現在、東京・西新宿のSOMPO美術館にて開催中の「モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて」。
赤・青・黄の三原色による「コンポジション」シリーズで知られているピート・モンドリアン。
今回、日本では23年ぶりとなるモンドリアン展のレポートとともに、モンドリアンルックを取り入れたイヴ・サンローランから、フランスにあるイヴ・サンローランミュージアムをご紹介します。
モンドリアンって、どんな人?

1872年、オランダ・アメルスフォルト生まれのピート・モンドリアン。
初期のハーグ派様式の風景画、象徴主義や神智学に傾倒した作品、キュビスムの影響を受けて独自展開した作品、晩年の水平垂直線と原色平面の「コンポジション」まで、その表現は多岐にわたります。
展示作品からモンドリアンの絵画表現の変遷をたどる

モンドリアンの生誕150年を記念した本展覧会では、オランダのデン・ハーグ美術館所蔵のモンドリアン作品50点、国内外美術館所蔵のモンドリアン作品と関連作家作品約20点を展示します。
会場では、印象派のような風景画や肖像画、キュビスムに影響を受けた作品もあり、異なるジャンルを経て、抽象画へといきついた過程をたどることができます。

1908年にトーロップに出会い象徴主義や神智学に傾倒しつつも、オランダの風景から風車、灯台、砂丘、聖堂などを描き、実験的作品を制作。
1911-14年には、滞在したパリでキュビスムに出会い「新造形主義」理論を立ち上げ、第一次世界大戦を挟んで、静物や樹木など身近な主題を抽象化した独自の作風へと展開。
第一次世界大戦後は「新造形主義」に従った、「コンポジション」シリーズへと至り、晩年にはニューヨークに移って旺盛に制作を続けました。

加えて、同時代の作家たちによる関連作品、過去日本で開催された展覧会図録、その作品を紹介する雑誌や単行本、貴重な資料なども展示。
デザインや建築、ファッションに至るまで、モンドリアンの理念の命脈を見ることができます。

さて、モンドリアンが晩年に打ち立てた革新的な「コンポジション」シリーズは、アート界のみならず、隣接する業界にも大きな衝撃を与えました。
本稿後半では、その中から、半世紀にわたってモード界で絶大な影響力を持った、世界でもっとも有名な服飾デザイナーのひとりであるイヴ・サンローランに着目。モンドリアンが彼に与えた影響を詳しく見ていきます。
アート×ファッション モンドリアンルック

1965年、イヴ・サン=ローランがモンドリアンの作品に着想を得てデザインされたミニドレスを発表。白地のシンプルなワンピースが黒の水平線と垂直線で分割され、そこに赤・青・黄の三原色が大胆に配配置されています。
モンドリアンの作品は形態の単純化の末に実現されたものですが、サンローランは極限まで装飾的な要素をそぎ落とすことで、絵画の造形原理を衣服に移すことに成功しました。
このモンドリアン・ルックは、現代アートをファッションに取り入れた試みとして注目を集め、サンローランの名を世界的に高めました。
パリではイヴ・サンローランのミュージアムも!

フランス・パリにあるイヴ・サンローラン美術館は、かつてサンローランのクチュールハウスでした。美術館設立にあたって、サンローランは自ら保存すべき作品をコレクションを選定。
展示室では35,000点のデッサン、布製品、アクセサリーからなる膨大なコレクションのほか、彼のアトリエの机にはお気に入りの品々(鉛筆やサンプル)がそのまま置かれ、本棚には着想源となった沢山の書籍が並び、彼の存在を身近に感じることができます。これらは、20世紀のフランス文化の一部であるといっても過言ではありません。

展示室にはモンドリアンルックで知られるミニドレスのほかにも、一度は目にしたことのある素敵なアート作品からインスピレーションを受けたドレスが展示されていました。
移り変わりの早いファッションに、アートの要素を取り入れることで、自分が作り上げたスタイルを普遍的なものにしたかったのでは?と想像が掻き立てられました。

彼の生涯を描いた映画作品も複数制作されています。中でもオススメなのは、2014年のベルリン国際映画祭でオープニングを飾った『イブ・サンローラン』(2014年)。現在、NetflixやAmazonPrimeなどでご覧になれます。
また、イヴ・サンローランに限らず、ファッション業界のカリスマを取り上げた映画作品は、本作以外にも多数の良作があります。楽活では、2021年1月に「オススメファッション映画10選」もアップしていますので、こちらもぜひチェックしてみて下さい!
最後に…

モンドリアンの作品を鑑賞してみると…とても物事を柔軟に捉えながら、さまざまなジャンルを取り入れ、自分の表現を突き詰めていることがわかります。
「モンドリアンといえば『コンポジション』でしょ!」という方にこそ、彼がその抽象表現へと行き着いた変遷がご覧になれる本展覧会に足を運んでみてください。
展覧会情報

生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて
会期:2021年3月23日〜6月6日
会場:SOMPO美術館
住所:東京都新宿区西新宿1-26-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00
休館日:月(ただし5月3日は開館)
料金:一般 1500円 / 大学生 1100円 / 小中高校生 無料 ※日時指定入場制