お正月休みは心に響くアート映画をおうちで楽しもう!動画配信で見られる傑作10選【前編】

お正月休み…おこもり需要が高まるこの時期に、Amazon PrimeやNetflix、Huluなどの動画配信サービスを通して、心に響く美術・アートをテーマにした映画作品を満喫するのはいかがでしょうか?

映画には、映像が美しいアーティスティックな作品や、人間の心を映す深いメッセージを込められた作品など、時代を越えて愛されているものが数多く存在しています。

この記事では芸術家の人生を描いたものや、作中の端々にアートが感じられるものまで、ジャンルやテーマに分けて取り上げたいと思います。ご紹介したい映画作品の数も多いので、前後編に分けてお伝えしていきます。

前篇は、ルネッサンスから芸術の花開くゴールデンエイジ(1920年代頃)、それからおまけとして美術館をテーマにした映画作品10作品をご案内していきます!

【ルネサンス時代】

『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズ

本作品は、ベストセラー作家ダン・ブラウンによる長編推理小説シリーズの映像化です。

著者が『この小説に登場する芸術作品、建築物、場所、科学、宗教団体は、すべて現実のものである』と語るとおり、実在する美術館や教会を舞台に、実在する芸術作品から解読した暗号、宗教や神話に纏わるストーリーが展開され、歴史上の名だたる偉人や秘密結社を取り上げて構成されているため、知的好奇心が刺激されてやまない作品です。

現在のシリーズは、ダ・ヴィンチ絵画の謎から歴史の真実を辿る『ダ・ヴィンチ・コード』(06)、ヴァチカンを舞台にガリレオの遺した暗号を解き秘密結社イルミナティの陰謀に迫った『天使と悪魔』(09)、詩人ダンテの叙事詩「神曲」<地獄(インフェルノ)篇>に秘められた暗号から世界を救う『インフェルノ』(18)があります。

『レオナルド・ダ・ヴィンチ 美と知の迷宮』(2016)

本作品は、上記のダ・ヴィンチ・コードシリーズをはじめとして、今尚世界中で小説や映画に登場している“謎多き天才”レオナルド・ダ・ヴィンチの知られざる人物や偉業、名作に残された謎を紐解いていく美術ドキュメンタリーです。

イタリアのルネサンス期を代表する芸術家で、絵画、彫刻、建築、数学、物理などあらゆる分野で功績を残した、レオナルドの天才たる所以を各分野の研究者が解説。時折挿入される彼を取り巻く人々の再現ドラマでは、当時の背景を補足してくれるので、大変わかりやすく見やすい作品です。

【バロック時代】

『真珠の耳飾りの少女』(2003)

本作品は、17世紀のオランダのデルフトを舞台に、フェルメールの名画『真珠の耳飾りの少女』が描かれた背景に物語を構築し、それをモデルとなった少女の目を通して描いています。

当時のオランダの美しい街並み、窓から差し込む淡い光、陶の水差しから流れ出る水、テーブルに置かれた肉や魚や果物…フェルメールの絵画の世界がそのまま映像で復元されたかのような作り込みに感動します。

本作で長編映画デビューしたピーター・ウェバー監督の繊細な人間描写、フェルメールの絵の特徴をとらえた芸術的なビジュアルなど、その演出はデビュー作とは思えないほど完成度が高いと言えるでしょう。

『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』(2018)

本作品は、17世紀のオランダのアムステルダムを舞台に、既婚女性と貧乏画家との燃え上がるラブストーリー。

球根1つの値段が邸宅1軒分の価値…“チューリップバブル”と呼ばれる、世界最古の投機バブルと“絵画”が投資や収集のブームだった時代背景が感じられるとともに、フェルメールの名画をオマージュした衣装や場面など、アート好きにはたまらない作品です。

【後期印象派】

『ゴッホ ~最後の手紙~』(2017)

アートに関心がない人でも、一度はゴッホの名前を耳にしたことがあるのでは…?

これまで、ゴッホをテーマにした数多くの映像作品が作られてきました。いずれも、ワールドワイドに活躍する実力派俳優が演じて、国際映画祭などで高い評価を受けた力作揃いですが、今回はこちらの作品『ゴッホ~最後の手紙~』を取り上げたいと思います。

本作品は、「ひまわり」などの名画で知られるフィンセント・ファン・ゴッホの謎に包まれた最期を、約65,000枚のゴッホ風に描かれた油絵を使ってアニメーション仕立てにしたサスペンス。

自殺したとされる画家が弟テオに宛てた「最後の手紙」を託された主人公が、その責務を果たそうと奔走するうちにゴッホの死の真相に迫っていきます。

『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』(2018)

