新潟県越後妻有地区で里山や町がアートに包まれる3年に1度開催される国際芸術祭「越後妻有 大地の芸術祭 2022」が開催され、話題を呼んでいます。観光名所から棚田の中にまで施された芸術作品はビギナーも楽しめるアートの祭典。壮大なスケールの自然とアートの旅を楽しめる大地の芸術祭の魅力をお伝えしましょう。
(※アイキャッチ:「Tunnel of Light」マ・ヤンソン/MADアーキテクツ)
新潟の広大な里山がアートに包まれる越後妻有 大地の芸術祭 2022
越後妻有大地の芸術祭は日本屈指の豪雪地帯として知られる新潟県の山深い越後妻有で、3年に1度行われる国際芸術祭。2000年より開催されている歴史があるアートの祭典で、世界的にも注目を浴びています。
豪雪地帯という厳しい気候の越後妻有で自然と人間との関わり。
アートと里山をめぐることで磨かれる感性。
世代や地域、ジャンルを超越したコミュニケーション。
既存を活かし新たな価値を生み出す。
地域ならではの独特な拠点。
人間の生活自体もアートの一つ、グローバルとローカルの融合。
このようなコンセプトを元に、新潟県上越市(旧高田市)出身で、瀬戸内国際芸術祭などをも手掛ける北川フラム氏がディレクターとして「大地の芸術祭」で指揮を執っています。
数多くのアート作品を6つのエリアで楽しめる
作品・作家数について
大地の芸術祭では、38カ国263組もの作家が参加。210点の常設展示と123点の新作が展示されています。作品によって公開時期が異なるものもあるので、下記カレンダーで公開日を確認してからお出かけくださいね。
作品公開カレンダー
https://www.echigo-tsumari.jp/news/20220426_01/
またお目当ての作品のある位置がわかる「大地の芸術祭」公式アプリもあり便利ですよ。
「大地の芸術祭」公式アプリ
https://www.echigo-tsumari.jp/news/20210921_01/
6つのエリアについて
大地の芸術祭は広大な妻有地域を6つのエリアに分かれて開催されています。
信濃川の東岸にあり農業と織物が有名な十日町エリア。笹山遺跡から出土された4500年前の火焔型土器は芸術性が高いことでも有名。
信濃川の西岸にあり河岸段丘の川西エリア。稲作が盛んで、豪農・豪商の星名家は現在15代目を数えます。
信濃川や清津川など多くの川と共に栄えてきた中里エリア。豊かな自然溢れ上信越高原国立公園にも指定される清津峡渓谷が有名です。
渋海川沿いの丘陵地で山々に囲まれた松代エリア。絶景名所の星峠など、数多くの棚田があることで知られています。
長野県境に位置し、傾斜の厳しい丘陵地の松之山エリア。日本屈指の豪雪地帯の里山では山菜やきのこなどの農産物や松之山温泉も有名。
新潟県の最南端で長野・群馬との県境に位置する津南エリア。冬は寒さが厳しい反面、夏は涼しいので夏には多くの人が避暑足を運びます。
このように広大な6つのエリアのさまざまなスポットでアート作品を楽しむことができる、壮大なスケールの芸術祭です。
「越後妻有 大地の芸術祭 2022」開催情報
会期:2022年4月29日(金・祝)〜11月13日(日)
開催時間:10:00〜17:00
定休日:火・水曜日
※作品によって公開日・公開時間が異なる場合があり
料金:各施設・作品によって料金が異なる
開催期間中有効な作品鑑賞パスポート:
早割大人3,500円 学生2,500円(※7月29日まで)
通常料金大人4,500円 学生3,500円 中学生以下は無料
大地の芸術祭公式サイト
https://www.echigo-tsumari.jp
便利・お得に楽しむコツ
ここでは大地の芸術祭を便利、お得に楽しむコツをご紹介しましょう。
まずは情報収集から始めよう!
