世界が見つめる「JOMON」のすべてが集結!特別展「縄文―1万年の美の鼓動」

縄文展の決定版といえる、『特別展 縄文―1万年の美の鼓動』が東京国立博物館 平成館において開催されています。

いまや、縄文文化は「JOMON」として世界の注目を集めています。1万年もの間、サステナビリティ(持続可能性)な社会を実現していたことばかりではなく、世界最古の土器*としての存在の希少性、岡本太郎に「ドギッとする」と言わしめたその表現、美しさも、世界が注目している理由と言えるでしょう。

話題の展覧会の見どころをご紹介します。

*世界最古の土器:東アジア全域で最古の土器と言われるものが出土しており、日本のものを最古とするなど諸説あります。

縄文の人々が作り出した土器や土偶のなかで、国宝に指定された6点も展示。

過去最大!かつてないスケールで「縄文の美」が一堂に

重要文化財「人形装飾付 有孔鍔付土器」山梨県南アルプス市 縄文時代中期 山梨・南アルプス市教育委員会

ともかく圧倒的なボリュームです。出品総数は200件超。縄文時代の全6件の国宝をはじめ、日本で最も有名な土偶の「遮光器土偶」、また縄文ポシェットとも呼ばれる「木製編籠」、さらには縄文のピアスこと「土製耳飾」などの重要文化財のほか、縄文時代の優品が、全国各地の博物館や資料館より集結。「くらしの美」、「祈りの美」など、「縄文の美」をテーマに、これまでにはないスケールで紹介されています。広大な平成館ですが、行けども、行けども縄文です。率直なところ、圧倒されました。

縄文ってどんな時代?

重要文化財「焼町土器」長野県御代田町 縄文時代中期 長野・浅間縄文ミュージアム

ここで改めて確認しておきましょう。縄文時代とは、旧石器時代の終わったおよそ1万3000年前から、約1万年続いた時代のこと。氷期が終わりに近づいて温暖化が進み、入り江や干潟も生まれ、現在の日本列島の形が作られました。そして当時の人々は、自然環境を利用し、狩猟や漁撈、植物の採取を生業とした生活を行い、土器や石器の道具や装身具、また土偶などの儀礼の道具も作り出しました。いわゆる縄目の文様を持つ土器が使われたことから、縄文時代の名が付けられたのは、良く知られています。

手前:重要文化財「深鉢形土器」山梨県甲州市 縄文時代中期 山梨県立考古博物館、奥:縄文時代年表

会場の入口には、縄文時代の年表と、出土品を表した日本各地の遺跡マップも大きく掲載されていました。そちらで一度、縄文時代について、一通り学んでおくのも良いかもしれません。

人々の暮らしを支えた道具たち

重要文化財「壺型土器」鹿児島県霧島市 縄文時代早期 鹿児島県立埋蔵文化財センター

具体的な土器を見ていきましょう。まずは「暮らしの美」。日常的に使われた道具にも美意識が潜んでいます。鹿児島県霧島市の「壺型土器」は、弥生時代の壺を連想させる形。南九州の文化の先進性を伺わせる土器として知られています。

「漆塗注口土器」北海道八雲町 縄文時代前期 北海道・八雲町教育委員会

北海道八雲町の「漆塗注口土器」は、儀礼や葬送にも使われたと言われ、器面に鮮やかな朱の漆が塗られています。縄文というと、色のないイメージがあるかもしれませんが、見事な光沢感です。鮮やかなその色彩に注目です。

重要文化財「木製編籠 縄文ポシェット」縄文時代中期 青森県青森市 青森県教育委員会

縄文ポシェットこと「木製編籠」の精緻な編みは、まさにものづくりの発端とも言って良いかもしれません。青森県青森市の三内丸山遺跡の出土品で、軽く扱いやすいという利点から、主食であったクルミの殻が納められていたそうです。現代の花籠を連想させるデザインに驚きました。

重要文化財「土製耳飾」東京都調布市 縄文時代晩期 東京・江戸東京たてもの園

東京都調布市の「土製耳飾」の透し彫りも見事ですよね。縄文人は、髪飾や耳飾、それに胸飾などの装身具を身に着けて、自らを飾っていました。中には、一目置かれるような、おしゃれな縄文人もいたのかもしれません!