本作品は、1891年にポール・ゴーギャンがパリからタヒチへと移り住み、後に彼が書いた紀行文『ノアノア』に基づいて制作されました。

彼の絵画にも描かれた美しいタヒチの自然はもちろんのこと、【原始のイブ】のモデルを務める妻テフラも魅力的に描かれています。彼が惹かれた土地や人物に興味を持つことで、ゴーギャンの絵を改めて見直し、絵画鑑賞の視点が深まるきっかけになる作品です。

【エコール・ド・パリ】

『モンパルナスの灯』(1958)

本作品は、苦悩と悲運のうちに35歳で生涯を閉じた異色画家モディリアーニの晩年を描いた伝記作品。

ストーリーは、モディリアーニが亡くなる直前の1年間に焦点を絞って展開されます。認められず絶望と極貧にあえぐ画家の孤独や、それでも彼のことを直向きに信じている恋人の美しさ、彼の絵画作品を狙う死神のような画商など、死後評価されている画家に寄り添うと、胸が苦しくなってしまう作品です。

『FOUJITA』(2015)

本作品は、画家・藤田嗣治を描いた作品です。彼は、第二次世界大戦を挟んで、フランスと日本というの2つの異なる文化を生きた芸術家でした。

前編パートはフランスに渡り、モディリアーニやピカソ、ルソーらとも交流を深めるなど、“エコール・ド・パリ”の寵児となっていた藤田嗣治の半生が描かれます。後編パートでは、戦争を機に日本に戻り、数多くの戦争協力画を描き、日本美術界の重鎮に上りつめていく様子を対照的に描いています。

【その他(戦前)】

『リリーのすべて』(2016)

本作品は、風景画家アイナー・ヴェイナーとして名を馳せた後に、世界で初めて性別適合手術を受けた女性リリー・エルベと、彼女を支え続けた妻の肖像画家ゲルダが織り成す感動の愛を描いたヒューマンドラマです。

アイナーがリリーになっていくのに戸惑い受け入れられず、それでもリリーを描きつづけるゲルダの愛の深さには心を打たれます。また、作中に登場するゲルダが描いた肖像作品が本人が描いた実際の作品とよく似ていたり、当時の時代背景を汲んだ装飾の作り込みなど、随所にこだわりが感じられます。ぜひ注目してみてください。

『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)

本作品は、売れっ子脚本家の主人公が、1920年のパリにタイムスリップした先で、ヘミングウェイやダリなどの偉人たちと出会うロマンティック・コメディ。

アートの黄金時代に生きた過去の偉人とのやりとりは、ウディ・アレン監督一流の皮肉が効いた演出と相まって非常にコミカルで面白い作品です。

過去の偉人達も、本作の主人公同様に、古い時代に恋焦がれ、不満を抱いていました。現状に対する不満こそが作品づくりへの大きなモチベーションになっていることに気付かされました。何もかも満たされた現状だと、ピカソやダリの名画や、ヘミングウェイの小説など、今尚残る名作は生まれなかったのかもしれませんね。

【美術館をテーマにしたドキュメンタリー】

『エルミタージュ美術館 美を守る宮殿』(2014)

本作品は幾多の困難を迎えながらも美術館を守り続け、250年を超えても特別な存在であり続ける理由を明らかにする、エルミタージュ美術館の真の姿に迫るドキュメンタリー。

世界三大美術館といわれるのが、フランスのルーヴル美術館(1793年開館)、アメリカのメトロポリタン美術館(1870年開館)、そしてロシアのエルミタージュ美術館(1764年開館)。

エルミタージュ美術館は絵画、彫像、宝飾品、陶磁器、武具などその膨大な所蔵品は世界一と言われます。300万点の至宝に2,000の部屋、世界中の他のどの美術館よりも多くの学芸員を擁し、年間366万人以上(2015年現在)の入場者が訪れます。

時の革命、戦争、政治によって美術館や美術品、職員の命も危険に晒されながらも、美術を通して文化を残そうとする人達の働きに心が動かされます。

『プラド美術館 驚異のコレクション』(2019)

本作品は、世界最高峰の一つとして謳われてるスペインにあるプラド美術館の歴史を、同館が所蔵する世界屈指の名画と共に辿るドキュメンタリー。

プラド美術館は、上述した世界三大美術館に加え、イギリスの大英博物館(1753年開館)と合わせて「世界五大美術館」の一角を占める世界屈指の美術館。

同館には、毎年約300万人が訪問。スペイン黄金時代に生きた王と王女が、自らの意志と審美眼で収集した唯一無二の美の殿堂です。他の美術館とは明らかに趣向の異なる美の世界をご覧になってみてはいかがでしょうか。

さて、長くなりましたので前編はここまで。

後編では、20世紀美術から現代アートまでの西洋美術史の流れとともに、ストリートアートや写真といった美術ジャンルに触れ、そして国内のアートティストにも目を向けつつ、最後はおまけで気軽に足を運ぶことができるギャラリーをテーマにした作品をご提案します。

「動画配信で見られる傑作10選【後編】」もお楽しみに〜!

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