2023年、再び訪れたニューヨークではさらに多くのチャレンジが待ち受けていました。このコラムは、そんな中でヘンテコな私が、半歩ずつ自己実現をめざし孤軍奮闘してきた経験を綴ったものです。観光旅行では味わえないニューヨークの一面を知ることが出来ました。それをご紹介していきます。
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★ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド
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アップステート・ニューヨーク(Upstate New York)2
◆バーバラ邸(ワイルドでアンティーク、でも化学薬品の匂い)
今回は日本の自動車メーカー、スバルのCMにも使用された自然豊かなバーバラ(婿殿の叔母)の家を紹介します。
アップステートのオールバニー近郊のデルマーにある婿殿の実家から車で20分。前回ご紹介したデルマーは閑静な住宅街でしたが、バーバラの家はハドソン川沿いのハナクロワ・クリーク自然保護区という自然公園の中にあり、支流のハナクロワがハドソン川に流れ込む河口に位置するワイルドな場所です。
こちらがバーバラの家。クルマを停めた鼻先にある家はこじんまりしていて、そこからは想像もできないのですが、一歩、中に入ってバルコニーに立つと、あらびっくり。下方に広がるクリークからハドソン川まで全部がバーバラの家の敷地です(そうは言っても「そんなにお金持ちでもない」とこれは、ご本人の弁)。
向こうに大型船の往来も見ることができました。土地は20エーカー以上あると言っていました。計算すると約2万5千坪、大きすぎて見当がつきません。東京ドーム約2個分の広さです。土地の手入れの手伝いをする人は来てくれていますが、バーバラは、この広い敷地に一人で住んでいます。
バーバラの家から見て左は、ハドソン川に流れ込むハナクロワという名前の支流に面しています。
ハドソン川を目の前にした湿地帯には、ビーバーが住んでいてダムを作っているのです。ちょっとわかりにくいかもしれませんがこの不自然な木の塊は全部、ビーバーの作ったダムとの事。ビーバーは、巣が川の流れや水の増減によって破壊されるのを防ぐため、ダムを作ると言われています。まだビーバーには出会っていませんが、落ちている枝や木の幹には鋭い歯で削り取った跡がそこここに見られます。
ビーバーはこの辺りでは身近な動物なのですね。ニューヨークと聞くと大都会しか頭に思い浮かばない私たちにとって、この大自然で野生の動物と共存する風景もニューヨーク州の一部ということが、行ってみて初めて実感できました。お手伝いに来るエリックは、木こりでもありハンターでもあるため、時折ライフルを鳴らすらしいのです。閑静な住宅街から車でわずか20分走ったら、こんな大自然に出会えるなんてびっくりです。
バーバラは世界的な企業のコンサルタントのような仕事をしているらしく、そのご縁で日本の自動車メーカー、スバルのCMにバーバラの庭が使われています。インテリアも世界中から集めたものがずらり。圧倒される量です。でも、一つずつ由来を聞いてみるとテムズ川で拾ったものとか、アフリカのコワーカーからもらった仮面だとか、てんでバラバラの寄せ集めなんです。それが、しっくり落ち着いているのは、それを飾るスペースの広さとバーバラのディスプレイセンスの相乗効果のようです。アンティークで固めた家のように見えませんか。
今日泊まらせていただく部屋をバーバラが案内してくれました。用意された部屋は床下にありシーツやタオルや紅茶やコーヒー等がホテル仕様のように用意されています。期待が膨らんでいきました。
ところが、ドアを開けてベッドが置かれているところを見ると、工事中としか見えないような場所。そのことが関係しているのだと思うのですが、化学薬品の臭いがとても強く、「この空気、吸っても大丈夫?」
