男性舞踊手が女性の小物を身につけて踊ることもありますね。

フラメンコは文化や言葉と同じく、どんどん変化していっています。この何十年かはこうかもしれないけれど、その先は違うかもしれないというところもあります。それによって新しい衣装が出てくる可能性もありますね。

フラメンコで使う帽子と扇子

樺澤:「衣装もさまざまですが、フラメンコは踊りに使う道具もたくさんあります。まずは、なんと言っても欠かせないのが靴。靴のつま先と踵に打たれた釘で音を出し、リズムを奏でます。大きなショールや帽子、カスタネット。その他にも杖や扇子、床に引きずる長いスカートなども使われます。さまざまな道具を使って踊るのも、フラメンコの楽しさの一つです。

フラメンコ専用の靴
靴の裏には釘が打たれています

今回の取材で、衣装や道具を見せていただきましたが、どれもかわいい!「こんなの着てみたい!使ってみたい!」と憧れてしまいます。かわいい衣装を着たいがために、フラメンコを習ってみるというのもありかもしれません。

フラメンコをオススメする理由その2:自分を表現し放題!ストレス解消にも持ってこい!

踊りに使う扇子

――踊りについてですが、フラメンコは情熱的で妖艶なイメージがあります。40代、50代の方にフラメンコのイメージを聞いたときにも「スタイルのいい人が踊ってそう」という意見もありましたが、実際はどうなのでしょうか?

樺澤:「(笑)そういうイメージは確かにありますよね。でも実際は、そんなことありませんよ~。私の教室も園児から70代まで、年齢も体型もさまざまな方がレッスンに来られています。」

そうなんですね。なんだか少しホッとしました。どんな体型でも、何歳でもフラメンコはできるのですね。

踊りに使う杖

――しかし、もし年齢を重ねてからフラメンコを習おうとしたら腰とか膝に負担がかかりませんか?

樺澤:「正しく踊れば、腰や膝などを痛めることはありません。足でさまざまなリズムを打つ技法があるのですが、足に力が入っていると、やはり膝や足首などに負担がかかります。無理に力を入れて、足を打っているわけではないのです。だから、レッスンでは力を抜いてくださいと指導しています。

フラメンコのいいところは、年齢に合った踊り方があるということです。「コンパス」というフラメンコ独特のリズムは必要ですが、それ以外は、これを絶対しなきゃいけないというものはありません。どの年代でもその年代の踊り方で楽しめるのです。

フラメンコは年齢を重ねれば重ねるほど、その方の人生がにじみ出るもと言われています。私は40代ですが、フラメンコ界では50代、60代はもちろん、70代、80代の方も現役で活躍されていて、よい刺激をいただいています。」

インタビューに答えてくれる樺澤先生

年齢に合わせて楽しめるのなら、フラメンコを習っておけば一生楽しめるということですね。しかも、フラメンコは年齢を重ねるほど、その方の人生がにじみ出るそうなので、人生のすべての経験が踊りに活かせます。

――フラメンコは、同じ曲でも個人によって表現が違いますよね。たとえ同じ振り付けであっても踊り手によって雰囲気が変わりますが、どうしてですか?

樺澤:「人によって踊りの印象が変わるのは、それぞれの個性を活かしているからでしょう。みんなが全く同じ動きや表現をするというのは目指していません。感じたものを自由に表現できる許容性がフラメンコにはあります。フラメンコの「基本」というのはありますが、そこから先の表現は自由です。」

フラメンコを見ていると、きれいで洗練された踊りというよりは、生身な感じの、人の苦悩や悲しみ、喜び、そして強さや逞しさを感じます。その人が何歳であろうと、どんな体型であろうと、その人らしく感情を表現できるのがフラメンコなんですね。

何かで自己表現したいと思っている方に、フラメンコはぴったりです。

フラメンコをオススメする理由その3:異文化を学びたい、新しいことを知りたいという知的好奇心を満足させられる!

踊りに使う大きなショール。樺澤先生に羽織っていただきました

――フラメンコのリズムのことについてお尋ねしたいのですが、これはどういうリズムなのでしょうか?

樺澤:「フラメンコのリズムをコンパスと言います。その基本的なリズムは曲の形式ごとに決められているのです。このコンパスがフラメンコの柱であり、それを歌・ギター・踊りなど全員が共有して1つの音楽を作り上げていきます。」

――そのコンパスを身につけるのは難しそうですが……。

樺澤:「ほとんどの日本人が持っていないリズム感覚なので、難しいと考えるのではなく、新しいことを身につけようと考えた方がいいと思います。新しいことを知るのが好きな人は、ワクワクすると思いますよ。フラメンコの歴史やスペインの文化、そしてコンパスという新しいリズムの取り方など、異文化を理解する気持ちがあるといいですね。私も20年以上フラメンコをしていますが、未だにワクワクが止まりません。最初すぐにはできなくても、それができるようになる過程も楽しいです。」

新しいことや、異文化を学ぶことが好きな人にピッタリですね。

写真左は樺澤充郎(かばさわみつお)先生。ラ・アレグリアでギターを教えられています。お二人は公私ともにパートナーです。実際に「コンパス」を聞かせてもらいました。

ところでフラメンコというと、ストリートで踊られている動画などもあります。

――宴の席などで自発的に音楽が始まり、ギター・歌・踊りが自然にセッションになるフラメンコもありますよね。しかし、打ち合わせなしでどうやって合わせられるのでしょうか?

