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子どもたちの笑顔が咲く。新世代に繋ぐ花の世界。「いけばな出前プロジェクト」

『2027横浜国際園芸博覧会』に向けて横浜市独自の活動の一環で、この日私が訪れたのは横浜市立鴨居小学校。

J R横浜線鴨居駅から徒歩数分の小高い丘にある鴨居小学校の設立は明治7年。その校歌にも学校と呼ばれる前の「学舎」という言葉が使われているほど、歴史の長い小学校です。

「青空の横浜市立鴨居小学校。とても寒い朝でした」

その小学校に、今回、一葉式いけ花の粕谷尚弘家元が、いけばな出前プロジェクトという企画で、生徒さんにいけばなのワークショップといけばなデモンストレーションをされるということで取材させていただくべくお邪魔しました。

今回の企画は、横浜らしい花・緑・農・⽔のある豊かな⾃然環境を創り上げ、まちづくりや賑わい 創出、観光・MICEの取組などにより、「ガーデンシティ横浜」を推進している横浜市が、『2027横浜国際園芸博覧会』に向けて独自に行なっている活動の一環で、公益財団法人日本いけばな芸術協会との連携によって開催されたそうです。

いけばな…華道ってなんだか敷居が高いイメージが。お花を生ける時にも色々ルールがありそう、大人でもちょっと構えてしまいそうだけど、子どもたちはどんなイメージを持っているのかな。

会場となった理科室に入ると、可愛いイラストのテキストと道具。

陶器の花器に花切りバサミと剣山。すごい、本格的!

「今回のテキストとお道具一式。本格的です」

わいわいと集まった生徒の皆さん。堤校長先生からのお話を聞いて、ご挨拶。

いよいよ今回ご指導していただく一葉式いけ花の粕谷家元がご登場です。

「黒いお着物がお似合いの粕谷家元。とてもお若い」

黒いお着物をピシっと着こなし、教壇に立たれた家元。

お部屋の空気が緊張感に包まれましたが、いけばなについてのお話がはじまると、そのやさしい語りと声に、そしてそのお話に子どもたちも穏やかに、でもしっかり耳を傾けていました。

「家元の説明に耳を傾ける生徒の皆さん」

これまでの学習のなかで、華道、茶道というものがあるということはわかっていたけれど、その歴史や、なぜ「いけばな」というのか、というお話はとても興味深かったようです。

これから行ういけばなの実践のための注意点、お花を飾る向きに関してのアドバイスや花切りバサミの持ち方や使い方などを、家元の作業をみせていただきながら教わった後、一葉式いけ花のスタッフの皆さんがご用意してくださった花材から、枝物、葉物、花、それぞれ好きなものを選びます。

「家元の説明を聞きながら順番に花を選んでいく生徒の皆さん」

そしていよいよいけばな体験スタート!

生徒さんたち数名ごとに、スタッフの方がついてくださっていたおかげで、スムーズに進んでいるようです。何よりも驚きだったのは、とても自由だったということ。

誰ひとり、こうしなきゃ、そういうのはだめ、なんてことを言われることはなく、生徒さんたちはのびのびと自由に、だからこそ家元に教わったことを反映させて、自分なりのいけばなを作り上げていました。

