楽活をご覧の皆さん、こんにちは!
筆者は楽活内でドイツの文化やお祭りなどを取り上げていますが、生活だけでなく、取材時に必要なお願いごとや資料の読解はすべてドイツ語で行っています。
もともと、ドイツ語との相性がよく、ドイツ語学科を卒業した経緯もあるのですが、ドイツ語のレベルとしてはまだまだネイティブスピーカーの足元にも及びません。
ですが、ドイツでの生活を選んだ以上、ドイツ語のブラッシュアップが必要であると感じ、ドイツ労働局の支援を受けてドイツ語学校に通うことになりました。
2022年3月から10月までの半年間、そして2023年も4月から通う予定です。
そこで今回は、日本ではなかなか知ることができれないドイツ語学校について、体験談ベースで楽活の読者の皆さんにシェアします。
なぜドイツではドイツ語クラスに通わなければいけないのか?
ドイツ人の多くは英語話者でもあるため、「なぜわざわざドイツ語を学ばなけれないけないのか」と疑問に思う方も一定数いるでしょう。
ドイツに限らず、海外で生活するにあたっては、ある程度現地語の習得も必要です。ドイツ語学習歴15年以上のドイツ移住者と一緒に、ドイツ語クラスに通わなければいけない理由を考えてみましょう。
長期滞在できるビザを取得するため
多くの方は、長期滞在ビザを取得するためにドイツ語学校に通います。
ドイツでは英語のみでも取得できるワーキングホリデービザもあるため、30歳に達していない方で要件さえ満たせば、わざわざドイツ語学校に通う必要はないでしょう。
就労・検収・研究滞在ビザも、受け入れ先がドイツ語を求めていなければ必須ではありません。
しかし、以下のビザを取得する場合は、一定のドイツ語力を示す証明書が求められてしまいます。
- 配偶者ビザ
- 学生ビザ(入学許可通知内で証明がない場合)
配偶者ビザの場合は、語学力A1レベルそのものがビザ取得の要件になっています。
ちなみに、ドイツ語A1レベル合格にあたって、求められる能力がどんなものか見てみましょう。
- 相手がゆっくり明確に発音すれば、簡単な言葉でコミュニケーションできる
- 日常的*によく使われる表現や簡単な文を理解、活用できる
- 自分や他の人を紹介したり他の人に個人的なことを質問したりできる**
(*自分の家族についてや買い物や仕事、身近なことについての情報のこと)
(**どこに住んでいるのか、どんな人を知っているのか、どんなものを持っているかなど)
参考:Goethe-Zertifikat A1: Start Deutsch 1 - Goethe-Institut 日本
ドイツで生きていくうえで最低限のことができる語学力が、配偶者ビザの要件であることがわかりますね。
なお、学生ビザについては「学校の入学許可通知の中で証明されていない場合は、講義で使用される言語の語学能力を証明」しなければなりません。
フリーランスビザが欲しい場合は?
ドイツの大都市圏に移住しようとすると、取得できることがあるフリーランスビザ。
在ドイツ大使館での公式な情報はありませんが、現地ドイツ(ベルリンやフランクフルトなどの大都市に限る可能性大)の外国人局では条件を満たすと取得できる場合があります。
フリーランスビザの要件を確認すると、ドイツ語のレベルを要求する項目は現在ありません。
ドイツ人が全員英語が堪能というわけではないため、ドイツ語ができるとフリーランスビザ取得もしやすくなるかもしれません。
しかし、多くの日本人フリーランスがドイツで英語メインで活躍していることや、フリーランスビザ取得支援サービスを提供する会社に・フリーランスの方もいるようなので、ドイツ語が必須ではないことがわかります。
現地で仕事を探すため
現地で会社員や起業家などで活躍したい場合は、ドイツ語学校に通うことで仕事のチャンスや幅が広がります。
筆者は、ドイツに移住した2020年9月時点では、ある程度の語学レベル(B1レベル)がある状態でした。
B1レベルで証明できるドイツ語力は以下の通りです。
- 明瞭な標準ドイツ語が使える
- 仕事や学校、余暇などの身近な事柄が扱われているときに、主となる情報が理解できる
- ドイツ語圏を旅行する際に出会うほぼすべての状況に対応できる
- 身近なテーマや興味のある領域について簡単な表現でまとまった内容を伝えられる
- 自分の経験や出来事を説明したり、夢や希望、目標について詳細に言えたりできる
- 計画や見解について、簡単な論拠や説明を加えられる
参考:Goethe-Zertifikat B1 - Goethe-Institut 日本
ただ、日本の会社員と同じような仕事をする場合は、B1レベルだけでは足りず、B2以上が必須のようでした。
B2レベルでは、以下のドイツ語力を証明できることになります。
- 具体的、抽象的なテーマに関する複雑な文の主な内容を理解できる
