2023年、再び訪れたニューヨークではさらに多くのチャレンジが待ち受けていました。このコラムは、そんな中でヘンテコな私が、半歩ずつ自己実現をめざし孤軍奮闘してきた経験を綴ったものです。観光旅行では味わえないニューヨークの一面を知ることが出来ました。それをご紹介していきます。
★過去のエピソードはそれぞれ下記URLからどうぞ!
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep1-20221124/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep2-20221221/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep3/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep4/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep5/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep6/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep7/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep8/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep9/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep10/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep11/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep12/
https://rakukatsu.jp/ny-confidential-ep13/
★ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド
https://rakukatsu.jp/nysm-20240117/
https://rakukatsu.jp/nysm02-20240218/
https://rakukatsu.jp/nysm03-20240320/
https://rakukatsu.jp/nysm04-20240417/
https://rakukatsu.jp/nysm05-20240517/
メトロポリタン美術館訪問記
今日はメトロポリタン美術館に行ってきました。
ニューヨークのメトロポリタン美術館(The MET)は、世界最大級の美術館の一つで、その壮大なコレクションと展示は世界中から訪れる人々を魅了しています。
The MET自身が日本語を含む10か国語で発信していて日本からも今日の情報が見られます。おうちから、ほとんどの音声ガイドを聞くことができるのです。先ずは、お試しあれ!
所蔵美術品は200万点ともいわれていて、主な展示を見るだけでも1日ではもちろん足りません。今回も2回行きましたよ。
1回目と2回目、それぞれ道中のハプニングの末、たどり着くのですが、The MET見学記としてまとめてご紹介しますね。
真夜中の雷と美術館への道
1回目訪問の前日、真夜中の雷が激しく近くに落ちるのではないかと心配になるほど耳のそばで鳴り響きました。眠れなくなってしまい少し睡眠薬を飲んで、起きたら何と朝9時20分過ぎ。キャットシッタ―中の猫たちも朝ごはんの後、ベッドの下に隠れていたようです。いつもより急いで10時30分に家を出発したものの美術館への到着は11時45分になり、お目当てのイベントには間に合いませんでした。そのイベントとは週に2回しかない日本語ツアー。パンフレットを見ても日本語ツアーが定期的に行われているかどうか確かめることはできなかったためWebサイトで見つけました。開催されることが決まるとサイトアップはされるものの定期と決まっているわけではないらしいのです。後で、現地で確認すると、要するに日本語のボランティアガイドさんが来るのがわかるのが週始めと言う感じでしごく柔軟なツアー開催になっていました。
