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西洋絵画鑑賞に”はじめの半歩”を踏み出そう!キリスト教の基礎知識や聖書の有名エピソードを名画で解説

美術館を訪れて絵画を観た時に、「これはどんな場面の絵なのだろう」と感じたことはありませんか?絵画鑑賞の際には自分の思うままに絵を楽しむことも重要ですが、鑑賞をより充実したものにするには、描かれたテーマへの理解が欠かせません。

そして西洋絵画に特に多いものが、聖書の物語、つまりキリスト教をテーマとした作品です。

聖書のお話を知ってから美術館を訪れると、「これは〇〇の場面の絵だな!」との発見ができるので、ますます絵画鑑賞が楽しくなりますよ。

この記事では、10年間キリスト教系の学校に通っていたアート好きの筆者が、西洋絵画鑑賞の際に役立つキリスト教の基礎知識や、聖書の中でも必ず押さえておきたい有名な4つのお話について解説します。

「これから絵画鑑賞を楽しみたい」「聖書は読んだことがないから有名なお話を知りたい」と感じている方は、ぜひ最後までご一読ください。

キリスト教の基礎知識

ステンドグラスが美しい教会内部

聖書のお話を知るためには、キリスト教の基礎知識が欠かせません。ただ幼い頃からキリスト教に慣れ親しんでいる地域の方々と比べて、日本ではキリスト教に接する機会が比較的少ない傾向にあります。

そのため、「そもそもキリスト教ってどんな宗教なの?」と感じている方も多いのではないでしょうか。

キリスト教とは、端的に言えばイエスという人物を救世主として信仰する宗教です。「聖書」と呼ばれる様々なお話が書かれた本を聖典とし、イスラム教や仏教と並ぶ三大宗教の一つでもあります。

ただこれだけでは少しわかりづらいので、日本聖公会のホームページに掲載されている説明をお借りして、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

「約2千年前にイエスという方がベツレヘムという町で生まれ、青年になったのち神の国の福音(よい知らせ)を宣べ伝え、罪ある人間を救うために自ら十字架にかけられ、のちに復活したイエスをキリスト(救い主)として信じる宗教です。そしてイエスが天に昇られた後、イエスの弟子たちはイエスの教えを当時のローマ世界へと広めました。」 

出典:日本聖公会東京教区「キリスト教とは」

つまりキリスト教は、救い主であるイエスの教えをその弟子が広めたことで、幅広い地域で信仰されるようになった宗教であると言えます。

上記の通りイエスは約2,000年も前に生まれた人物です。にもかかわらず、なぜ彼の教えは現代にまで伝わっているのでしょうか。その答えは、キリスト教の聖典である「聖書」にありました。

次の章では、絵画鑑賞において欠かせない聖書の基本情報について解説します。

聖書って何が書いてあるの?

聖書とオリーブ

聖書には、キリスト教の教えに関する数多くのお話が書かれています。聖書は大きく「旧約聖書」「新約聖書」の2つに分けられ、それぞれには異なった内容のお話が記載されています。

2つの聖書には以下のようなお話が書かれており、一般的に広く知られているお話としては、新約聖書に掲載されているものが多いです。

・旧約聖書:世界と人類の創造の歴史や、イスラエル民族の歴史
・新約聖書:イエスの生涯や教え、弟子の記録

たとえば、旧約聖書の有名なお話では、天地創造(アダムとイブ)やノアの箱舟バベルの塔など。新約聖書の有名はお話では、イエスの誕生(クリスマス)や最後の晩餐十字架降架などが挙げられます。

また聖書のお話は絵画以外にも、彫刻や映画でもよくモチーフとされることが多いです。そのため聖書を読んでみると、「これもキリスト教に関連するお話だったのか!」と驚くことが多くあります。