「思い思いに花をいけていく教室の風景」

​​用意されたのは陶器でできた花器と剣山​​。

そこから自分の好きな花材を選んで、自分の感性と、周りからの少しのアドバイスで

それぞれの世界を表現していきます。

何よりも、生徒さんのキラキラワクワクがすごく伝わってきて、 見ている私もとても楽しくなりました。

「生徒さんたちに優しくご指導中の粕谷家元」

粕谷家元も積極的に生徒さんたちのなかに入られ、アドバイスをして回られていたのですが

ほんの少し差し方や向きを変えてみただけで、もっと良くなる自分の作品を見て驚いたり、感動したりする生徒さんたちの真剣な眼差しがとても印象深かったです。

「粕谷家元のアドバイスでお花がより生き生きとしていきます」

数名の生徒さんにお話を聞かせていただいたのですが、ほとんど全員がいけばな初体験。花切りバサミを持ったのも初めて、とのこと。

おばあちゃんがやっていました、という方もいましたが、今までちゃんと見たこともなく、こんな風に生けるというのも知らなかったそうです。

それなのに!たった1時間弱で皆さんとても素敵な作品を完成させていました。

「真剣な眼差しの生徒さん。素敵な作品には大人も子供もないですね」

「本当に楽しかった」「家元のお話面白かった。いけばなの歴史が聞けたのはよかった」

「また機会があったらいけばなやってみたい」

キラキラした瞳でそんな感想をたくさん聞かせていただきました。

「テレビの取材を受ける生徒さん。緊張感が伝わります」

いけばなが、難しそうで敷居が高い、なんて、もしかしたら大人の勝手な思い込みなのかもしれません。

もちろん、ルールがあるのは大切なこと。

そのなかで自分を自由に表現していくことの楽しさを、子供達の笑顔から学んだような気がします。

「作品を撮らせていただいた生徒さん。自信作です!」

そして午後は体育館に移動して、いよいよ粕谷家元による「いけばなデモンストレーション」。

自分たちでいけばなを体験した後だからこそ、家元のいけばながどんな風に作られていくのか、子供たちもじっと観察していました。

「体育館でのデモンストレーションの前にお話をされる粕谷家元」

花器や見せ方で変わる差し方、小さな作品から大きな作品まで、まさに今、いけているところを見ることで、いけばながただの飾りではなく、作品なのだと感じた生徒さんも多かったのではないでしょうか。

「大きな花器を使って飾られる大胆な作品。近くで見ると圧巻です」

私も、いけばなって、いけられた作品を見るのも素敵ですが、いけているところを見る方が何倍も楽しいんだなと思いました。

『2027横浜国際園芸博覧会』に向けて行われることになった「いけばな出前プロジェクト」。この企画は今回だけではなく、今後も引き続き違う小学校等で開催される予定です。

また、「ガーデンネックレス横浜2023」期間中に横浜山手西洋館で開催される「花と器のハーモニー2023」では、いけばな七流派の家元が協力して従来にない装飾を実現し、日本の伝統文化である「いけばな」に親近感を持ってもらうために取り組むとともに、新世代へ浸透すべく活動していくとのことです。

「粕谷家元を囲んで、生徒さんとの集合写真。素敵な思い出になりそうです」

『2027横浜国際園芸博覧会』に向けて、横浜市の活動のひとつひとつが花になって繋がり合い、繋がりが、まるで花畑の花々が開いていくように広がっていく。

子どもたちのキラキラした表情を思い出し、これが彼らの初めの半歩になるのかもしれないと思った晴れた午後でした。

「子供たちの笑顔に咲いた花はキラキラとしていました」

参考資料

​​・指導者プロフィール

粕谷尚弘 NAOHIRO Kasuya/一葉式いけ花 家元

1980 年、一葉式いけ花 第三代家元 粕谷明弘の次男として生まれる。
幼少より家元に師事。2004 年に渡米、インダストリアルデザインを学ぶ。
日本の華道界での活躍はもとより、ニューヨーク・メトロポリタン美術館でのデモンストレーションをはじめ、アメリカや南アフリカ、ウクライナ等で、数多くのいけばなデモンストレーションや指導など、海外での活動にも積極的に取り組ん でいる。 公益財団法人日本いけばな芸術協会理事、いけばな協会理事、 一般社団法人帝国華道院理事などを務める。

Instagram:https://www.instagram.com › naohirokasuya

・いけばな出前プロジェクトについて

2027横浜国際園芸博覧会に向けて横浜市独自の活動として、家元が市内小学校で子どもたちに直接いけばな教室を開催したり、パフォーマンスを実施します。 実際に花をいける体験を通して、子どもたちが日本の伝統文化であるいけばな体験をもって学びます。

Mayachi(まやち)

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旦那の駐在に同行しているうちに海外生活が10年超。帰国して現在は専業主婦。海外の日本人向けwebやフリーペーパーでライター活動のほか、学生時代からのマンガ執筆を(ときどき仕事で)継続中。食べ物への執着を捨てられない、食いしん坊断罪です。最近はお買い物バッグを集めるのが趣味。
Instagram(https://www.instagram.com/mayachijp/

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