そのうえに、急に大きな音がしてびっくり。その音の一つは、地下の室内の湿った空気を外に出すのに使う送風機の音らしく、それを止めてしまうのは、それはそれで問題が大きいと思えたので我慢、我慢。いやいやいやバーバラとの関係を一歩深めるためにはこう言った方が良かったかも。「私は匂いに敏感で、ここだと匂いが気になって眠れないわ。だから、リビングのソファーで寝たいと思うんだけど手を貸してくれる?」。自分の人生に踏み込んでいくために。でも結局、私はバーバラが恥を感じるかもしれないということを恐れて口に出すことができませんでした。だから、我慢。
しかし、一歩ドアを開けて外の景色を見ると草に露がつくなど、実に清々しい場所です。
バーバラは、ラズベリーをはじめ、ブルーベリー、クランベリー、リンゴンベリーなど、いろいろ庭の味を使ってジャムを作るのが好きらしくコロナ禍で外出がままならなかった時期には、この庭の自然を毎日のように写真におさめてFacebookに投稿していました。国際派の彼女ですが、ここ、ニューボルチモアにいるときはニューボルチモアの大自然の生活を満喫しているんですね。
家の手入れに来てくれるエリックたちの働く声を聴くのがバーバラは好きだといいます。私も今朝、家の壁に取り付いてチムニーを直しているエリックたちの声を聞いてそっくり同じように感じていました。意外なほど。ほんとに気が合ってびっくり。一人で暮らしていると、人間が作り出す音の尊さが身に染みてくるんでしょうか。
◆ベッツイのおうち(手作りの黄色いおうち)
翌日、そんなバーバラの家に、アメリカにいるわたしの唯一の友人、ベッツイが迎えに来てくれて、今度はアセンズのベッツイの家に向かいます。またまた、ほんの20分ほどハドソン川を下る方向へ、のどかな緑の中のドライブをしました。
ハドソン川沿いの自然豊かな土地に知り合いが出来て、次々と訪問できるなんて数年前には想像もしていなかったので、「偶然」って不思議だなぁ~とつくづく思うのです。
家に行く前にコクサキのファーマーズマーケットに寄りました。ベッツイの買い物に付き合うためです。コクサキって響きが日本語みたいで面白いですよね。ネイティブアメリカンの言葉で「フクロウの足」という意味らしいです。そこのワインショップでブルックリンでお世話になるベッツイの娘のクレアが好きだというワインを教わりました。そうなりゃ、お土産に買って帰るしかないよね。
どっこいしょ!お土産にワインは重たいけど。
他にも欲しい食材があり、買ったのですが、どれもアメリカンサイズ。量が多いのでこれには参ります。家に着くとベッツイの旦那さんのケビンがBBQコンロでグリルしたハンバーガーを作ってくれました。火を使ってグリルしたハンバーグパテのおいしいこと。これで、もうおなか一杯です。
デルマーの素敵なレストランで食べきれずテイクアウトしたコブサラダも持ってきていたので一緒に食べましたが、それも食べきれませんでした。さすがにもうダメなのでベッツイのキッチンの外のコンポストに捨てさせてもらいます。その話をすると「残り物はどんどんコンポストに入れれば自然環境のサイクルに入るから罪の意識を持つ必要は無い」と言われ、なるほどね。ごみにしてしまうのではなく自然に還すという発想ね。私からすると、食べきることができるように最初から量の加減をするというのが良いと思われるんだけどなぁ。
ニューヨーク・コンフィデンシャルのシリーズでご紹介した去年も訪問したこのお宅、ケビンの手作りで居心地が良いんです。
しかし、ゲストルームはこんな感じで、折り畳みのマットレス二つ分を広げていきます。床から10センチぐらいかな。床の汚れが気になる私としては、去年に引き続き早速、箒と塵取りを貸してもらって掃除を始めました。
そこでの暮らしは、一日4回のケリーの散歩が中心です。ケリーは、大型犬なのに何ともうすぐ16歳。飼い主の二人の愛情で、のびのびと長寿の道を歩んでいます。
散歩の途中で会う人は、まばらですが挨拶を欠かしません。その人たちの中にはゲイのカップルもいました。その人たちが堂々と道でいちゃついているのを見ると、日本との違いに印象深く、そういえば日本は男女のカップルでもそんなに道で日中からイチャイチャしているのを見かけることはないのを思い出しました。愛情の表わし方がすごく違うのを実感しました。
そうは言っても、散歩も4回目ぐらいには飽きてしまいます。気持ちを察してくれてベッツイが近所のスーベニアショップを案内してくれました。
