鬼才・石岡瑛子が映画界に遺した創作性に触れる!衣装デザインを手がけた5つの映画作品と鑑賞ポイントをご紹介!

現在、東京都現代美術館で開催中の企画展『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』

本展覧会は、広告、舞台、映画、グラフィックデザインなど多岐に渡る分野で、新しい時代を切り開きつつ世界を舞台に活躍した、石岡瑛子による世界初の大規模回顧展です。

会場では、彼女のクリエイティビティを総覧できる膨大な資料や衣装がずらりとならんでいます。

そこで、回顧展開催に伴い、映画界に遺した創作性がご覧になれる、石岡瑛子が衣装デザインなどを手がけた5つの映画作品と、作品に関連した会場での見どころをご紹介します。

映画『ミシマ―ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(1985年)

あらすじ
本作品は、三島由紀夫の一生を、3作品 1章『金閣寺』、2章『鏡子の家』、3章『奔馬』になぞらえながら、「美(beauty)」「芸術(art)」「行動(action)」「文武両道(harmony of pen and sword)」の4つのチャプターで表現した伝記ドラマです。三島由紀夫の幼少期から切腹までを描いています。

映画『ミシマ―ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(ポール・シュレイダー監督、1985年)の展示風景より

ポイント】
三島役の同性愛的描写などに対して遺族の瑤子夫人が反対、右翼団体の一部が抗議しているという噂が流れたことから日本では劇場未公開・ビデオ・DVDも未発売の幻の作品です。

会場では、作中で使用された金閣寺のセットが観られるだけでなく、場面毎の美術セットのドローイングが展示されています。展示壁のスクリーンに本作品が再生されているので、シーンを照らし合わせながらご覧になってみてください。本作品で石岡瑛子は美術監督を担当し、第38回カンヌ国際映画祭最優秀芸術貢献賞を受賞しました。

【情報】
監督:ポール・シュレイダー
制作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカス
キャスト: 緒形拳、坂東八十助、佐藤浩市
1985年製作/121分/アメリカ/日本

映画『ドラキュラ』(1992年)

あらすじ】
400年の時を彷徨い、永遠の愛を求める哀しき男。最愛の夫人を失い、神への復讐を誓い、吸血鬼となってしまったドラキュラ伯爵が、自殺した伯爵夫人と生き写しのミナとの出会います。禁断の愛に燃える伯爵とミナ、そこに吸血鬼の命を狙うヘルシング教授が登場!婚約者ジョナサンがいるにもかかわらず、愛し合ってしまったミナと伯爵の愛の行方は…?
永遠の神話“ドラキュラ伝説” を巨匠フランシス・F・コッポラ監督が、ブラム・ストーカーによる原作『ドラキュラ(Bram Stoker's Dracula)』に忠実な映像化し、かつてないスケールで描く壮大なゴシック・ロマンです。

映画『ドラキュラ』(フランシス・F・コッポラ監督、1992年)の展示風景より

ポイント】
コッポラ監督は、石岡瑛子に「今までに見たことのない表現」を要求。これを受け、彼女は、黒マントと牙という従来のドラキュラスタイルを捨て、トランスセクシャルな魅力溢れるマントを制作。石岡は本作で1993年第65回アカデミー賞で衣装デザインショーを受賞しました。

会場では、女性キャストが着用した、見る者を虜にさせてしまう、繊細なレースやフリルが施された美しいドレス、その衣装のドローイング等とあわせて石岡の斬新なデザインが楽しめます。衣装には、西洋・東洋の要素、クリムトの絵画、トカゲの動物など、さまざまなモチーフが散りばめられているのでお見逃しなく!

【情報】
監督:フランシス・フォード・コッポラ
キャスト:ゲイリー・オールドマン、ウィノナ・ライダー、アンソニー・ホプキンス、キアヌ・リーブス
作品情報:1992年/127分/ブルーレイ上映/アメリカ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

映画『ザ・セル』(2000年)

【あらすじ】
相手の精神世界に入って治療を行う女性心理学者キャサリンに、連続猟奇殺人犯の狂気が渦巻く精神世界に侵入して、誘拐された被害者女性の居所を探るようFBIから依頼が入る。キャサリンは特殊な機器で繋がり、犯人の精神世界にダイブするが、そこに広がっていたのは彼女を窮地に陥れる程の異質な世界…。精神世界をビジュアル化した異色スリラーで、シリアルキラーの異常心理を捉えた描写が絡み、豪華絢爛な美しい風景と混沌とした凄惨な世界の対比により鑑賞者の心を捉えて離さない作品です。