縄文の造形美、そのうねりを体感しよう

重要文化財「関山式土器」千葉県松戸市 縄文時代前期 千葉・松戸市立博物館

長きに渡る縄文時代の土器の文様や形は、当然ながら常に一定ではありません。草創期・早期・前期は、爪や指先、それに縄などで文様を押し付けた表現が志向されました。また、中期の火焔型土器などの立体的な装飾は、器の表面に粘土を貼り付けることで生み出されました。さらに、後期・晩期の土器は、棒や箆による描線で文様が描かれました。前期は「埋め尽くす美」、中期は「貼り付ける美」、後期は「描き出す美」と分類すると、分かりやすいかもしれません。

「火焔型土器・王冠型土器」新潟県十日町市 縄文時代中期 新潟・十日町市博物館

ここで圧巻なのが、新潟県十日町市の「火焔型土器・王冠型土器」の数々です。ご覧のようにケースに入れていない露出展示!荒々しき造形美を存分に味わうことが出来ます。まさにこれは土器インスタレーションと言えます。

真紅の縄文国宝室に国宝6点が集結

真っ赤な空間に驚かされる「縄文国宝室」。

いよいよ本展のハイライト、「縄文国宝室」です。炎を思わせる真紅で彩られてた空間に、縄文時代の国宝6点が、史上初めて、一室に揃いました。

国宝「火焔型土器」新潟県十日町市 縄文時代中期 新潟・十日町市

まずは新潟県十日町市の「火焔型土器」です。4単位の鶏頭冠突起と、鋸歯状の小突起が突き出る姿は、燃え上がる炎そのもの。めらめらと音を立てるかのようでした。迫力満点です。縄文時代を体現した土器と言えるかもしれません。

国宝「土偶 中空土偶」北海道函館市 縄文時代後期 北海道・函館市

そして八頭身美人とも称される「土偶 縄文の女神」(山形県舟形町)、北海道唯一の国宝の「土偶 中空土偶」(北海道函館市)、さらに縄文の祈りを思わせる「土偶 合掌土偶」(青森県八戸市)と続けて並んでいます。いずれも神秘的な美しさをたたえていました。

国宝「土偶 合掌土偶」青森県八戸市 縄文時代後期 青森県・八戸市

ただし、他の国宝2件、つまり、「土偶 仮面の女神」(長野県茅野市)と「土偶 縄文のビーナス」(長野県茅野市)が展示されるのは、7月31日(火)~9月2日(日)です。よって、国宝の6件が全て揃うのは、7月31日(火)からとなります。ご注意下さい。

土偶から知る縄文の祈り

重要文化財「ハート形土偶」群馬県東吾妻町 縄文時代後期

祈りの形を代表する存在として知られるのが土偶です。土偶は、当初から女性像で、安産や豊穣を祈るために用いられました。一方で、男性を示した石棒は、子孫繁栄を願って作られました。

重要文化財「遮光器土偶」青森県つがる市 縄文時代晩期 東京国立博物館

現代から見て「デフォルメ」された造形も特徴と言えるかもしれません。一例が群馬県東吾妻町の「ハート型土偶」で、その名が示すようにハート型の顔の形をしています。もちろん「遮光器土偶」(青森県つがる市)もお目見えしていました。何度見ても不思議な出で立ちをしています。宇宙人と呼ばれるのも無理ありません。

縄文のかわいらしい動物造形

日本列島で動物の飼育がはじまったのは、縄文時代になってからのことです。狩猟や漁労の対象である動物が多いため、豊漁や豊穣を願うために作られたと考えられています。

重要文化財「猪形土製品」青森県弘前市 縄文時代後期 青森・弘前市立博物館

その中で最も多いのが猪です。おそらくは身近であったのでしょうね。青森県弘前市の「猪形土製品」は、背中の逆毛を立てていることから、威嚇する猪を表したとされています。よって畏怖の対象として作られたそうです。

「動物形土製品」埼玉県さいたま市 縄文時代晩期 埼玉・さいたま市立博物館

ただ全ての動物が特定されていない点も重要です。埼玉県さいたま市の「動物型土製品」は、亀形をしていますが、水鳥や海獣を模したともされていて、定まった説が存在しません。ひょっとすると現代人の知らない動物なのでしょうか。時にミステリアスであるのも、縄文時代の造形の魅力かもしれません。

