江戸時代後期、第28代薩摩藩主・島津斉彬は殖産興業のために新たな特産品として薩摩切子(さつまきりこ)と呼ばれるガラス工芸を生み出します。江戸から職人を招き、研究を重ねて生み出された様々な色彩や江戸切子とは一味違う個性で高い評価を得ていました。
しかしその後島津斉彬が急逝すると、幕末の動乱期に薩摩切子は一気に衰退。わずか30年足らずで製作技術が途絶えてしまいます。そのため、残された数の少なさ、高い技術力から「幻の工芸品」と呼ばれたそう。
その後、月日が経ち…1985年に「薩摩切子を復元させたい」と島津家に集まった職人たちによって薩摩切子が再び作られるようになりました。
2022年現在、薩摩切子を手掛ける工房は県内に6軒あります。
薩摩切子の魅力とは?
薩摩切子の一番の魅力は、卓越したカット技術で生み出される“ぼかし”と呼ばれる柔らかなグラデーション。厚みのあるグラスは重厚感があり、光を当てると上品に輝くので、食卓も華やかに!
ぜひ本物の良さと技術を多くの方に知っていただきたいです。
「美の匠ガラス工房 弟子丸」について
さて、今回私が取材先としてご訪問させていただいた「美の匠ガラス工房 弟子丸(でしまる)」は、2011年12月1日に設立された薩摩切子を中心にガラス工芸を営む会社。
同社では、薩摩切子などのガラス作品の製作はもちろん、ガラスの廃材を利用してピアスやネクタイピンといったアクセサリーへと生まれ変わらせた「eco KIRI」ブランドや、薩摩切子のカット体験ができる一般向けのワークショップなど幅広い取り組みを実施中。アートや工芸の初心者にも薩摩切子を身近に感じられるような工夫を重ねています。
そこで、さっそく「eco KIRI 」の製作体験をさせていただきました。私も世界にたったひとつの薩摩切子のオリジナルアクセサリーに挑戦です!
力のかけ方が少し難しく感じましたが、職人さんに丁寧に教えていただきました。
ここまで自分で削り出しを行った後、仕上げ作業は職人さんにやっていただきます。このあとの出来上がりが楽しみです。
「美の匠ガラス工房 弟子丸」代表・弟子丸努さんにインタビューさせていただきました!
製作体験を終えた後は、実際にここ「美の匠ガラス工房 弟子丸」で長年製作に携わっている弟子丸 努さんにインタビューもさせていただきました。
ーーなぜ、薩摩切子の職人になろうと思われたのですか?
弟子丸さん:薩摩切子の持つ輝きや歴史・技法は多くの人々の心を捉えて離しません。私はその魅力に引き込まれ、表現者を志し、切子師となった者の一人なんです。
ーー江戸切子と薩摩切子の違いは?
弟子丸さん:一番の違いは、厚み、生地が違います。たとえば、このグラスを見てください!非常に薄く、繊細に作られていることがわかるかと思います。薩摩切子のグラスの厚さは、わずか1mm〜2mm程度なんです。非常に薄いのでガラスを削る作業が難しくなり、より高度な技術が必要となります。
また、「ぼかし」という技法も、江戸切子にはない特徴の一つです。薩摩切子といえば、「黒切子」が有名ですが、制作する際に透けて見えないので、他の切子より難易度は上がりますね。
ーー「ecoKIRI」について教えてください。
弟子丸さん:実は、生地は別の場所で作っているのですが、半分くらいは捨てている状態でした。それをなんとか利用出来ないかと考え、eco KIRIが実現しました。原料のコストが抑えられるため、若い方にも気軽に手に取っていただきやすい価格でご提供できるようになりました。
ーー今後の目標を教えてください。
弟子丸さん:先日、新作の「タンブラー彩雲」が発売されました。今までにない薩摩切子に挑戦できたと思っています。この作品のように、皆さんが驚き、喜んでもらえるような作品を作りたいです。また、エコキリのように、若い人にも身近に感じていただけるような、薩摩切子の廃材を利用したアクセサリー作りもしていきたいと思っています。
ーーありがとうございました。
取材を終えて
歴史や技法を大切にされながら、新しい取り組みもされている。良いものが続く理由を改めて知ることが出来ました。ぜひ、旅行などで鹿児島県へと足を運んだ際は、ご当地の特産品「薩摩切子」を目にとめてみてくださいね!
「美の匠ガラス工房 弟子丸」関連情報
株式会社 美の匠ガラス工房 弟子丸
所在地:鹿児島県霧島市国分清水 1-19-27
電話:0995-73-6522
公式HP:https://deshimaru.jp/