芸術祭を効率よく存分に楽しむために、まずは案内書・検温スポットに足を運んでみましょう。検温スポットにて健康チェックを行い、体温が正常であることを確認してもらうと、リストバンドが交付されます。これを腕に巻き、いざアートの旅に出発です。
期中常設の案内所は、越後妻有里山近代美術館 MonET、まつだい農舞台、Tunnnel of Light(清津峡渓谷トンネル)、松代・松之山温泉観光案内所(まつだい駅内)、苗場酒造敷地内・広域観光情報センター(越後湯沢駅内)・道の駅 南魚沼 雪あかり(今泉記念館内)となっています。こうした案内書では、アートめぐりに便利な公式ガイドブックや、グッズ、各種お土産などを取り扱っています。
また磯辺行久記念越後妻有清津倉庫美術館[SoKo]・奴奈川キャンパスなどは不定期に開館されるので最新の情報をチェックしてくださいね。
便利・お得に芸術めぐりを楽しめる「作品鑑賞パスポート」
作品鑑賞パスポートはアート鑑賞の必需品。早割で購入するとお得です。開催期間中有効で場所によっては3回まで入館できるところもあり、お気に入りの作品をリピートできます。
作品鑑賞パスポートについて
https://www.echigo-tsumari.jp/visit/?anchor=visit1
地元の飲食店やまた特典やクーポンもついているので、お得に近くの施設も利用できます。
理解が深まる公式ガイドブック
また公式ガイドブックには舞台となる越後妻有地域のことや作品・マップ・周辺情報などが載っているので芸術祭めぐりにとても役立ちます。公式ガイドブックは主要施設のほか、下記オンラインショップでも入手できるので、予習してから足を運んでみると、より一層作品に対する理解が深まりますね。
公式オンラインショップ
https://tsumari.official.ec
アートを旅する。里山をめぐってみました
ということでお待たせしました、越後妻有の里山や街中のアートを楽しんできたのでご紹介しましょう。今回、旅のスタートは清津峡渓谷トンネルから。検温を済ませると、いよいよアートをめぐる旅の始まりです。
中里エリアで楽しめるアート
■Tunnel of Light(清津峡渓谷トンネル)
作家名:マ・ヤンソン/MADアーキテクツ
新潟を誇る観光名所の一つ、全長750mの清津峡渓谷トンネル。2018年に改修され、トンネルと周辺施設一体がアート作品になりました。
木・土・金属・火・水という自然の5大要素を取り入れた空間はアーティスティック。歴史あるトンネルにアートの世界が広がっています。
ペリスコープ:カフェ2階にある足湯の天井にある丸い潜望鏡には周辺の美しい景色が映し出されます。
色の表出:奥へ進んでいくとトンネル内が幻想的な色に包まれます。まるで異空間へと誘われているかのよう。
見えない泡・Flow
第2見晴所にあるカプセル型のトイレが静かな泡。内部からしか外部が見えない不思議な設計、喧騒の中の静かな避難所ともいえます。
そしてここは白と黒の渦巻きトンネルのFlow。その先には美しい清津峡の風景が広がる摩訶不思議な空間です。
しずく:第2展望台にはオレンジ色とも言える鏡のようなオブジェがありミステリアスな雰囲気を醸し出します。
ライトケーブ(光の洞窟):トンネルの最終地点、水盤鏡に清津峡渓谷の美しい風景が映り込む人気のフォトスポット。渓谷の緑、晴れていれば青い空、人の姿が影となり水の上に映し出されるアーティスティックな空間です。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/periscopelight_cave/
■「磯辺行久の世界-記号から環境へ」(磯辺行久記念越後妻有清津倉庫美術館[Soko])
作家名:磯辺行久
倉庫美術館で開催される、磯辺行久氏の作家としてのワークが全て展示されている企画展。まず目に飛び込んでくるのが、驚異的な風貌のダイオキシンマップ。
2階には1950年代の初期作品から、地域周辺の河岸段丘や越後妻有の変化などをジオラマなどで展示しています。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/world_of_yukihisa_isobe_from_code_to_environment/
■たくさんの失われた窓のために
作家名:内海昭子
桔梗原うるおい公園の中心に白いカーテンがあしらわれた大きな窓があります。作者の部屋の窓から見える「私の風景」。窓の前にはお立ち台があり、風にそよぐカーテンの隙間から、大自然と共に広がる里山の風景を眺望できます。心が和みリセットされるような景色がここにあります。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/for_lots_of_lost_windows/
十日町エリアで楽しめるアート
■Kiss & Goodbye(越後水沢駅)
作家名:ジミー・リャオ
長野新潟間を走るJR飯山線を舞台に描かれた「幸せのきっぷ Kiss & Goodbye」の絵本をモチーフにした作品が展示されています。