岡本太郎の「芸術の本質」を強く揺さぶった縄文

「顔面把手」山梨県韮崎市 縄文時代中期 東京国立博物館

展覧会の最終章「新たにつむがれる美」では、岡本太郎が東京国立博物館で出会った縄文土器が展示されています。こちらでは撮影可能なコーナーになっています。

展覧会最後には撮影コーナーも。記念撮影もできます。

昭和27年、岡本太郎は、雑誌「みずゑ」において、東京国立博物館の土器を掲載し、「爛熟した中期の土器の凄まじさは言語を絶する。」と評しました。そのうちの3点の土器と、山梨県韮崎市の「顔面把手」の計4点が、自由に撮影が出来ます。ここは土器を背に、記念写真も楽しむのも良さそうです!

鑑賞後は「トーハク BEER NIGHT!」へ!

鑑賞後は「トーハク BEER NIGHT!」で縄文に思いを馳せつつ、乾杯!(写真は昨年の会場風景)

今年も上野の山のビアガーデンの季節がやって来ました。特別展「縄文」の会期中、7月27日(金)、7月28日(土)、8月3日(金)、8月4日(土)に、本館前庭特設広場において「トーハク BEER NIGHT!」が開催されます。各日9:30~21:00。アルコール類の提供は16:00~。ラストオーダーは20:00。「縄文」にちなみ、縄文の国宝6件の出土地域のクラフトビールが販売(限定数)されるほか、購入者にはオリジナルグッズの「火炎型土器紙コップ」も1人1個プレゼントされます。昨年も好評を博した「トーハク BEER NIGHT!」。この夏は。キッチンカーのメニューなども、スケールアップされるそうです。楽しみですね!

オリジナルグッズが充実。「測量野帳」の縄文バージョンも!

右はハート型土偶プレートペンライト、左は遮光器土偶イヤホンコードキーパー。

最後にご紹介するのが、オリジナルグッズです。平成館内の特設ショップには、国宝6件にゆかりのアイテムを含め、特別展「縄文」のグッズの数々が販売されています。会場限定品も多いので要チェックです。

コクヨ「測量野帳」縄文バージョン。

中でも一押しは、「測量野帳」です。表紙に縄文の国宝6件をデザイン。考古学や測量の現場で長く愛されて来た「測量野帳」に、縄文バージョンが加わりました。硬い表紙で耐久性も抜群。よって展覧会のメモなどにも重宝するかもしれません。

オリジナルグッズが充実した特設ショップ。

さらに縄文の出土品のご当地グッズや、人気ショップとのコラボレーショングッズも充実。前売券として話題を集め、完売した「土偶ペンライト」にも、新たに「ハート型土偶」が加わりました。こちらも人気を呼びそうです。

平成館の大きな展示室のすみずみまで「縄文」で埋め尽くされた。

お出かけに際しては、Twitterの「特別展「縄文」混雑情報」(https://twitter.com/jomon_ten_info)で混雑情報をチェックすることをおすすめします。会期中の金曜、土曜は、21時までの延長開館も実施中。夜の時間帯も狙い目です。

時代と地域を超えた「縄文の美」の全てが揃ったとしても過言ではない特別展「縄文―1万年の美の鼓動」。本展は巡回展がない、東京国立博物館での限定開催となる、一期一会の展覧会です。お見逃しのないように。

【展覧会概要】

名称:特別展「縄文―1万年の美の鼓動」
会場:東京国立博物館・平成館(東京都台東区上野公園13-9)
会期:7月3日(火) ~9月2日(日)
休館:月曜日。但し7月16日(月・祝)、8月13日(月)は開館。7月17日(火)は休館。
時間:9:30~17:00
*但し、金曜・土曜は21時まで開館。日曜および7月16日(月・祝)は18時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1300)円、大学生1200(900)円、高校生900(600)円、中学生以下無料。
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
公式サイト:http://jomon-kodo.jp
Twitter:https://twitter.com/jomon_kodo
混雑情報Twitter:https://twitter.com/jomon_ten_info
Facebookページ:https://www.facebook.com/jomonkodo/

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