旧約聖書はあまり馴染みがないかもしれませんが、新約聖書には、様々な作品で見たことがあるお話がたくさん掲載されていますよ。

次の章からは、西洋絵画鑑賞に”はじめの半歩”を踏み出すための、新約聖書に掲載されている4つの基本的なお話を紹介します。

新約聖書で知っておきたいエピソード①「受胎告知

「受胎告知」サンドロ・ボッティチェッリ 引用:メトロポリタン美術館

受胎告知は、イエスの誕生に関わる非常に重要な場面です。受胎告知とはその名の通り、イエスがマリアのお腹に宿ったことを天使が知らせに来るお話で、レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめとした数多くの画家の手によって描かれています。

【お話の内容】
大工のヨセフと婚約していたマリアの元に、ある日天使が現れ、精霊による男児の懐妊を告げます。また天使は「この子どもは救い主であり、イエスと名付ける様に」とも言って去って行きました。最初は夫婦共に戸惑いますが、天使の言葉を受け入れ、出産を待つことになります。受胎告知は、このマリアと天使の対話を描いたシーンです。

受胎告知は大変有名なテーマなので、このお話を知らなくても、絵を見たことがある方は多いでしょう。背中に翼の生えた天使と、青い服を着た女性が対話をしていることが大きな特徴です。また同テーマでは、マリアの純潔を表す閉ざされた園や、ユリの花などが一緒に描かれていることも多いです。

「受胎告知」フィリップ・ド・シャンパーニュ 引用:メトロポリタン美術館

様々な要素の中でも、特に注目したいのはマリアの表情です。驚いているもの、恐れを感じているもの、天使の言葉を黙って受け入れているもの……画家によって異なるマリアの表情からは、恐れや驚きなどが感じられ、見比べるのも面白いですよ。

新約聖書で知っておきたいエピソード②「イエスの誕生

「夜のキリスト生誕」ヘールトヘン・トット・シント・センス 引用:Wikipedia

イエスの誕生も、重要なテーマの1つです。イエスの誕生をテーマとした絵画では、生まれたばかりのイエスを抱く聖母マリアや、誕生を祝う人々の様子が描かれています。

【お話の内容】
イエスは、人口調査による住民登録のため両親が訪れていた、ベツレヘムと呼ばれる町で生まれます。宿が空いていなかったため、生まれたばかりのイエスは布にくるまれ、馬小屋の飼い葉桶に寝かされました。イエスの誕生時には、誕生を祝して羊飼いや占星術の博士たちがイエスの元を訪れます。占星術の3人の博士は、星を頼りに生まれたばかりのイエスを探しにやって来ると、黄金・乳香・没薬の3つの贈り物をして帰っていきました。

占星術の博士のお話(東方の三博士)は特に有名なので、クリスマスの時期に見かけたことがある方も多いかもしれません。絵画では、博士たちや羊飼いがイエスの元を訪れる様子や、イエスが飼い葉桶の中に寝かされている様子などが描かれることが多いです。

「東方三博士の礼拝」バルトロメ・エステバン・ムリーリョ 引用:Wikipedia

描かれている場面は同じものの、やはり細部は画家によって異なっています。絵画鑑賞の際は、マリアやその周囲の人々の表情、イエスの様子などに注目してみるとよいでしょう。

新約聖書で知っておきたいエピソード③「イエスの処刑・十字架降架

「キリストの捕縛」ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 引用:Wikipedia

イエスの処刑・十字架降架は、イエスが十字架にかけられ、処刑される場面を描いたものです。先述の通り、イエスは罪ある人間を救うために十字架にかけられた後、復活したと言われています。

イエスの処刑・十字架降架では、イエスが十字架にかけられる場面や、死後十字架から降ろされる様子などが描かれています。

【お話の内容】
イエスが各地で布教活動を行うにつれ、エルサレムの祭司は危機感を抱く様になり、イエスの捕縛計画が立てられます。そしてある日、イエスは弟子の1人であるユダの裏切りによって捕らえられ、祭司長によって誘導された民衆の要望により、処刑されることになりました。捕縛されたイエスはゴルゴダの丘の上で十字架にかけられ、数時間後に息を引きとります。