いずれにしろ、今回は日本語ツアーに間に合わなかったので自分でだだっ広い館内をめぐることになりました。チケットはオンライン購入済み。
面白いのはニューヨーク市に在住している人は自分で料金を決められるシステムがあること。pay-what-you-wish ticketsという好きなだけ払うというもので、今回は、ステイしていた私は、好きなだけ払えば良い仲間に入ることが出来ました。でもいくら払えばいいのかわからないので普通の料金の予約チケットを買いました・・・。駐在員の方たちは、110ドルの年間会員チケットを買っていました。何と、このシステム、二人で入場出来るんですが普通料金は一人30ドルですので、カップルで行けば、2回目で元が取れてしまうのです。
音声ガイドと展示の探索
美術館では、チケットをオンラインで購入してあったにもかかわらず、各国語で用意された音声ガイドのために長蛇の列に並ぶ必要があると言われ、げんなり。英語のガイドなら無料で自分のスマホで利用できるらしく、わかりやすい英語のようだけど、折角ご用意があるなら、日本語ガイドのヘッドフォンで楽に聞きたいと並ぶ。ただ、日本語ガイドで案内される展示物は限られているので、次の展示がものすごく離れていることもあり探しだすのに四苦八苦。それでも、わずか7ドルの音声ガイドのおかげで、膨大な展示品の中、飛び飛びでありながらも手掛かりを探しだし、全体像を味わえるようになっていきました。
エジプトの神殿とカフェ 冷房効きすぎの寒さ
美術館内部は非常に広大で、どの方向に進むかさえ迷ってしまう。
日本語音声ガイドの展示物を探しながらも、広大さに飲み込まれないように、なんとなく天井が低くて狭くて落ち着きを感じられそうな展示室に足が向かっていく。
エジプトの墓は全て盗掘されていると思われていた時、探検家のハワードが見つけた隠し部屋「Hidden Chambers」の展示が興味深かった。見つけたときの写真が壁に貼ってあるが、自分の目を疑っただろうと言う瞬間がよく伝わってきた。4000年ぶりにあまたの埋葬品、その時の生活をミニチュア模型で本当に生き生きと楽しい感じで作られている。干し肉を作っている人は今でもどこかにいそうな姿だ。
そのそばのエジプトのミニチュア船の展示も興味深かった。音声ガイドで船の中で儀式を行う様子が細かく再現されている。「死後の世界」でも困らないように埋葬された副葬品から、4000年前のエジプトの生活が垣間見える。
音声ガイドできちんと勉強ができ助かっているものの、歩く距離と見ることへの集中とそれから、冷房の効きすぎで寒くて疲れてくる。
そんな時、急に明るい場所に出てきて度肝を抜かれた。
植物園の温室のように天井から壁までガラス張り、そこに一歩入ると、大きく胸いっぱいの空気を吸い込みたくなる。ホッとして、明るい自然光が差し込む空間に身を委ねる。そこに展示されていたのは、エジプトの神殿そのものだ。2回目の訪問の時に説明を受けたので詳細は後ほど述べますが、この時は、とにかく神秘的な雰囲気に圧倒された。
飲食禁止のはずだが、水のペットボトルを持っている人が多いので、今度私もそうしよう。いやこんなに寒いからお湯の魔法瓶を持ってきた方がいいかもしれない。
寒いので、隣接のカフェに立ち寄った。ところが、温かい飲み物は、ホットコーヒーのみで、温かい調理メニューは、そこにはなし。みんなが何を食べているか見てみると、そこでは、ネイティブの人たちは体が大きいのに、小さなクッキーバーとかポテチとかをチマチマと食べている。私はがっつり熱量のあるものを食べた~い。
ヨーロッパ絵画とアフリカンアート
次に訪れたのはヨーロッパ絵画の展示エリア。ここではルノアールやフェルメール、ゴッホなどの豊富な所蔵品の名画を見ることができる。特にフェルメールの作品は、光の表現が非常にリアルで、まるで絵の中に引き込まれるような感覚を覚えた。これも2回目の説明ガイドのルートに入っていたので詳しい説明と写真はのちほど。
また、アフリカンアートの展示エリアでは、ユニークな形状やデザインのオブジェがたくさん展示されており、見ていると楽しい気分に誘われる。音声ガイドの説明を聞きながら、これらの作品が持つ文化的背景や歴史に思いを馳せるのは、好奇心を弾ませる体験になりました。