樺澤:「今ではフラメンコが人に見せるために舞台で演じられていますが、本来フラメンコは宴から生まれました。打ち合わせなしで合わせられるのは、コンパスを柱としてフラメンコで会話をしているからです。」

――「フラメンコで会話」とは何でしょうか?

樺澤:「フラメンコには文法のようなものがあります。例えば踊りの中でも歌を呼んだり、踊りを終わらせたりする合図があります。その合図を歌やギターなどのメンバーに送っているのです。このような合図は歌やギターからも出されており、互いにやり取りすることでフラメンコが成り立ちます。それにより、打ち合わせなしでもセッションできるのです」

難しそうですが、面白そう。フラメンコで会話ができて、打ち合わせもなしに音楽に乗って、ギター・歌・踊りの一体感を味わえたら最高でしょうね。

「ギター・歌・踊り」でフラメンコ(写真提供ラ・アレグリア)

「フラメンコは独学で学べますか?」という質問を樺澤先生にしたところ、「現在では多くの方が動画を発信し、特にコロナが流行ってからはたくさんの人がオンラインでクラスをしています。ですので勘のいい人は、もしかしてそれで一人で学べるかもしれません。ただ、先ほどお話ししたように、フラメンコというのは会話です。1人で学んでも、ギターや歌などと一緒にやってみて、セッションの楽しさを感じていただきたいです」とのことでした。

なるほど。ギター・歌・踊りの3つを合わせたものがフラメンコなんですね。

フラメンコの中毒性にご用心

樺澤充郎先生と幸先生、舞台裏での一コマ(写真提供ラ・アレグリア)

ラ・アレグリアの生徒さんたちにフラメンコのことを聞いたときに、フラメンコには「中毒性がある」という言葉がとても印象的でした。そこで、そのことについて、樺澤先生にお尋ねしました。

―― 日本フラメンコ協会のHPで、日本には5万人ものフラメンコ愛好家人口がいると書かれていました。フラメンコがそれだけ日本に受け入れられている理由は何でしょうか?

樺澤:「日本人は世間体や同調圧力などを気にして、ネガティブな感情をなかなか出しませんよね。でもフラメンコはすべての感情を思い切り堂々と表現できます。フラメンコには、人間のすべての感情を包み込んでくれるような、大きな愛を感じます。それと、日本人が勤勉で研究熱心なので、わからないと思ったらのめり込んで探求するからという理由もあるかもしれません。あくまでも私の個人な感想ですが」

――生徒さんへのインタビューでフラメンコの魅力は「中毒性」とありました。どういうところが中毒になるのでしょうか?

樺澤:「私は、コンパスが楽しくて飽きませんね。一定のルールの中で無限のリズムパターンがあり、それがとても楽しいです。あとは、生徒さんから、曲種がたくさんあって飽きないと言われたこともあります。踊ったことのない曲がまだたくさんあり、踊ってみたい気持ちになって、終われない、と。(笑)それと、フラメンコは生モノなんです。だから同じメンバーで、同じ曲をセッションしても毎回違います。その点も、フラメンコの中毒性の理由だと思います」

フラメンコで使う帽子、扇子、カスタネット

――フラメンコの魅力は何でしょうか?

樺澤:「フラメンコの魅力は、よちよち歩きの小さい子から、よろよろ歩きの年配の方まで同じ輪で、同じ空間を楽しめるところですね。」

こんなにたくさんの人をひきつけてやまないフラメンコ。夢中になれるものを探している方にフラメンコはピッタリです。

さあ!フラメンコを始めよう!

樺澤先生はフラメンコに対して未だにワクワクが止まらないそうです

今回は、フラメンコ教室「ラ・アレグリア」の樺澤先生のインタビューを通じて、フラメンコの魅力をお伝えしました。お話しを聞けば聞くほどフラメンコが魅力的で、してみたい気持ちがむくむくと沸き上がります。

最後に、「フラメンコを始めようかな、どうしようかなという方に一言」とお願いすると

「年齢、性別、体型など関係なく、全ての方にフラメンコの門は開かれています!」

と、いうことでした。

「ラ・アレグリア」では踊りだけでなく、ギターや歌、パルマ(手拍子)、カホン(打楽器)など、フラメンコを総合的に習えます。フラメンコというと「踊り」というイメージが強かったのですが、今回お話を聞いて、フラメンコは一人ひとりに合わせて様々な楽しみ方ができるのだなと感じました。本当にすべての方にフラメンコの門は開かれているのですね。

きれいな衣装を着られて、自分を思い切り表現でき、知的好奇心も満たされる、三拍子そろったフラメンコ。あなたもお近くのフラメンコ教室の門をたたいてみてはいかがでしょうか?

ラ・アレグリアの樺澤先生夫妻

関連情報

La Alegria(ラ・アレグリア)

住所 〒840-0201 佐賀県佐賀市大和町大字尼寺3394-6
TEL : 0952-62-7158
公式HP:https://la-alegria.net/
公式Twitter:https://twitter.com/la_alegria_twt
公式Facebook:https://www.facebook.com/la.alegria.tirititran/

副島加代子

副島加代子

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九州在住のフリーライター、メンタル心理カウンセラー、ボイジャータロット国際認定Teacherです。視点を変えれば人生が変わります。同じ出来事でも見る角度によって受け取り方が違ってきます。こういう角度から見ると面白いよねという視点を伝えたいです。さまざまな視点をくれる本や映画などが大好き。趣味は海外旅行・読書・映画鑑賞・トレッキング・日本酒・フラメンコ・着物です。

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