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お正月休みは心に響くアート映画をおうちで楽しもう!動画配信で見られる傑作10選【後編】

お正月休み…おこもり需要が高まるこの時期に、Amazon PrimeやNetflix、Huluなどの動画配信サービスを通して、心に響く美術・アートをテーマにした映画作品を満喫するのはいかがでしょうか?

映画には、映像が美しいアーティスティックな作品や、人間の心を映す深いメッセージを込められた作品など、時代を越えて愛されているものが数多く存在しています。

この記事では芸術家の人生を描いたものや、作中の端々にアートが感じられるものまで、ジャンルやテーマに分けて取り上げたいと思います。ご紹介したい映画作品の数も多いので、前後編に分けてお伝えしていきます。

★前編はこちらからどうぞ!

後編では、20世紀美術から現代アートまでの西洋美術史の流れとともに、ストリートアートや写真といった個別の美術ジャンルに焦点を当てた映画や国内のアーティストを特集した映画も合わせてを紹介します。おまけとして、最後にはギャラリーをテーマにした作品をご提案します。

【20世紀美術】

『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』 (2019)

本作は、ナチスが略奪した美術品の行方とそこに関わった人々の運命を、多数の証言をもとに辿る名画ミステリー。

1933年から1945年にかけて、ナチス・ドイツがヨーロッパ各地で略奪した芸術品の総数は約60万点にのぼり、戦後70年以上経った今でも約10万点が行方不明だといわれています。

欧米で活躍する歴史家、美術研究家をはじめ、ナチス・ドイツによって略奪された美術品の相続人や奪還運動に携わる関係者の証言をもとに、ヒトラー自身の思想背景と略奪された美術品が辿った闇の美術史に迫ります。

『黄金のアデーレ名画の帰還』(2015)

本作品は、ナチスに奪われたクリムトが描いた伯母の肖像画「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」の返還を求め、国を訴えた女性の奇跡のストーリー。

実話をベースとしているため、派手などんでん返しや仕掛けはありませんが、情熱をもって、ある一つの目的のために人生を賭けた誠実な人物の物語として鑑賞することができます。

それまで「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」は、オーストラリアで国宝級の名画として大切にされていた絵画作品。これを取り戻すのは容易ではなかったでしょう…表面上は個人の資産だった名画を本来の所有権を有する個人に戻すという訴訟ですが、第二次世界大戦中にユダヤ人の資産を強奪したナチスの戦争犯罪を、現代のオーストリア政府がどのように解釈しているのかという、社会正義に関わる問題に触れています。

【現代アート】

『アートのお値段』(2019)

本作品は、アーティストやコレクター、美術商、評論家など、アート業界の様々な関係者への取材を通してアートとお金の関係を探ると同時に、アートの価値とは何かを問いながら、アート市場の実態に踏み込んだドキュメンタリー。

今やアート作品は株や不動産のような投資対象となり、世界のアート市場はかつてないバブルに湧いています。世界各地でアートフェアやオークションが行われ、企業がアーティストとコラボすることもしばしば。私たちの生活でもアートを目にすることが増えてきましたが、その一方では投機目的で購入され、倉庫の暗闇に眠る作品もあります。

いつからアートが商品となっていたのか? 誰が何のために買っているのか? そもそも、アートの値段って何だろう?という…誰もが抱く疑問を美術界の有力者たちにダイレクトに投げかけていきます。

『アイ・ウェイウェイは謝らない』(2013)

本作品は、「鳥の巣」と呼ばれ、北京オリンピックのメイン会場として有名になった北京国家体育場を設計したことで国際的に著名な存在となった反骨の中国人アーティスト、アイ・ウェイウェイの生きざまに迫るドキュメンタリー。

中国の現代美術家・キュレーター・建築家・文化評論家・社会評論家など多くの肩書を持ち、政治活動家・社会活動家としても多方面で活躍する彼が、2011年に中国当局に拘束されるまでの顛末を描きます。祖国の将来を憂いながらも、表現の自由を求めて闘う姿は胸を打ちます。

アイ・ウェイウェイは、2019年には世界の難民問題を取り上げた『ヒューマン・フロー 大地漂流』、2020年には新型コロナウイルスに着目した『Coronation』などの映像作品も手掛けています。そちらもあわせてチェックしてみてください。

【ストリートアート】

『バスキア』(2019)

本作品は、27歳の若さでこの世を去った天才画家ジャン=ミシェル・バスキアの生涯を映画化したもの。

美術評論家ルネに注目されたことから、アンディ・ウォーホルなど様々なアーティストにも認められ、80年代のニューヨークのアートシーンを席巻したバスキアの栄光や孤独を描いています。

本作品以外にも、バスキアの10代に迫った貴重なドキュメンタリー『バスキア、10代最後のとき』(2017)もおすすめですよ!