両親を亡くした少年と犬が電車に乗って祖父の元を訪ねるという内容の絵本。
飼い犬が描かれているのは、越後妻有特有のかまぼこ型倉庫。その上には絵本の主人公がたたずみます。倉庫内には絵本の挿絵や登場人物が展示されています。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/kiss_goodbye_echigo_mizusawa/
■Kiss & Goodbye(土市駅)
作家名:ジミー・リャオ
こちらも越後水沢駅同様Kiss & Goodbyeの絵本をモチーフにした作品。
三角屋根の可愛らしい駅舎のお隣にかまぼこ型の倉庫があり、絵本をモチーフにした絵画を鑑賞できます。大きなモニターでは映像、そしてそれを眺める主人公と飼い犬の可愛らしい姿を見ることができます。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/kiss_goodbye_doichi/
■越後妻有里山現代美術館 MonET(モネ)
作家名:原広司+アトリエファイ建築研究所
十日町の街中にある越後妻有里山現代美術館 MonET(モネ)は2003年に越後妻有交流館・キナーレとして誕生し、2012年に越後妻有里山現代美術館「キナーレ」へ、そして2021年に建築の改修も行われ、現在は越後妻有里山現代美術館 MonET(モネ)として十日町アートの拠点として親しまれている施設です。
打ちっぱなしのコンクリートと正方形の美しさが街並みの中で一際目を引く建物。館内には中谷ミチコら日本の次世代作家やイリヤ&エミリア・カバノフやニコラ・ダロなどの海外作家の作品も見られます。
全部はご紹介しきれないほど、たくさんの作品が展示され、見応え抜群です。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/echigo-tsumari_kouryukan_echigo-tsumari_exchange_center/
■Palimpsest: 空の池(越後妻有里山現代美術館)
作家名:レアンドロ・エルリッヒ
越後妻有里山現代美術館の中心にある大きな池は光の反射であたりの様子を鏡のように映し出してくれます。2階のある地点からこの池を見ると・・池の中に映りだされた景色が実物と完全に一致する摩訶不思議で錯覚のような光景が目に飛び込んできます。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/palimpsest/
■ソイル・ライブラリー(越後妻有里山現代美術館)
作家名:栗田宏一
県内12市町村をめぐり採取した色とりどりの土。乾燥させ、余分なもの全てを丁寧に取り除いた576種類の土はまるでカラーボトルのような美しさを放ち、思わず見惚れてしまいます。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/soil_library_niigata/
■movements(越後妻有里山現代美術館)
作家名:目
美術館の天井から無数とも思える糸の先の時計がムクドリの群れのように配置された作品。意味と無意味、個と公、主体と客体など真逆の世界を表現しています。館内に差し込む光と時計の美しさも見どころです。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/movements/
■エアリエル(越後妻有里山現代美術館)
作家名:ニコラ・ダロ
パラシュートの布で作られた2つの機械仕掛けの人形はシェイクスピアのエアリエルからのインスピレーションで作られた作品。不規則な風が送られ、二つの人形は予想外の動きで見る人の目を楽しませてくれます。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/ariel/
■Three Travellers(越後妻有里山現代美術館)
作家名:原広司+アトリエファイ建築研究所
越後妻有里山現代美術館のエントランス近くにある作品兼東屋。美術館の設計を手掛けた作家原広司と工学院大学藤木研究室+F.A.D.Sの協力の元作られた作品です。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/three_travellers/
■シルクの水脈(越後妻有里山現代美術館)
作家名:郷晃
Three Travellersの近くにある「シルクの水脈」。東大寺にもシルクを献納したという十日町は古くから産地として栄えていました。信濃川流域で採取された安山岩を円筒状に配置したシルクの水脈は、雪解けのシーズンになると、背の高い順に雪の中から徐々にゆっくりと顔を出していきます。越後妻有の歴史の流れを表した作品です。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/a_water_vein_of_the_silk/
松代エリアで楽しめるアート