日本の縄文土器や縄文の遺跡も大好きだけど、より桁外れな発想で桁外れの大きさに口があんぐり。
ディズニーランドのチキルームを思わせるような展示は、訪れる人々に他の展示エリアでの疲れを吹っ飛ばしてくれる楽しさを提供しています。
日本の展示と中国コーナー
中国コーナーはより広範囲で、壁画そのものや唐三彩の羅漢像など見るべきものが多くありました。
一方、日本の展示は地獄絵図が中心で、夏場の展示としては興味深いものだが、私としては、もう少し日本が誇りとしているものを展示していてほしかった。それでも、モダンアート部門であるイサムノグチの石の彫刻は水の流れの静かな動きとともに「静謐」を体験させてくれていた。
圧倒的な一日の終わりに
美術館を出ると、すぐに館内の寒さを和らげるためにホットコーヒーを買った。スタバに行きたかったが、足がパンパンでこれ以上歩けない。しかたなく美術館前の屋台のillyで買った。おいしいと感じられずちょっと後悔したものの暖かさはゲット。それを手にセントラルパークを横切り地下鉄Cラインを目ざす。パーク内には大きな池があり、これはジャクリーン・ケネディ・オナシスの寄付で作られたという。こちらの寄付の規模の大きさに驚く。真ん中に大きな噴水がある。ちょうど、ベンチを見つけ、美術館での冷え切った体を温め疲れた足を休めるためしばらく休憩した。
その後、家に帰る途中で、娘から「ごめん、私たち外だから外食するわ」と「今日は一緒に夕飯を食べられない」と言う無慈悲なメッセージ。さらに帰りにスーパーで買い物をした時に、エコって自分のバッグに買ったものを入れていたら肩紐が切れてしまい、買った品をばらまいてしまうことに。たくさん歩き回ってたくさんの芸術に触れ感動した後に起きたハプニングに涙がこぼれそうになってしまった。
メトロポリタン美術館再訪
この日、日本語ツアーがあるのをホームページで確認し、前回間に合わなかったので朝9時に出発する予定を立て、随分余裕をもって出発。
メトロポリタン美術館はマンハッタンのセントラルパークの東側に隣接している。私の住んでいるブルックリンを通る地下鉄はA(快速)またはC(各駅)路線で、これはパークの西側を通っている。それで、86ストリートで降りパークを西から東へ横断することにした。
もう乗りなれたと地下鉄路線をちゃんと調べて、やる気満々でローカルのCラインからエクスプレスAラインに乗り換えた。ところが86ストリートに止まるはずの列車がもっと北の方の125ストリートまでノンストップで進み、ハーレムに近い終点まで行ってしまった。戻るため再びダウンタウンに向かうプラットホームで乗客に聞いてみると、スマホでチェックしてくれてネットでの案内では86ストリートに止まると言う。もう一度エクスプレスを待ち、ダウンタウンに向かうが、再び59ストリートまでノンストップ。仕方なく59ストリートでCラインに乗り換え、4つ目の駅である86ストリートに到着。前回Cラインで来ているので焦りはしなかったものの、同じところを行ったり来たり。案内では86ストリートにエクスプレスのAラインも止まるはずなのに! 謎です。
2度目の美術館に到着
ずいぶん早く出たのにそんなことをしていたのでセントラルパークを横切り、11時10分前にようやく美術館に到着。
しかし、長らく地下鉄に乗る羽目になってしまい、降りた瞬間からトイレに行きたくなってしまった。何とか美術館に到着した途端、入場する前にインフォメーションに駆け込んだ。なぜなら今回はネットでチケットを買ってくる時間がなかったので長蛇の列に並んで買う必要があったからです。でもチケットをまだ持っていない人には中のトイレを貸すことができないと言われ焦る。
そんな私を見て「日本の方ですか」と声をかけてくれたボランティアスタッフがいて、「外のトイレがあります。その場所は外と言っても展示室の外ですが、美術館の建物の中の教育施設の一部ですから、とても綺麗で、安心ですよ」と私の心配を先取りして親切に教えてくれた。
その上、トイレがあった教育施設にチケットと音声ガイド売り場があり並ばずに直接入場でき逆にラッキーな展開に。
日本語ツアー
