2021年4月にリニューアルオープンを果たし、話題を呼んでいる群馬・原美術館ARC。
現在、こちらの美術館にて開催中の『虹をかける:原美術館/原六郎コレクション』では、新たに原美術館から移設された現代美術コレクションはもちろん、国宝・重要文化財を含む東洋古美術のコレクションを鑑賞することができます。
そんなオープニングを飾る本展を、作品の見どころを踏まえてご紹介します。
再スタートを切った原美術館ARC
原美術館ARCは、伊香保グリーン牧場に隣接する緑豊かな広い敷地に作られた、磯崎新の設計による黒を基調とした木造建築でです。漆黒の建物それ自体が美術作品と言える、唯一無二の空間です。
ピラミッド型の屋根をもつ正方形の「ギャラリーA」と、両翼に細長くのびる長方形の「ギャラリーB・C」では、やわらかい自然光が降り注ぐシンプルな空間の中、数々の現代美術作品が展示されています。
今回のリニューアルでは各ギャラリーの床を研磨し直すなど、細やかなメンテナンスにも力を入れたそうです。

一方、木、石、和紙、漆喰などを用いるなど、書院造をモチーフにした特別展示室「觀海庵」(かんかいあん)では、東洋古美術の「原六郎コレクション」と現代美術作品との競演が楽しめます。
本展でも、東洋古美術作品と現代美術作品が一緒に静謐な和風空間で展示され、まるで歴史や人生のように過去から現在へのつながりが汲み取れるなど、展示方法にも工夫が感じられました。

屋外には、アンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・オトニエルをはじめ、国内外の現代アーティストによる常設作品が点在し、今後は原美術館の屋外作品も移設していくそうです。
また中庭には、今回のリニューアルを機に鈴木康広「日本列島のベンチ」も設置されました。

新たに移設された現代美術コレクションがリニューアル!
ところで、旧原美術館の空間に溶け込むように展示されていた、奈良美智、宮島達男、森村泰昌などの人気常設作品について、その行末がどうなってしまったんだろう?と、気になっていた方もいらっしゃるはず!
大丈夫です。今回のリニューアルオープンに伴い、ちゃんと移設されていました。
と同時に、作品もリニューアルされ、原美術館ARCの新しい顔として引き続き楽しめるようになっています。
例えば、鑑賞者が作家のアトリエに足を踏み入れたかのような錯覚になる奈良美智の作品「My Drawing Room」。
旧原美術館では展示室後方から前方にかけて一望できたのに対して、原美術館ARCへの移設後は、横側からの鑑賞が可能になったことから、前方部分に展示されていた机の周囲に展示されている細やかなドローイングなど、後方からでは気づけなかった作品をご覧になることができます。

こちらは、バリアフリートイレの横の扉をスライドすると現れる、ピンク色のライティングに照らされた森村泰昌の作品「輪舞(双子)」。

旧原美術館では、便器と一体化したフィギュアが一体だったのに対して、移設後には便器を挟んでフィギュアが二体向かい合うように。さらに壁面がガラスと鏡になっていることで、その光景が彼方まで続いていくように見える、不思議な空間が広がっていました。
展覧会名「虹をかける」には深い意味が…
40年間、東京・品川の地で多くの現代美術を紹介し、数多くの鑑賞者に愛されてきた原美術館。
統合後初の展覧会「虹をかける:原美術館/原六郎コレクション」展の “虹をかける” とは、財団の名称「アルカンシエール(Arc-en Ciel)」の和訳と、人と人が美術を通じて対等に交流するための架け橋でありたいという財団の理念、さらに原美術館とハラ ミュージアム アークの個性を原美術館ARCへと繋ぐ表象からつけられたそうです。
多種多様な人々が集い、新たな価値を創造する、原美術館ARCの今後の活動に期待ですね!

原美術館ARCおよび展覧会 『虹をかける:原美術館/原六郎コレクション』 について

展覧会名:『虹をかける:原美術館/原六郎コレクション』
会期:第1期(春夏季):2021年4月24日(土)~9月5日(日)
第2期(秋冬季):2021年9月11日(土)~1月10日(月・祝)
会場:原美術館ARC(群馬県渋川市金井2855-1)
開館時間:9:30-16:30(入館は16:00まで)
休館日:木曜日(祝日・8月を除く)、9月6日(月)~9月10日(金)、1月1日(土)
アクセス:JR渋川駅よりバス15分「グリーン牧場前」下車徒歩5分
URL:https://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/