イエスの処刑では、十字架にかけられるイエスだけでなく、周囲で悲しむ人々や、十字架を背負わされる場面なども描かれており、複数の絵画を見ることで、処刑までの情景が目に浮かぶようです。

また、イエスの遺体を膝の上に乗せて嘆き悲しむマリアをモチーフとした作品も有名です。この悲しむマリアを描いた絵画や彫刻は「ピエタ」と呼ばれ、中でもミケランジェロの彫刻が有名です。

「ピエタ」サンドロ・ボッティチェッリ 引用:Wikipedia

ピエタのマリアは嘆き悲しんだり、無表情だったり、慈悲の表情を浮かべていたりと、様々な表情で描かれています。表情や構図に注目して、ぜひ様々な作品を見てみてください。

新約聖書で知っておきたいエピソード④「イエスの復活

「キリストの復活」 シモン・チェホヴィッチ 引用:Wikipedia

イエスの復活は、新約聖書の中では受胎告知と並ぶ重要なシーンです。イエスの復活をテーマとした絵画では、イエスが処刑・埋葬された後に墓からよみがえる様子や、弟子や周囲の人々と交流する様子が描かれています。

【お話の内容】
イエスは処刑される前から、「死後3日後に復活する」と語っていました。イエスは十字架から降ろされて墓に埋葬されますが、ある日墓からイエスの遺体は無くなっており、人々はイエスの復活を知ります。イエスは復活後、弟子や交流のあった人の元に現れ、40日後に天に昇って行きました。

「エマオの晩餐」ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 引用:Wikipedia

イエスの復活を描いた絵画で注目したい点は、周囲の人々の様子です。

たとえば上の「エマオの晩餐」では、復活したイエスと会っても気が付かなかった弟子が、食卓を共にすることで、やっとイエスだと気がついたシーンを描いています。弟子の驚いた表情がとても印象的ですよね。

他にもイエスの復活を描いた作品はたくさんあるので、人々の驚いた表情やイエスの様子に注目すると面白いですよ。

西洋絵画鑑賞はキリスト教の基礎知識があるとより楽しくなる

この記事では、西洋絵画鑑賞に役立つキリスト教の基礎知識や、聖書の有名なお話について紹介しました。

西洋絵画には、キリスト教をテーマとした作品が数多く存在します。もちろん、テーマなどを考えずにただ作品を鑑賞することもできますが、聖書のお話がわかれば、より鑑賞が楽しくなります。

ここで紹介したエピソードは、聖書の数多くあるお話の中のほんの4つに過ぎません。聖書には他にも、面白いお話がたくさん載っています。

絵画とキリスト教に関連する本も多くありますので、興味がある方はぜひエピソードを調べてみてください。

参考図書:
株式会社西東社 『ビジュアル図解 聖書と名画』
サンエイムック 時空旅人別冊 『キリスト教と聖書でたどる世界の名画〜愛、信仰、友情の物語〜』

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楽活では、他にもいくつかアート鑑賞入門にぴったりな西洋美術の鑑賞法について解説した記事があります!ぜひ、今回の記事とあわせて読んでみてくださいね!

タケウチ ノゾミ

タケウチ ノゾミ

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「猫と美術とミュージカル」をこよなく愛する、福岡在住のフリーライター。趣味は美術鑑賞・観劇・猫を揉むこと・新しいことを学ぶこと。
興味を持ったらとことん調べないと気が済まない性格であり、活字中毒なので、気がつくと何かを読んでいる。美術は東西問わず近代美術が好き。好きな画家は菱田春草とミュシャ。ミュージカルは宝塚歌劇や東宝、2.5など幅広く観劇。鑑賞した作品についてあれこれ考えるのも好き。
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