そんな到着でしたが11時10分から目的の日本語ツアーに間に合って参加できました。ガイドはマナベさんという日本の方で、まず中世の聖母子像から案内が始まりました。
ここからはマナベさんの説明を中心にお伝えします。ガイドブックにない情報も多かったのでとても面白かったです。
この像の凄いところは、イエス・キリストが赤ちゃんらしい顔で描かれている点だそうです。開いた本の間からは赤ちゃんの足が出ている。「この像のマリア様のカフスボタンは止まっていません」。マナベさんによるとマリア様、妊娠出産で太ったからだそうです。人間らしすぎる解説に「ほんまかいな?」
次に中国の大壁画、大日如来が描かれた作品を鑑賞。
次に前回も訪れた、あの神殿を丸ごと展示している巨大な展示室に入ります。
解説によると、この神殿はエジプトのベンジュールにあった本物の神殿をエジプト政府から貰い受けたものだそうだ。私たちが世界史で習った、あのアスワンハイダムを作るときに水没の危機に瀕した遺跡の多くをアメリカが資金を出して救った。お礼にその一部を贈られたものの、その時の条件がまた、すごい!24時間見られるように展示することだった。それに応えて、アメリカは、駐車場をつぶして、この広大なアトリウムを建てることにしたらしい。それで展示というより、そっくりエジプトの神殿遺跡にいるような気分になる。この時の壁画に書かれているファラオはローマ皇帝アウグストゥスと説明を受けてローマ帝国とエジプトの関係を初めて知った。
次にはオランダの画家の特別展の中からもちろんフェルメールの朝日の中の女性像が描かれている絵を紹介された。光の差し込んでいるところが素晴らしく写実的に描かれていた。そうそう、この美術館はほとんどの展示物は写真OKなのです。
ここThe METにはルノアールの有名な「シャンパルティ夫人とその子供たち」の肖像画が所蔵されています。 これが展覧会で入賞したので、ルノアールは肖像画家になったと説明を受けた。後ろの屏風は当時流行のジャポニズム、驚くべきことに中央の3歳の子供は、かわいい女の子の服を着ているのだが男の子だと言う。日本でも有名な話として三島由紀夫が幼児期、祖母から赤いべべを着せられていたという話が頭をよぎった。左のお揃いのドレスを着ている子は、6歳の姉で本当に女の子だと言う。ルノアールが黒を用いるのは重要だと考えていたためかご婦人は見事な黒いドレスを着ていた。この印象派の時代からは、筆の跡がなくなるのだが、この絵の中で筆跡がないのは肌で、特に顔だと言う。生きている人間以上に生き生きと描かれている。生で日本語の説明を聞けると、驚くことが一杯ある。
ゴッホの特別展では、筆のタッチや色使いの年代順に注目し天才そして狂気への道筋を感じさせる絵の変化に驚いた。
美術館の屋上で一息
ツアーを終わり、その後ちょうど今日METに来ると言っていた英会話教室で知り合ったシュワハブさんと会うことになっていた。指定した時間より10分遅れたけど無事に合流。携帯が使えず人づての伝言だったのに奇跡のように会えてびっくり。
その後、疲れを感じたため、美術館の屋上でカクテルを楽しむことにしたが12ドルのはずが19.9ドル請求され驚いた。マンハッタンの摩天楼を眺めながらカクテルを飲むのは素晴らしい体験ではありましたが。
帰路
早々にセントラルパークを通って帰る予定でしたが、ショップで素敵なお土産を見つけてしまい、気づけば20時に。暗くなってしまったパークを急いで横断し21時15分に無事家に到着。朝のエクスプレスが59ストリートから125ストリートまでノンストップだった理由は最後までわからないものの無事に家に帰れて一安心でした。
この日は、メトロポリタン美術館2回目の訪問でした。同じ展示にも新たな発見があり何回行っても、また行きたくなります。
道中のハプニングや素晴らしい体験、忘れられない一日となりました。
今回ご紹介できたのはThe METのほんの一部にすぎません。あくまで私の興味のある、そして引き込まれ感動したものをご紹介しました。チャンスを見つけて是非訪れてご自身の感性で楽しんでいただけたらと思います。事前にホームページを訪れて音声ガイドをお聞きになることをお勧めします。The METの入り口で進路に悩まないようにあなたのルートを見つけられるといいですね。