■まつだい農舞台
作家名:MVRDV
都市と里山の交換をテーマに、食やイベント、体験プログラムなどを通じて地域の魅力を探し発信していく施設です。棚田を切り開き、植林し、田んぼを作る、こういった里山の暮らしを世界の人々に知ってほしいという思いが詰まっています。
建物内部の空間は全てアート、また周辺にも見どころが満載です。またカフェでは食事やスイーツも楽しめます。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/travelinformation/nohbutai/
■10のアルバム 迷宮(まつだい農舞台)
作家名:イリヤ&エミリア・カバコフ
農舞台の建物内にある、木を基調にした明るくまるで迷宮のようなエリアにはたくさんのアルバムが台座の上に置かれています。これには旧ソ連時代の1970年代に10人の夢想家が主人公となる物語が綴れられています。構造上物語に没頭できるような工夫がされています。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/tenalbums/
■関係-黒板の教室(まつだい農舞台)
作家名:河口龍夫
一歩足を踏み入れるとそこは緑の世界。教室全体が黒板となり、懐かしさとどこか異次元な雰囲気が漂います。地球儀やそろばんなどの教育に使われる道具をはじめ、地域の方々が使用していた農具を展示して、アートな空間を演出しています。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/relationblackboard_classroomrelationfarmers_work/
■カフェ・ルフレ(まつだい農舞台)
作家名:ジャン=リュック・ヴィルムート
農舞台の2階にあるカフェ・ルフレは青を基調とした店内で爽快感があふれます。
天井に4つの円形照明があるのですが松代エリアの春夏秋冬の写真がそれぞれあしらわれています。この写真は地元の方々が1年かけて地域を撮影したのだそう。
ミラーのようなカフェのテーブルにこの写真が映り込み、美しい写真を見ながらカフェメニューや食事が楽しめます。カフェのルフレという名前には反映という意味があります。もちろん窓からは、松代豊かな自然をも眺望できます。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/caf_reflet/
■廻転する不在
作家名:東弘一郎
なんとなく想像がつくかもしれませんが、乗らなくなった自転車を集めて、新しい命を吹き込んだ作品。それぞれの場所で使われ、乗っていた人たちの思い出が詰まった自転車が集まり、これに乗った人たちにまた新しい思い出を生み出していく。子供から大人まで楽しめる、乗れるアート作品です。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/rotating-absence/
■花咲ける妻有
作家名:草間彌生
インパクト抜群な巨大オブジェはビビッドなカラー使いで、遠くからでも存在感を感じます。大きな手を広げ、自由に包み込んでくれる妻有の気高さをも象徴する、妖艶さと美しさが共存するアート作品の一つです。
作品詳細情報
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/tsumari_in_bloom/
農舞台で味わえるご当地グルメとカフェメニュー
作品としてもご紹介した松代エリアの農舞台にあるカフェ・ルフレには越後まつだい里山食堂も併設、地元の食材を使った美味しいお料理が味わえます。
平日は日替わりランチで里山ごはんを、土日祝日限定で里山ビュッフェの食べ放題。家庭や郷土を存分に堪能できます。
平日限定日替わりランチ:1,200円
土日祝日限定ビュッフェ:1,700円
カフェメニューも充実、ケーキやティラミスなどのスイーツがショーケースに並びます。ドリンクはどれも体に優しいものばかり。
こちらは日本酒松乃井を使った絶品のティラミス。
紅茶でいただきます。
そしてこちらは塩キャラメルバナナタルト。
コーヒーでいただきます。どちらのスイーツも優しいお味で、旅で疲れた体を癒してくれます。(※スイーツメニューは季節により変わります。)
営業時間:10:00〜17:00(ランチラストオーダー14:00)
おわりに
広大な自然に包まれた里山の新潟県越後妻有地区で開催されている大地の芸術祭いかがでしたか?魅力は存分に伝わったでしょうか?
限られた時間内で全てのエリアは巡れず、代表的な作品のみのご紹介となりましたが、いずれも地域の特徴を活かし、作り手の感性を盛り込んだ作品が心に響き、感動が絶えませんでした。
作品の中には宿泊できる施設や宿泊者限定のプログラムもあるので、スペシャルな体験が待ってること間違いなしです。またオフィシャルツアーやバスツアー、モデルコースもあるので、公式サイトの情報をチェックしてみてくださいね。
観光とは違う趣のあるアート旅へ、五感を磨きに出かけてみませんか?