楽活をご覧のみなさま、こんにちは!
私はドイツに移住してから、定期的に数日間のお休みをとって小旅行に出かけています。
今回、訪れたのは、鉄道ファンや乗り物好き、ちょっと一風変わった観光をしたい方にオススメの「ハルツ鉄道(ハルツ狭軌鉄道)」。なんと、現役の蒸気機関車に乗ってブロッケン山山頂までのルートを楽しめるという観光スポットです。
実際に訪問した際に撮影した写真も交えてご紹介しますので、是非最後までチェックしてくださいね。
ハルツ地方とは?【魔女伝説で有名】
ハルツ地方は、ドイツ中部の山地に広がり、低山地であるハルツ山脈を中心に景観保護区(国立公園)を有しています。
景観保護区を中心としたハルツ地方には、美しい山々や渓谷、森林、湖、小さな町や村が多数!
道中では森のプールと呼ばれる森の中にある野外プールがアチコチで見られました。
このように、ハルツ地方は自然や文化に興味のある人びとにとって、魅力的な観光地です。
ハルツ地方は、中世から発展してきた独特の文化と歴史を持っており、古城や古い教会などが主な見どころです。
今回はご紹介していないのですが、私が宿泊したハルツ地方の小都市「クヴェートリンブルク(Quedlinburg)」は第二次世界大戦の戦火を免れた都市のひとつで、18世紀末~19世紀初頭の建築が今でも現役です。
ハルツ地方の象徴ブロッケン山と魔女伝説
ハルツ山脈の最高峰は標高は1,141メートルのブロッケン山です。ヨーロッパの文学や伝説に登場することも多く、ハルツ地方観光名所のひとつになっています。
詩集『歌の本』が代表作の詩人ハインリヒ・ハイネにもゆかりがありますよ!
また、ハルツ地方では中世より魔女伝説が残る地域。ブロッケン山に魔女たちが集まり、儀式を開いたという伝承が現代まで伝わっています。ただし、魔女狩りが行われた歴史的な背景については、今でも専門家の議論が続いているようです。
ハルツ地方では、魔女の伝承をテーマにしたイベントが開催されており、観光客にも人気です。街中でも、魔女の木彫り人形や魔女をあしらった看板など、魔女グッズが多数販売されていました。
Harzer Schmalspurbahnenの概要
さて、今回筆者が乗車したのは、「Harzer Schmalspurbahnen(ハルツ狭軌鉄道)」という蒸気機関車が走る鉄道区間です。「HSB」という名称でも親しまれています。
軌間1,000mm、全長140.4kmの路線網を毎日運行。走行時速はおおよそ25~40kmで、ハルツ山脈をゆっくりと時間をかけて登っていきます。山へと登っていくにつれて、スピードをゆっくり落としながら進んでいくブロッケン山まで登る路線について、ガイドブックには、「Schneckentempo(カタツムリのペース)」と書かれています。かたつむりを例えにするのは面白いと感じました。
なお、「ハルツ狭軌鉄道」は以下の車両を保有しています。
● 蒸気機関車25台
● 動力車両10台
● ディーゼル機関車12台
● 客車137台
蒸気機関車を25台も保有しているなんて、現代でもなかなか珍しいのではないでしょうか。HSBでは、最大10台の蒸気機関車が同時に旅客サービスを行っており、世界でも類を見ないそうです。1897年製のマレット関節式機関車から、1955年および1956年製のヨーロッパで最も強力な狭軌蒸気機関車まで多種多様!