- 自分の専門領域における専門的な議論についても理解できる
- 自然かつ滑らかに意思を伝えられ、ドイツ語を母語とする人ととくに苦労することなく普通に会話できる
- 幅広いテーマについて明確で詳細に意見できる
- 時事的な問題への見解を表明し、様々な可能性の長所や短所を挙げられる
参考:Goethe-Zertifikat B2 - Goethe-Institut 日本
B2レベルがあれば、社内外での会議や交渉、スモールトーク間で問題なくそつなくこなせることがわかりますね。
フリーでドイツ人と渡り合う場合も変わらないといえます。
単価交渉や仕事の受注など、日本のフリーランスとして行っている内容をすべてドイツ語で行わなければ、英語が苦手なドイツ人を顧客対象にできず、機会損失です。
当時の私は、ドイツで会社員(パート)として働くのか、ドイツでもフリーランスとして働くのかをまだ決めかねていたこともあり、可能性を広げる目的も込めてドイツ語学校に通うことを決めました。
家族や友人、周囲とのコミュニケーション向上のため
ドイツを旅行したことがある方の中にも、「あれ、なんだか英語が通じていない……?」という経験をしたことがある方もいるかもしれません。
意外かもしれませんが、ドイツ人は全員が全員、英語が堪能ではないんです。
パートナーは英語が堪能ですが、家族の中には英語がニガテな人もいます。
英語がニガテな筆者は、家族だけでなく友人やお店、役所、病院の人とはドイツ語でしか会話していません。
自分がドイツで生きていくためにも、語学のブラッシュアップは欠かせないのです。
筆者が実際に通った職業のドイツ語語学学校
では、実際に筆者が通ったドイツ語の語学学校についてご紹介します。
語学学校は多々ある中、ドイツ労働局の支援が受けられ、B2クラスを開講していた「Kulturzentrum Schlachthof」内の学校に通うことになりました。
「Kulturzentrum Schlachthof」には仕事関連の語学コースがあり、筆者のような移民がドイツの就職市場に参入するのをサポートしてくれます。
特に筆者が通った職業関連の語学コースでは、ただドイツ語を学ぶだけではなく、仕事だからこそ使う言葉遣いやスモールトークを学ぶだけではありません。
ドイツ語学習を通して行われる仕事の探し方や面接の方法・自分で事業を始めたい方がどうすればできるかの支援情報など、実際の仕事に役立つ内容を学べます。
カルチャーギャップに喜怒哀楽!? 現地ドイツ語学校で印象的だったこと
「Kulturzentrum Schlachthof」では、カルチャーギャップにすごく驚いたものです。
実際の授業の進め方はもちろん、さまざまな文化や価値観を持ったクラスメイトに囲まれることで、普段ふだんでは味わえない喜怒哀楽が絶えないギャップに毎日忙しかったことを思い出します。
特に筆者が印象に残った5つの出来事をお伝えします。
1.ドイツ語学校なのにドイツ人でない先生もいる
驚いたのは、ドイツ語語学学校にもかかわらず、ドイツ人のほか、中東やアフリカにルーツを持つ先生が活躍していたことです。
私が実際に教えてもらった先生は3人いるのですが、以下のようなルーツを持ち合わせていました。
- ドイツ人の先生
- エチオピアにルーツを持つ先生(ドイツ生まれ)
- チュニジア出身の先生
ドイツ人ではないとはいえ、しっかりドイツ語学を大学で修め、ハイレベルなドイツ語を駆使しながらも、母国語も扱う先生として活躍している姿を見て、「自分も頑張ろう」と何度も励まされました。
2.クラスメイトにアジア人ゼロ(笑)
たまたまだったかもしれませんが、筆者が所属したクラスにはアジア人が1人もいませんでした!
これも良かったのか悪かったのか、クラスメイトの出身国について学べたり、彼らの価値観も学べて刺激的でした。
ちなみに、どのような内訳だったかというと、以下の通りです。
- イラクから来た人3名
- ブルガリアから来た人2名
- エリトリアから来た人1名
- モロッコから来た人1名
- ナイジェリアから来た人1名
中東からだけでなく、アフリカ大陸からも移民が増えていることがニュースやメディアなどで話題になりますが、まさにその現実を見せつけられるような内情でした。
彼らの中には、より良い生活を求めてドイツへ難民として移住した人もいれば、パートナーがドイツ人だったことからドイツ語を学んでいる人など、さまざま。
共通していたのは、「母国で働いていた仕事と同じ仕事をしたい」「今の仕事よりも、B2 レベルを取得することでいい仕事に就く可能性を増やしたい」でした。
3.夏休みがある
筆者が受講したクラスは3月~10月までの約6か月に及ぶクラス。ですが、想定していなかった夏休みがありました。
まるでホンモノの学校ですよね!