私も名前だけは聞いたことのある1969年伝説のロックコンサートが開かれたウッドストックに連れて行ってもらいました。実際の開催地は少し行ったところにあるべセルのヤズガーさんの農場だったらしいのですが、ウッドストックにフェスを記念してスーベニア、インテリア、アート、コンフォートショップ、レストラン等が立ち並んでいました。
みな、おしゃれなものが置いてあるのにはびっくり。
レストランに入ってもリーズナブルなのに美味しく、インテリアやライティング、全てに心配りが感じられました。ここで撮ったポートレートは実物以上の美しさになりました。
トイレも最先端で、ユニセックスを超えてどんなユーザーでも使いやすいように設計されていました。皆で同じ一つの出入り口を使います。日本で言う「誰でもトイレ」の拡大版みたいなものです。
その後、帰宅して30分ほど休憩したら、すぐに隣のロージーとトムと一緒にピザとビールの美味しい店に行くと言われました。「すぐ近く」というので油断していましたら車で20分以上走って避暑地として有名なキャッツキル方面の山間地へ。その店は「リップ・バン・ウィンクル」と言うあのアメリカ版浦島太郎の名前がついたレストランで、たくさんの客で賑わっていました。でもエアコンが効きすぎて風邪をひきそうなくらい寒いのです。その時点で、まだまだお腹がすいていなくて、私は温かいスープをオーダーしたのですが、6人中3人がまた、ピザの注文。同じものを食べ続けるのが苦手な私としては、そんなにおいしいかなぁ?と最後まで謎を抱えていました。帰宅後、ウッドストックで買ったそそられるデザートさえ、もう入りませんでした。
アメリカ人の謎
◆ニューヨークのアップステートでアメリカ人の謎に迫ってみました
謎①レストランや屋内での室内温度が低すぎて私は震えるくらいです。寒いぐらいなのに裸同然の薄着で平気なアメリカ人は基礎体温が高いから平気なの?
▶ベッツイに聞いてみました。すると、ベッツイが体温計を持ってきて二人で測ってみたら、私の体温の方が高くって、あれま!
謎②外食先に「ピザが美味しい店」を選ぶのは、アメリカ人がピザが大好きだから?
▶ベッツイに聞いてみました。素直に「リーズナブルだから」と教えてくれました。だってハンバーガーの方が美味しいけど、みんなで集まって外食気分を盛り上げるのにリーズナブルなパーティフードの方がいいからって。
謎③食べ残しをコンポストに捨てることにたいして罪悪感はないの?
▶ベッツィに聞いてみました。自然環境のサイクルに入るから罪の意識を持つ必要は無いとのこと。 ああ、そう考えればいいんだとは思いました。でも、何でも深堀りしやすい私としては、これは、深い問題で、世界経済の拡大と有限な資源の有効活用という大きな葛藤の折り合い点をどこに求めるべき、なんちゃって考えてしまうんですよね。コンポストに捨てないで済むように最初から少なめ、というか適切な量の消費にする方が食品ロスの総量は減るような気がするんですけど…、もったいないなぁ~!
謎④泊めていただいた部屋を「立つ鳥、跡を濁さず」とばかりに掃除していると「掃除はいいから」と言われ、それも遠慮からではなさそうなのはなぜ?
▶ベッツイに聞いてみました。 基本、掃除はあまりしないらしい。靴を脱いで室内に入る環境と靴を履いたままで室内で暮らす環境では、掃除に対する感覚が違ってくることを知りました。なるほど!
謎⑤今回ご紹介したどちらのお宅も客をもてなそうという気持ちが、伝わってきました。ありがたく感謝!ただ、ベッドルームの寝心地環境等は微妙な感じ、なぜ?
▶これは、ベッツイに聞けませんでした。しかし、日本人のようにお客様にはフカフカの布団を用意しなくっちゃ、というような感覚は無いようです。アメリカ人は寝床に大して関心がないのかもしれません。私が日本で仕込まれている社会的な常識(とは言え、日本社会から見ると、私なんかは非常識な部類に入るんですけど)と、つい比べてしまう時、他のおもてなしがありがたかっただけに寝床に関しては「あれっ、なんで?!」と違和感を覚えてしまったのでした。
そんな経験をさせてもらいながらこの環境の中で浮かんできた考えは、いつも何となく人と比較して「どうせ、私なんか…」と卑下している私でも、「自分でこれでいい」と決められれば能動的な生き方ができる可能性があるかも。希望が湧いてきました。
「ただいま冒険中」ニューヨークは広い!!!次回も頑張りますのでご覧ください。