『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』(2011)

本作は、覆面アーティスト・バンクシーの初監督ドキュメンタリー。アカデミー賞長編部門にノミネートされ話題となりました。バンクシーとの接触に成功した映像作家ティエリーが、カメラをバンクシーに奪われてアーティストに仕立てあげられ、監督と被写体が逆になってしまう珍事から、彼のサクセスストーリーを通して”アート”について考えさせられる作品。

こちらの紹介作品以外にも、『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』(2014)、『バンクシーを盗んだ男』(2016)などバンクシー関連の映画作品もあります。あわせて鑑賞してみてはいかがでしょうか。

【写真】

『写真家 ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』(2012)

本作品は、2017年と2020年に Bunkamura ザ・ミュージアムにて開催され、大きな反響を巻き起こした写真家ソール・ライターのドキュメンタリー。

50年住みつづけたニューヨークの隙間から世界を見つめ、快い無秩序の中で匿名性の高い被写体を撮影し、猫と暮らす写真家のソール・ライター。

大袈裟に感動を煽るわけでも、偉業を讃えるわけでもない、淡々とした映像とともに、彼の作品を云々ではなく人柄や何気なく過ごしている自身を映しながら、写真への向き合いかたや強いこだわりがあるなどの姿勢が作品から垣間見えます。

『顔たち、ところどころ』(2018)

本作品は、「ヌーヴェルヴァーグの祖母」と謳われるアニエス・ヴァルダと、新進気鋭のストリートアーティストJRが、暗室・プリンター・撮影ブース完備のトラックに乗って、フランスの田舎町を旅しながらストリートアートを創作するロードアートムービー。

打ち解けた祖母と孫のようだったり、ちょっとピリつく芸術家同士だったり、2人の関係性にクスッと笑えるだけでなく、映画に参加した人々の関係にも変化をもたらし、映画・写真を介してそこに映らない人たちの関係性も変わっていくのが面白い作品です。

【日本】

『京都 やまと絵師物語』(2019)

本作品は、平安時代以来の伝統的な日本の絵画様式「やまと絵」を、江戸時代に蘇らせた京都の絵師たちの美術ドキュメンタリー。

「やまと絵」の進化と継承に身命を賭した人々のストーリーが雅な作品の数々とともに展開し、斬新な視点から日本絵画の豊潤さと、その背景にいた名もなき絵師たちの「心意気」を描いています。

千年以上も人々の心を豊かに潤し彩ってきた「やまと絵」をテーマにしながらも、如何に人として生きるかという命題を、幕末の絵師たちの志を通して見つめてみてはいかがでしょうか。

『夢二~愛のとばしり』(2016)

本作品は、“日本最初のポップアート”アーティスト竹久夢二を描いたドラマ。
美人画のモデルとなった妻・たまきとの憎愛、決別、崩壊。そして、夢二が最も愛した女・彦乃との逃避行と死。「竹久夢二」を哀しくも愛のある姿を捉え、竹久夢二の本質を浮き彫りにしていきます。

【ギャラリー】

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(2018)

本作品は、<毒とユーモア>で人間の本質に迫る、傑作社会派エンタテイメント!

有名美術館のキュレーターが巻き起こした大騒動を通じ、現代社会が抱える格差や差別といった問題を抉り出し、本当の正義や人間の本質を痛烈な笑いたっぷりに描いています。

正義という名の落とし穴や理想どおりに生きることの難しさ…本当に自分の思う常識は正義なのか、立場や状況で自分都合で変換していないか、コントロールできない人間や世界を目の前にしても“思いやりの聖域”を展開できるのか、今一度作品を通して考えてみるキッカケを与えてくれる作品です。

『ベルベット・バズソー:死ぬられたギャラリー』(2020)

本作品は、欲望にまみれたアート業界を舞台にしたスタイリッシュなスリラー。

辛口評論家、冷酷な画商、野心家の助手。急逝した無名画家が遺した絵画作品を利用して、自己の利益を目論む全ての人間に、悲劇的な結末が待っているという、拝金主義が駆逐されていく作品。

作中に登場するディーズの遺した不気味な絵画作品はもちろん、次々と登場人物が殺される凶器のアート作品も見どころの一つだと思います。

前回は、ルネッサンスから芸術の花開くゴールデンエイジ(1920年代頃)、おまけで美術館をテーマにした10作品の映画作品をご案内しました。

お正月休み…心に響くアートをテーマにした映画作品で幕開け!10選【前編】も合わせてお楽しみください〜!

新 麻記子

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アート・カルチャーの架け橋になりたい。やれることならなんでもやるフリーランス。

日々の暮らしを豊かにしてくれるアート・カルチャー系記事の執筆業以外に…#日本酒がある暮らしをコンセプトにしたメディア&コミュニティ『酒小町』の編集長をつとめるほか、作詞家、仲介・紹介業、対話型鑑賞会のナビゲーター、アート・映像ディレクターとして活動中。

Instagram:@shin_makiko

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