映画『ザ・セル』(ターセム・シン監督、2000年)の展示風景より

ポイント
ミュージックビデオなどで活躍してきたターセム・シン監督が、人間の精神世界を美しい映像で描いた本作品『ザ・セル』。作中では、天使を彷彿とさせる美しい純白のドレスから、悪魔を想起させる威圧感たっぷりの奇抜な衣装まで、ジェニファー・ロペス演じるキャサリンの七変化が見どころです。

会場では、初期段階でターセム監督にファックスで送ったというアイデアドローイングや資料などが並べられていました。数々のドローイングを鑑賞しながら、巨大スクリーンに映し出される作中の衣装と照らし合わせてみると、より楽しめると思います。

【情報】
監督:ターセム・シン
キャスト:ジェニファー・ロペス 、 ヴィンス・ヴォーン 、 ヴィンセント・ドノフリオ 、 マリアンヌ・ジャン=バプティスト、ジェイク・ウェバー、ディラン・ベイカー、タラ・サブコフ
2000年製作/109分/R15+/アメリカ
配給:ギャガ・ヒューマックス共同

「落下の王国」(2006年)

あらすじ
オレンジの木から落ちて左腕を骨折し、入院中の5歳の少女・アレクサンドリアは、あどけない笑顔で病院中の人々に可愛がられていた。ある日、足の怪我でベッドから起きられない青年と知り合います。病室に入ってきた利発そうな少女に、青年は自分が作った創作物語を聞かせ、続きを聞かせてとせがむ少女に、翌日も病室に来るようにとささやきます。しかし、それは少女に自殺するための薬を盗み出させるための作戦でした。

映画『落下の王国』(ターセム・シン監督、2006年)の展示風景より

【ポイント】
『ザ・セル』のターセム監督が製作した、美しい美術品のような感動巨編は、構想26年。13の世界遺産、24ヶ国以上でロケーション撮影され、期間4年を費やして製作されました。CG無使用の圧巻な映像に負けないほど、そのビジュアルに調和と主張をもたらす衣装に注目。

会場の「落下の王国」セクションでは巨大ビジョンの前に、主人公が変身する盗賊のコスチュームが展示されています。

【情報】
監督:ターセム・シン
キャスト:リー・ペイス、カティンカ・ウンタルー、ジャスティン・ワデル、ダニエル・カルタジローン、レオ・ビル、マーカス・ウェズリー
作品情報:2006年/1 時間 57 分/インド/イギリス/アメリカ

『白雪姫と鏡の女王』(2012年)

あらすじ
意地悪な継母の女王に国を牛耳られていた白雪姫が、森で出会ったギャングや7人の小さな仲間たちの助けを借り、王国のために立ち上がる…という斬新な解釈で、誰もが知る可愛らしいお姫様を、たくましい”ヒーロー”へと成長させ、グリム童話の名作『白雪姫』をよみがえらせた本作品。ジュリア・ロバーツ×リリー・コリンズがおとぎの国で大バトルをする、最高にパワフルでロマンチックなファンタジー・エンタテインメントです。

映画『白雪姫と鏡の女王』(ターセム・シン監督、2012年)の展示風景より

ポイント
この作品にさらなる輝きを与えているのが、石岡瑛子による豪華な衣装たち。本作は、2012年1月に石岡が他界した後、同年3月に全米公開されました。翌2013年1月には、アカデミー賞衣装デザイン賞候補に選出されました。

会場では、主演のリリー・コリンズが一番気に入っているという大きなオレンジ色のリボンの青いドレスと、ジュリア・ロバーツが着用した花びらを重ねたような白いウェディングドレスを見ることができます。

【情報】
監督:ターセム・シン
キャスト:ジュリア・ロバーツ、リリー・コリンズ、アーミー・ハマー
作品情報:2012年/106分/アメリカ
配給:ギャガ

こちらでご紹介した映画作品は Amazon prime や Netflix などの動画配信サービスでご覧になれます。
ぜひ、会場を訪れる前でも、訪れた後でも、石岡瑛子が手がけた衣装デザインが物語を紡ぐ、映画作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか?

【展覧会情報】

展覧会名:「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」
会期:2020年11月14日(土)~2021年2月14日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F・地下2F
休館:月曜日(11月23日、2021年1月11日は開館)、
11月24日、12月28日~2021年1月1日、1月12日
時間:10:00~18:00 ※展示室入場は閉館の30分前まで
料金:一般 1800円 / 大学生・専門学校生・65歳以上 1300円 / 中高生 700円 / 小学生以下 無料
※予約優先チケットもあり
HP:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/eiko-ishioka/

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