レトロ蒸気機関車の宝庫として、鉄道ファンにはたまらないのではないでしょうか。
ただし、希望の蒸気機関車が走る時間帯や区間は、冬季と夏季で異なります。蒸気機関車が運行しているかどうかについては、ハルツ狭軌鉄道公式サイト(ドイツ語)または現地HSB駅で確認することができます。
HSBの走行ルートについて
「ハルツ狭軌鉄道」は主に3つのルートで運行中。
- オレンジ(ハルツ-クヴェアバーン):ノルドハウゼン~ヴェルニゲローデ間
- 黄緑(ゼルケタルバーン):クヴェートリンブルク~アイスフェルダータールミューレ間
- 水色(ブロッケンバーン):ドライ・アンネホーネ~ブロッケン間
各線は乗り換えで連結していますので、HSBで各地を移動しながらハルツ地方を楽しむのも楽しそうですね。
筆者が乗車したルートについて
今回、どうしてもタイミングの良い時間に蒸気機関車に乗り、ブロッケン山に行きたかったという背景があります。
滞在先のクヴェートリンブルクから出発する「ゼルケタルバーン」だと、早朝に起きなければならなかったことや、ブロッケン山への滞在時間が数十分しかなかったこと、「ゼルケタルバーン」経由だとブロッケン山に着くまで半日かかるという点から、車でヴェルニゲローデまで移動し、ハルツケルバーン経由でブロッケン山へ向かいました。
HSB車内での体験をご紹介
毎年、のべ 100 万人以上の乗客を運ぶHSB。
イベント列車なども運行していますが、今回は実際に筆者が乗車したハルツケルバーン経由ブロッケンバーンまでのルートで体験した内容をシェアします。
社内販売のシナップス
旅行客向けに、道中の車内では、車掌さんがハルツ地方で愛されてきたリキュール「シナップス」を車内販売していました!ボトルのラベルにはHSBの蒸気機関車が印刷されており、ちょっとしたレトロ感がありますよね。
車内でいただいても良いですし、持ち帰ってお土産にもバッチリです!お酒に慣れていない方は飲みやすい方にはベリー味。薬膳種が好きな方には薬草味をオススメします。
蒸気機関車の給水風景
HSBに乗車すると、蒸気機関車の給水風景を見ることができます!鉄道ファンでなくても、蒸気機関車が間近で給水を行う風景はかなり印象深いのではないでしょうか。
給水を見られるのは、ハルツケルバーンとブロッケンバーンが交わる乗換駅「ドライ・アンネン・ホーネ」駅です。
給水の他、乗り換えの為に数十分の停車時間が設けられており、乗客は自由に見学可能です。発車のアナウンスは車掌のかけ声のみなので、写真を撮るのに夢中になるあまり、乗り遅れないようにしましょう!
乗客や従業員とのちょっとした交流も楽しめる
HSBでの鉄道旅行中は、乗客や車掌さんとの交流も多くありました。
車掌さんはチケットチェックの際に、乗り換えルートに関する案内をしてくれたほか、ちょっとした雑談も。
乗り合わせた周囲の乗客の方とは、譲り合いながら乗車中の写真撮影をしたり、記念写真を撮り合ったりと、和やかな鉄道旅行を楽しめました。
また、街中を走っていると、小学校の近くを通ります。ちょうど筆者が乗車したお昼時、子どもらちが機関車に向かって手を振っている姿に、思わずほっこりして手を振り返すという素敵な瞬間も味わえました。
景観保護区で国立公園なのに木が枯れまくってる!?
ハルツ地方は景観保護区であり、国立公園として守られているのですが、線路脇に枯れた木々や切り倒された木々を多数見ることになります。
何も知らないでいると、「景観保護区なのに、ここ大丈夫?」「パンフレットや観光ガイド、公式サイトの写真と違うじゃん!」と思ってしまうかもしれません。
ですが、この状態にあるのには理由があります。
車内でもアナウンスがあるのですが、ハルツ地方では現在新しい自然を構築するための”工事”をしています。
実は、昨今の気候変動により、キクイムシの被害が拡大。ハルツ山脈の森を構成する針葉樹トウヒが弱ってしまい、キクイムシの食害によって大半の木が死滅してしまったのです。そこで政府は若いトウヒを植樹したり、トウヒ以外のさまざまな落葉樹を植林しているところなのです。
また、一見死んだように見える木々のなかには、生き物が住みついています。例えば、枯れ木が鳥の家になったり、菌類や虫の食料になっているのです。こうした事情から、ハルツ地方の森の再生事業は、数十年をかけてゆっくりと進められているのです。
まとめ
本稿では、ハルツ山脈をゆっくり走るHSBについて、実際に乗車した体験をもとにご紹介しました。年間を通して、シューッという迫力ある音と踏み鳴らしで、多くの観光客を虜にする、現代を走る蒸気機関車は、ドイツきってのアトラクションのひとつといえるでしょう。
線路から見て楽しんでもよし、実際に乗車してもよしですので、ドイツを訪れる際はぜひチェックしてみてください!
「Harzer Schmalspurbahnen(ハルツ狭軌鉄道/HSB)」基本情報
◯ブロッケンへの片道料金
大人:35.00ユーロ、往復53.00ユーロ
子ども(6 ~14歳):片道21.00ユーロ、往復32.00ユーロ
※6歳未満の子どもは無料
※家族料金あり
※一部路線対応ドイツチケット対象。詳細はコチラ
※臨時列車、イベント列車などは別料金
時刻表:夏季・冬季時刻あり。公式サイト参照
※イベント列車、臨時列車などは別途設定
公式HP:https://www.hsb-wr.de/