先生や事務局の担当者によると、家族を持っている人が多くいることから、語学学校のクラスでも夏休みを採用しているのだとか。
ただし、夏休みを取った分クラスが2週間後に延期になったので、夏休みの代償もありました……。
4.脱落者が半数
先述の通り、クラスメイトは国際色豊かでさまざまな価値観やバックグラウンドを持っていました。
熱心に勉強する人もいれば、気に入らないからという考え難い理由や家庭の都合や新しい仕事が見つかったからなどという正当(?)な理由でクラスを去る人も。
最初は10名近くいたクラスが、終盤では5名に減ってしまいました。
こんな気軽に脱落者がいる背景には、一般的職業関連の語学学校に通っ来ている人たちは、授業料をドイツ政府が持ってくれています。
そのため、クラスを辞めることにも抵抗がないのでしょう。
筆者としては、最後まで残っている人たちとの絆が出来たのは嬉しかったものの、ちょっと寂しい気持ちもありました。
5.試験合格者が1人
B2クラスを受けるということは、試験を受けなければいけないということ。
B2職業語学試験の合格者は、なんと筆者だけだったのです。
筆者の場合、試験を受けて合格しなければ、自己負担した語学学校の費用が戻ってきません。
6か月間日本でのフリーランスの仕事をセーブしていたこともあり、受かりたい気持ちも強くあり、功を奏したといえます。
しかも筆者が合格したということは、なぜか学校経由ではなくクラスメイトがWhatsAppというチャットアプリのグループメッセージ経由という、嬉しいような嬉しくないような方法で知らされたのでした……。
ドイツ語学学校は日本と現地どっちがいい?
筆者はドイツでドイツ語語学学校に通いました。
もし、この記事をきっかけにドイツ語学校に興味を持った方でドイツ語のあいさつ程度がわかるよ、という場合は日本である程度基礎を学んでからドイツで学ぶことをおすすめします。
ドイツ語学校というだけあり、授業中はよほどのことがない限り、ドイツ語(あるいは英語)で進みます。
規則性はあるもののドイツ語の文法は日本人にとっても複雑です。
日本語である程度規則や文法を理解しておかないと、苦労することが多々あるでしょう。
筆者もドイツ語ゼロ時代の時は、大学で日本語での文法講義を受けていましたし、ネイティブの教授の授業についても、日本人教授からの補足授業の時間を設けていただいていました。
日本国内のドイツ語の語学学校は「Goethe Institut」や「欧日ドイツ語ゼミナール」「ドイツ語学院ハイデルベルク」などをはじめ、個人がやっている学校まで幅広くあります。
自分に合った方法でドイツ語に触れることから始めましょう。
ドイツ語学校をオススメしたい人
ドイツ語語学学校は以下の人たちにオススメしたいです。
- ドイツ人との結婚を控えている人
- ドイツのフリーランスビザを取得してみたい人
- 留学やワーホリを控えている人
- 海外就職先にドイツを検討している人
- 現地の人とより仲良くなりたい人
ドイツで学びたい方は、学校によって夏・冬休み限定で1か月学べるタイプのコースもありますので、参考にしてみてください。
まとめ
今回は、筆者の実体験をもとに、ドイツでのドイツ語学校についてみなさまにご紹介しました。
日本においてドイツ語はマイナー言語ではありますが、ドイツ語を母語として話す人の数は約9,000万人。
ロシア語を除くと、ヨーロッパの諸言語の中では第1位です。
また、ドイツに住むことになると、ドイツ語はどうしても外してはいけない要素でもあります。
筆者はフリーランスとして日本での仕事をしながら、ドイツでの仕事の可能性を見出すためにドイツ語学校に通いました。
結果的に試験にも合格しただけでなく、現在のようなWebでの仕事をドイツでできるよう、B2より上級のC1レベルを受講予定です。
C1クラスでも新しいことが起こるかもしれません。その時はまた、楽活のみなさまにシェアしますね。
この記事を通して、少しでもドイツ語を学ぶことについて一例を提供できたのなら幸いです。